ミニ・レビュー
夏川りみの4枚目。村上てつや、宮沢和史、谷村新司といった多彩な作家陣が楽曲提供。BEGINの上地等の手になる(1)がいい。今更ながら、歌うまいなあ。吉川忠英をはじめとするスタジオマンのバッキングも秀逸。ちなみに(1)のドラムはカーネーションの矢部浩志。
ガイドコメント
夏川りみのオリジナル4thアルバム。シングル「ココロツタエ」「さようなら ありがとう」収録。谷村新司、村上てつや(ゴスペラーズ)、宮沢和史ら、豪華な作曲陣が彼女の新しい魅力を引き出している。
収録曲
01サガリバナ
夏の沖縄に咲く名花“サガリバナ”をモチーフにした作品で、アルバム『彩風の音』の1曲目を飾るバラード。カーネーションの矢部浩志(ds)やスタジオ・ミュージシャンの重鎮、美久月千晴(b)が参加し、彼らの得意とする70年代風のリズム・アプローチが曲を静かに盛り上げている。夏川りみの堂々たる快唱も印象的。
02大丈夫
夏川りみと同郷のシンガー・ソングライター、Kiroroの玉城千春のペンによる作品で、ピアノを主体としたシンプルなサウンド・メイキングがいかにも彼女らしい逸品。愛を言葉で伝えることの大切さを綴った歌詞も印象的で、曲中で何度もリフレインされる「大丈夫」という言葉にありったけの共感を込めて歌い上げている。
03さようなら ありがとう
04シマダチ
ゴスペラーズの村上てつやが作詞・作曲に参加した壮大なバラードで“シマダチ合唱団”として、ゴスペラーズのメンバーも参加した豪華な作品。彼女のレパートリーには珍しいソウル的なメロディ展開を持った作品で、R&B然とした節回しで熱唱する夏川りみに、歌い手としての間口の広さを存分に感じることができる。
05とことわのうた
タイトルの“とことわ”(常永久)という言葉にも象徴されるように、永遠なる地球の美しさに願いを込めたスケール感あふれる作品。作曲はSING LIKE TALKINGの佐藤竹善で、洗練されたメロディとファンキーなリズム・アプローチが印象的。夏川りみは低音から高音までを自在に操り、伸びやかな声で歌い上げている。
06雨降樹の下で
土方隆行がつま弾くアコースティック・ギターのアルペジオをバックに、故郷への愛情を込めて歌う夏川りみの切ない声が印象的なバラード。70年代に流行したシンガー・ソングライター作品を連想させるようなシンプルで柔らかいバッキングも、ノスタルジックな歌詞の世界にぴったりとはまっており、否応なく胸に迫る。
07玉露のあしび
パーシャクラブの上地正昭が、夏川りみの歌声にインスパイアされて作曲した本格的な沖縄民謡的作品。夏川りみは自ら三線も弾いており、まさに水を得た魚のように、美しい発声で歌い上げている。演出効果としてスクラッチ・ノイズが使用され、まるで戦前の沖縄民謡を聴いているような雰囲気を醸し出しているのもポイント。
08千春坂
沖縄独自の言語をふんだんに盛り込んだ繊細で美しいバラード作品。編曲はギタリストの吉川忠英が担当し、すべての楽器を彼が一人で弾いている。“上(ぬぶ)いの道は夏太陽(てぃだ)うたれ〜”という歌い出しから、幼少の頃に感じた夏の景色を連想させ、リスナーをたまらなくノスタルジックな気分に誘う。
09恋唄
「涙そうそう」の大ヒットを生んだ森山良子が再び作詞を手掛けた切ないバラードで、作曲はアコースティック・ギター奏者の吉川忠英。「涙そうそう」を彷彿とさせる郷愁あふれる美しいメロディが印象的。吉川忠英のシンプルなギターをバックに夏川りみも、専売特許を得たように自身に満ちた伸びやかな歌声を聴かせている。
10愛のチカラ
夏川りみのヴォーカルを多重録音した美しいハーモニーで幕を開ける、たまらなくアーシーなバラード・ナンバー。平和に願いを込めたシンプルだが力強いメッセージの歌詞を、優しさと激しさを交互に感じさせながら情感豊かに歌い上げている。編曲も担当した中村哲によるジャジィなソプラノ・サックスも印象的。
11しのぶ花
「島唄」を筆頭に、多くの名曲を沖縄にプレゼントしたTHE BOOMの宮沢和史が夏川りみのために作詞・作曲したシンプルなバラード作品。歌詞から直接的に“沖縄”というフレーズは出てこないが、曲の随所に美しい風景を感じることができる。ノン・ヴィブラートで語りかけるように優しく歌う。
12ココロツタエ
13ウナイ島 (八重山バージョン)
アルバム『彩風の音』のラストを飾る、沖縄民謡の重鎮、古謝美佐子と佐原一哉の共作曲。壮大なストリングスを使用したコンテンポラリーな作風ながら「〜ユイヤサ ユイヤサ」と合いの手のコーラスが随所にちりばめられ、否応なく沖縄を感じさせる美しいナンバー。