ガイドコメント
アーバン・ゴスペルの新星として注目される女性シンガーの日本デビュー盤。2005年にリリースされたリミックス盤に特別編集を施した企画モノで、ゴスペルの枠を超えて全洋楽ファンにアピールできる高品位な仕上がりだ。
収録曲
01LET GO
全身に電流が走るような勢いのあるダンスホール・ライクなナンバー。太いベース・ラインにハイ・テンションなヴォーカルが照り輝く。煌びやかなホーンが効果的にちりばめられたアレンジは、“ロック・ソウル”チームのプロダクション。プロデューサーはブランディーやカニエ・ウェストで知られるウォーリン・キャンベル。
02YOU DON'T KNOW
オリエント風ともエスニック風ともとれるアクセントを使い、タイトなボトムで攻めるR&Bチューン。メロディ・ラインはシンプルでありながら、デスチャが演じても遜色ないサウンド・プロダクションをきっちり仕立てたのは、ダークチャイルド名義で知られるロドニー・ジャーキンスで、クオリティが高いのも納得。
03WAR
ゴスペルは時には説教くさいと思える時もあるが、それを最新のR&Bマナーにのっとって表現するという、キキはある意味で稀有な存在と言えるだろう。この曲も“神”という詞が至るところに出てくるが、圧倒的なヴォーカルとハリのあるサウンド・ワーク、印象的なフレーズのループなどで身体を揺るがせて耳を離さない。
04SWEETEST THING
キキの力強くもキュートなヴォーカルと温もりあるギター・リフがクロスして、しっとりと絶妙なウェット感を醸し出すミディアム・チューン。“神ほど優しい存在はない”というゴスペルチックな詞も、R&Bとしてクオリティ高く構築された楽曲により、メロウなラヴ・バラードに昇華させている。ダブルダッチによるリミックス。
05ALL I AM
ゆったりとした厳かさを持ったイントロから繰り広げられる奥行きを持ったサウンドが特徴のミディアム・スロー・チューン。無邪気さと母性本能とが滲み出るようなヴォーカル・ワークと奇を衒わないナチュラルなサウンド・プロダクションが聴くものの耳を和ませる。ポール・ボウトとブラザー・ウィルソンによるリミックス。
06SO LONG
ポール・アレンとキキの母、カレン・クラーク・シェアードのいとこに当たるJ・モス(パジャム)がプロデュースしたミディアム・スロー・チューン。ゴスペルを親しみやすくするために、R&Bタッチでアプローチしたアイディアは正解で、上質な香り漂うアーバン・ミュージックになっている。母のカレンもコーラスで参加。
07PRAISE OFFERING
イントロの体温に適したピアノの旋律が柔らかい絹布のように包み込み、クワイアの迫力あるバッキング・ヴォーカルが神々しいオーラを放つゴスペル・バラード。それらに負けず劣らず、というより、しっかりと大地を踏みしめて浮かび上がってくるキキの可憐で意志の強いヴォーカルは、聴く者の胸に深く刻まれるに違いない。
08CHURCH NITE
弾むようなリズムがハッピーな雰囲気を伝え、ファンキーなアクセントが特徴のファンク・ソウル・チューン。ポール・アレンと母、カレン・クラーク・シェアードのいとこに当たるJ・モスのプロデュース。“今夜は教会に集うのよ”といった宗教色が強い詞も、高いサウンド・プロダクションにより、ポップに昇華。
09CLOSER
ゴスペル・クワイア風なコーラスとハスキーでノリのいいキキのヴォーカルが絶妙にマッチしたパーティ・チューン。ゴスペル・ライクなバッキング・ヴォーカルはプロデューサーでもあるポール・アレンとJ.モス(パジャム)が担当。ゴスペルとダンサブルなR&Bをこれ以上ないバランス感覚で構築した高品質な楽曲に感服。
10LET GO
ブランディーやミッシー・エリオット、カニエ・ウェストらR&B〜ヒップホップ・シーンのアーティストを手がけたことでも有名なウォーリン・キャンベルがプロデュースした、キャッチーなダンサブル・チューン。疾風のように畳み掛ける勢いのあるサウンドと、縦横無尽に駆け抜けるキキのヴォーカルが脳髄を刺激する。
11YOU DON'T KNOW
デスティニーズ・チャイルドやジェニファー・ロペスらあまたのヒット・チューンを生み出してきたロドニー“ダークチャイルド”ジャーキンスがプロデュースした、本国アメリカでのデビュー・アルバムのリード・シングル。ハンドクラップを巧みに採り入れたR&Bナンバーで、ゴスペルの憂いを消し去ったタイトでキャッチーな曲。
12YOU DON'T KNOW
ボトムを強調した骨太のベース・ラインが特徴的なナンバー。ブラック色の強いうねるようなボトム・ラインにロック・テイストを絡めたサウンドは、オリジナルのキャッチーなタイトさを落とし込むこともなく、攻撃的な演奏とキレのあるキキのヴォーカルにより、迫力あるプロダクションとして変化を遂げている。
13LET GO
ウォーリン・キャンベルのオリジナルとは異なり、ベースを際立たせるスタイルのクラブ仕様チューン。コーラスのバッキング・ヴォーカルはマイナー調に仕立てるも、力感が削がれることなく伝わり、シンプルなメロディ・ラインに下から響いてくるようなアレンジを用いて楽曲の重心を低め、浮ついた感じを抑えている。
14SWEETEST THING
開放的で輝きのあるヴァージョンに生まれ変わったハウス・ディスコ・チューン。オリジナルの適度なウェット感を残しながらも、ノリというポイントをしっかり押さえたサウンド・プロダクションが素晴らしい。ソウル・テイストなフレーズや煌びやかでポップなアクセントがほどよく盛り込まれるなど、アレンジ力の高い楽曲だ。
15THAT THING
ゴスペルとR&Bの融合によるダンスホール・キラー・チューン。バッキング・ヴォーカルに母のカレン・クラーク・シェアードとそのいとこに当たるプロデューサー、J.モスが参加していることもあり、空間の広さがありながらも骨格がしっかりと組まれている楽曲は、絶妙というほかない。