ミニ・レビュー
1年ぶり通算7枚目となるアルバム。なんとなく過渡期なあゆ、かな。だが、妙味な新境地(2)をはじめ、ほとんどがシングルとして発表ずみ、という怒涛のキャッチーさではある。新曲が少ないので、シングル即買いのファンは迷わずDVD付きの限定盤をどうぞ。
ガイドコメント
通算7枚目となるオリジナル・アルバム。ゴージャスなロック・サウンドを前面に打ち出した「STEP you」やヒットメイカー菊池一仁作曲の壮大なバラード曲「HEAVEN」など、3枚の既発ヒット・シングルを網羅した快作。
収録曲
01Bold&Delicious
それまでの彼女のイメージを一新するかのようなソウルフルでファンキーなナンバー。スウィートボックスのGEOが作曲したトラックに、大胆に言い切る日本語詞が乗り、ゴスペル調のコーラスがパワフルに盛り上げる。
02STEP you
ダンスホール・レゲエ風味のアレンジに乗せて、だんだんと止められなくなっていく“片想い”を歌う。段階的に気持ちが前に進んでいくさまを切り取ったような“1.2.3.4”というカウントによるコーラスが印象的。
03Ladies Night
80年代ダンス・ポップを思わせるサウンド・アプローチが特徴。コミカルな雰囲気が漂う音作りで、ナレーションのようなラップを披露したかと思えば、キャッチーなコーラスを聴かせる。女性ならではの狂気を感じる。
04is this LOVE?
「STEP you」と対をなす“片想い”の曲。相手がいると知りながら惹かれていく気持ちを激情的なロック・サウンドで表現。心が崩れ落ちていく様子を捉えたサウンドが破滅的に、行き場のない歌詞とともに切なく響く。
05 (miss)understood
シンプルに削ぎ落とされたロック・ナンバー。ストイックな歌詞と歌声が、じわじわと余計な装飾を剥がしていき、核心に迫ってくる。怖いくらいの静けさのなか、“君は一体どこを目指すの”という命題が突きつけられる。
06alterna
強弱のついたギターやメリハリのあるドラムによって、起伏に富んだアレンジを聴かせるロック曲。変化や指さされることを恐れずに“あるがままに”と自身にいい聞かせるような歌声からは、生々しい覚悟が感じられる。
07In The Corner
ストリングスをフィーチャーしたR&B調の曲で、リズミカルなサウンド構成に乗せ、淡々としたメロディとヴォーカルを聴かせる。ゾッとするような心理を、自問自答するかのように、感情を込めずに冷静に歌っていく。
08tasking
「In The Corner」と「criminal」を繋ぐインタールード的インスト。軽やかなストリングスの音色に導かれて、深い森の中にでも逃げ込んでいくような雰囲気。張り詰めた感触を軽やかに演出。
09criminal
歌のメロディとピアノの旋律が呼応し合うように響くなか、生きてく上で感じる“罪の意識”との向き合い方を歌う。厳かなストリングスと空間を切り裂くようなギター・サウンドが融合し、ヴァイオリンが劇的に鳴り響く。
10Pride
低音が重々しく響く迫力のあるサウンドが荘厳なオーケストラを連想させる。合唱団のようなコーラスとともに、叫びのような祈りのような力強い歌を聴かせるドラマティックな曲。作曲はスウィートボックスのGEO。
11Will
“きらきら”と光を放ちながら“ひらひら”と舞っていくような、気高いオーラを感じさせる曲。日本語独特の言い回しや響きを用いた歌詞が、凛とした歌声によって際立ち、研ぎ澄まされた誓いと願いが感じられる。
12HEAVEN
映画『SHINOBI』の主題歌。天から光が降ってくるようなイントロから、ピアノの演奏に乗せてしっとりと歌いだし、“和”を意識した音世界が展開される。他界した人への想い、残された人の気持ちを綴った曲。
13Are You Wake Up?
「HEAVEN」から「fairyland」へ導くように配されたインスト。鋭角的で透明感のあるギターが掻き鳴らされ、一気に雲間を突き抜けていくようなサウンドが心地良い。視界が開けてくような爽やかな感触だ。
14fairyland
どこか異国の不思議な場所を想起させるキラキラとしたサウンドが特徴的。途中、不穏な空気が流れ、美しさがあわせ持つ儚さや残酷さも表現。“永遠に近い場所にいる”と歌い、永遠のような一瞬のきらめきを捉えた曲。
15Beautiful Day
朝もやのなか、視界が開けてくような爽快感をくれる。サラリとした歌声によって、単純明快な言葉に浸透力が増し、迷いや不安をさり気なく紐解いていく。ソウルフルなコーラスも印象的。そっと背中を押してくれるナンバーだ。
16rainy day
雨が滴る音にも、時計の針が時を刻む音にも聴こえるサウンドに乗せて、静かに囁くように歌う。淡々としたメロディが、繰り返されるほど美しく映えていく。感情を抑えた歌声から、逆に、あふれる情感が感じ取れる。