ミニ・レビュー
ストリート・ミュージックの味をキッチリと残しているところが、コブクロの人気の秘密。といっても、洗練されたテクニックがあればこそヒット曲を連発できるわけで、そのあたりの感性の鋭さと引き出しの多さが本作からもシッカリ伝わる。
ガイドコメント
コブクロの通算5枚目のオリジナル・アルバム。大ヒット「ここにしか咲かない花」や「桜」、第84回高校サッカー応援歌「Starting Line」を含む、完全セルフ・プロデュースによる話題作。
収録曲
01Flag
ハーモニカとアコースティック・ギターのサウンドが心地良く、あたかもストリートで聴いているような、弾き語りを中心にしたフォーク・テイストの曲。アメリカン・ロックを下敷きにした大地を感じさせる雰囲気がある。
02桜
03六等星-NAMELESS STAR TRACK-
さわやかだがアーシーな雰囲気も漂う、力強いアメリカン・ロックを日本語で聴いているような感覚。やっとこういう本格派が出てきたのか、と感慨にふけりたくなるような、クオリティの高い演奏を披露している。
04ここにしか咲かない花
二人の織りなすハーモニーは絶妙で、このように落ち着いた雰囲気のバラード曲でこそ、その真価を発揮する。若者に似合わない落ち着きと深みを歌に封じ込め、同時に熱い感情も表わすことができるのは、ひたむきさゆえか。
05待夢磨心-タイムマシン-
カントリー調の跳ねるリズムが楽しいナンバーだが、歌われる言葉にも随所に工夫が見られる。陽気な雰囲気ながらじっくり聴いてみると、若かりし頃の風景がよみがえってくるようなノスタルジーも感じられる曲だ。
06Pierrot
彼らの音は、主にアメリカの音楽のなかでも豊潤なフォークやブルースなどに影響を受けているが、そのなかでもブルース色が前面に出た曲だ。ただの影響に終わらず、しっかりと大地の感覚ごと吸収しきれている印象がある。
07Saturday
若き時代のトム・ウェイツが現代の日本によみがえったような、ピアノでの弾き語り調の曲。ギターでもピアノでも、とにかくその楽器ならではの響きを大切にした楽曲は、時代の壁をいともたやすく取っ払ってしまう。
08大樹の影
三線の響きがタイトルどおり自然を感じさせるが、雄大な雰囲気に包まれ、二人のヴォーカルは新たな地平を突き進んでゆく。実験的サウンドではあるが、「うた」の力がしっかりしているため、すごく自然体に聴こえる。
09NOTE
二人のヴォーカルの掛け合いで徐々に高揚していく様は、まさに彼らの真骨頂とするところ。さわやかだけどちょっと切なくてやさしい歌の調べは、いつ何時であっても心地良く響きわたり、聴く者の心を和ませる。
10Starting Line
11LOVER'S SURF
落ち着いた楽曲の多い彼らにしては珍しく、激しいロック・サウンドで攻めている。こういうワイルドでタフなロックンロールもできてしまうのだ。とはいえ、彼ら特有の聴きやすさは健在で、音楽の幅広さを感じさせる。
12同じ窓から見てた空
アルバムのラストを飾るナンバーはなんと8分を超える大曲。静謐な雰囲気から始まり、壮大にドラマティックに盛り上がってゆく様は、圧巻の一言に尽きる。力強いけど繊細、という両方の魅力を備えた歌のパワーは絶大だ。