ガイドコメント
メジャー1stアルバム。永積タカシ作曲の「緑のアーチ」や岸田繁の「裸の王様」、ジェームス・イーハのプロデュースによる「蝋燭を灯して」など、彼女の美しいソプラノ・ヴォイスを生かした温かみのある楽曲が満載。
収録曲
01渡り鳥の3つのトラッド
クラシック・ギターを軸にした有機的なサウンド・メイキングのなかで描かれるのは、“冬枯れた朝”に語られる、美しくも切ない童話的な世界。ゆったりとしたリズム、タイトルどおりトラッド的で魅力のあるメロディ・ライン、芳醇な表現力を持ったヴォーカルを含め、彼女の音楽の基本的なスタイルがここにある。
02鏡の中の絵描き
マンドリン、ウッド・ベース、アコーディオン、アイリッシュ・ハープといった楽器を使ったアレンジは、ヨーロッパの伝統的な音楽の影響を感じさせつつ、まったく新しいポップスの在り方を提示しているかのよう。カラフルな映像を思い起こさせるリリックは、中世のヨーロッパと現代の日本をリンクさせるようなトリップ感に満ちている。
03裸の王様 (Album mix)
誰に何を言われても、一人ぼっちになっても、自分の思うように生きてほしい……そんな真摯なメッセージを“詩”として昇華した歌詞に心を打たれるシングル曲。言葉を丁寧に紡ぎだす彼女の歌は、聴く者の気持ちを大きく揺さぶるだろう。クラシカルな響きを持つストリングスとホーンのアレンジも素晴らしい。
04HARLEM
2本のエレクトリック・ギターが絡むバンド・サウンドが印象的。すべてのフレーズにエモーションを宿らせる彼女の歌が、ブルースの要素を感じさせる楽曲によく映えたナンバー。あらゆるタイプの楽曲を自分のテイストに表現できる彼女の才能を感じさせ、ときおり登場するリコーダーがいいアクセントになっている。
05蝋燭を灯して (Album mix)
ロング・トーンを多用し、シンフォニックな厚みを持つサウンドを構築するジェイムス・イハのギター・ワーク、また軽やかに上昇していくメロディ・ラインも魅力的なナンバー。メロディを追いかけるうちに、身体のなかに音楽的な快楽が宿る……そんな効果を持つ、美しくも妖しいロック・チューン。
06聖堂の隅で
賛美歌を連想させる、繊細で美しいナンバー。淡々とした雰囲気のAメロと、天使が空に上るような、ふわりとした手触りのサビのメロディが織りなすコントラストが素晴らしい。彼女の声にはこういうタイプの曲がよく似合う。少年合唱団によるコーラスも楽曲に豊かな広がりを与えている。
07緑のアーチ (Album mix)
アメリカン・カントリーと日本のフォーク・ソングがゆったりと溶け合うようなメロディは、永積タカシ(ハナレグミ)によるもの。個性的にして普遍的な旋律は、触ると壊れてしまいそうな繊細さと大らかな母性を兼ね備えた彼女の声によって、未知の心地良さを生み出していく。人と人の間にある温かさを表現した歌詞もいい。
08海の上のパイロット
ペダル・スチール・ギターによるフォーキーなグルーヴが描き出すのは、ポエトリー・リーディングっぽく立ち上がりながら、曲が進むにつれて輝きを増すメロディ・ライン。自由に飛び回る“あなた”を想い、きっと“どこかで繋がるときがやってくる”と願う、寓話的にして生々しいラヴ・ソング。
09エデンの園 (Album mix)
ワイン色の風、ゆらめくサテンの嘘、瑠璃色の泉……聴く者の想像力を刺激する、カラフルにして個性的なフレーズの数々が印象的なナンバー。クラクラするようなサイケデリアと気軽に口ずさめる親しみやすさを同時に体現するメロディも、彼女にしか生み出せないものだろう。
10キルト
幻想的で荘厳な雰囲気のストリングス、洗練されたフルート、ヒリヒリとした感覚のエレクトリック・ギター、そして世界のすべてを包み込むような大らかなスケールを感じさせるヴォーカル。リスナーを一瞬にしてアナザー・ワールドに誘い込むファンタジックなナンバー。