ミニ・レビュー
英ブライトン出身の4人組ロック・バンドのデビュー作。60年代ブリティッシュ・ビート、フォーク、さらにレゲエまで取り入れたりと、まだ若いらしいが幅広い要素を持つけっこう器用な演奏だ。それにしてもワイルドかつポップ。なかなか頼もしい新人だ。
ガイドコメント
ライティング・センスの良さで本国イギリスでは高い評価を得ている4人組ロック・バンドのデビュー・アルバム。スーパーグラスや初期ブラーを引き合いに出されるキャッチーこの上ないメロディが彼らの最大の魅力だ。
収録曲
01SEASIDE
UK期待の4ピース・バンド、ザ・クークスのデビュー・アルバム『Inside In/Inside Out』のオープニング・チューンは、意表をつくアコースティックな弾き語りナンバー。その物憂げなムードは、まるでニック・ドレイク・タイプのシンガー・ソングライターのようだ。彼らの多彩な音楽性を暗示させる1曲目といえる。
02SEE THE WORLD
エッジの効いたギターがサウンド全体を引っ張る、ガレージ/パンク系のハードなロック・チューン。最初から最後まで、たたみかけるように疾走するヴォーカルとバンドの演奏が、ティーン・バンドであるザ・クークスの若さや勢いといった要素を見事に表現している。聴いていて実に爽快なナンバーである。
03SOFA SONG
アルバム『Inside In/Inside Out』に収録され、2ndシングルでもあるこの曲は、全英トップ30入りを果たしてヒット・チューンとなった。シンプルなガレージ・ロック系の躍動感あるサウンドに、キャッチーなメロディ、そして扇情的なヴォーカルが組み合わさった、ザ・クークス流のゴキゲンなロックンロールだ。
04EDDIE'S GUN
ザ・クークスの記念すべきデビュー・シングルにして、見事全英トップ40入りを果たしたナンバー。ガレージ・パンク的なサウンドを基調としながらも、ビートルズやXTCといったイギリスを代表する偉大な諸先輩バンドに通じるようなキャッチーさにもあふれており、バンドの魅力が凝縮された名曲といえるだろう。
05OOH LA
シングル・カットしたらヒットしそうなキャッチーなナンバー。メロディの良さに加えて、70年代のアメリカン・ロックを思わせるちょっぴり懐かしいテイストを漂わせたサウンドも魅力で、ザ・クークスの音楽性の幅広さをうかがわせる。彼らがいかに才能あるバンドであるかを証明している一曲といえそうだ。
06YOU DON'T LOVE ME
切れ味鋭いギターのカッティングがサウンドを先導するカッコイイ曲だ。リズム的にはパンク・ロック・スタイルだが、テンポが速く、ちょっぴりスカっぽい感じもするのがユニーク。それでも非常に聴きやすくてポップな仕上がりなのが良い。そのあたりも、このザ・クークスならではの個性といえる。
07SHE MOVES IN HER OWN WAY
アルバム『Inside In/Inside Out』のなかでは最も軽快でポップなナンバー。どこか90年代のネオ・アコースティック・ムーヴメントの頃に活躍したバンドを思わせるテイストもあるのが面白い。ザ・クークスが、ソングライティングにおいて非凡な才能を持っていることは、この曲を聴けばよく分かるはず。
08MATCHBOX
ザ・クークスらしくスカのビートを巧みに取り入れた疾走感あふれるナンバー。間奏におけるダブっぽい感じと、サビの高速な盛り上がりとの対比が絶妙。「ザ・クークスが街に参上し、天下を奪いに行くぜ」という痛快な歌詞も飛び出し、まるでバンドのテーマ・ソングのようだ。
09ナイーヴ- NAマVE -
ストレートなギター・ロック・チューンだが、そのストレートな感じがこの曲の一番の魅力。特に、サビの「I KNOW SHE KNOWS〜」というフレーズや、曲の後半部においてフェイド・インしてくるコーラスと、ヒートアップするバンドの演奏が重なる部分などが聴きどころ。
10I WANT YOU
ザ・キュアーあたりを彷彿とさせる、ノコギリの歯のようにギザギザした手触りのロック・チューン。混沌とした空気が楽曲全体を覆い、緊迫感あふれるムードを作り出している。ギター、ベース、ドラムスの3リズムでこれだけの世界観を表現しているあたり、やはり彼らはただの新人バンドではない。
11IF ONLY
わずか2分間という短さで終わってしまう楽曲ながら、ガレージ・パンク調のゴキゲンな演奏が堪能できるナンバーだ。この奔放で生々しい手触りは、ロック・ファンにとって決して抗えない魅力。この曲に言葉なんていらない、身体と心で感じてほしい……といったところだ。
12JACKIE BIG TITS
ポップでキャッチーな、親しみやすいナンバー。サウンドは比較的オーソドックスなもので、70年代あたりのクラシック・ロック的な感じもするし、ちょっぴりストーンズっぽい味わいもある。ちなみに、歌詞のなかに登場する“ジャッキー”という名前は、映画『セクシー・ビースト』の登場人物から採られたもののようだ。
13BE MINE
14CALIFORNIA
彼らならではの個性が発揮された、スカのリズムによるナンバー。どこかバブルガム的なポップさがあるのも特長といえるだろう。ピアノやコーラスなども効果的に配置されており、プロダクションの上手さが光っている。アメリカで人気が出るとしたら、きっとこんなタイプの曲になるのだろう。
15BUS SONG
ちょっとスカっぽくリズムを刻む、軽快でポップなナンバーで、彼らならではの個性が発揮された一曲。何よりも、思わず外に向かって走り出したくなるような、ポジティヴなエネルギーに満ちているのが良い。このあたりは、やはりティーン・バンドならではの勢いといえるだろう。
16TIME AWAITS
シブいアコギの弾き語りでブルースっぽくスタートするが、バックの演奏が始まると一変、スカの強烈なリズムに包まれる。途中、ダブっぽい要素も顔をのぞかせるなど、かなり凝った構成になっていて、ザ・クークスというバンドの懐の深さを実感させられる。エンディングもかなり趣向を凝らしたものになっていて面白い。
17GOT NO LOVE
『Inside In/Inside Out』のエンディングを飾るのにふさわしい、メランコリックなバラード・チューン。まるでロウソクの焔が揺らめいているような“はかなさ”が、この曲のテーマであり魅力といえる。わずかな余韻と次への期待を残しつつ、アルバムは静かに幕を閉じていく。
仕様
CDエクストラ内容:エディーズ・ガン (Video)SecureCD