ミニ・レビュー
ジャズ・アルバムではイギリス史上最大のヒットとなったメジャー・デビュー作『ジェイミー・カラム』(2003年)に続く、2年ぶりの作品。ブルース、ロック、ヒップホップなども取り入れた、鋭敏なコンテンポラリー・スタイルで、前作よりジャズ色が薄い。
ガイドコメント
ジャズ・シーンのみならず、ロック、ポップス・フィールドでも高い人気を誇るヴォーカリスト/ピアニストの2ndアルバム。ダン・ジ・オートメーターやガイ・チェンバースらとのコラボレーション曲も収録。
収録曲
01GET YOUR WAY
アルバムからの1stシングル。冒頭から「これがジャズのアルバム!?」と驚いてしまうゴキゲンなヒップホップ・チューンだ。ニューオーリンズR&Bの重鎮、アラン・トゥーサンのペンになる「Get Out Of My Life Woman」をサンプリングしている。
02LONDON SKIES
ヒット・プロデューサーのガイ・チェンバースとの共作曲。“霧の都”ロンドンのくすんだ曇り空を歌ったもので、憂いを帯びたメロディが印象的なナンバーだ。ソングライター=ジェイミー・カラムの豊かな才能を感じさせる佳曲。
03PHOTOGRAPH
リリカルなピアノで幕を開ける本作は、ジェイミー・カラム単独で書き上げた美しいナンバー。こういう曲を聴くと、エルトン・ジョンやビリー・ジョエルなどに通じる“ピアノ・マン”としてのジェイミーの魅力を再確認してしまう。
04I ONLY HAVE EYES FOR YOU
「瞳は君ゆえに」という邦題でも知られ、黒人コーラス・グループ、フラミンゴスの名ヴァージョンでも知られるスタンダード・ナンバー。現代風のビートを取り入れつつも、原曲の持つムーディな部分を損なうことなく見事にカヴァーしている。
05NOTHING I DO
ジェイミー・カラムが単独で書き上げたこの曲は、巧みなストーリーテラーぶりを発揮した歌詞と、心地よくスウィングするバック・ビートとが見事に溶け合った、まさにジェイミーならではの個性にあふれたナンバーといえるだろう。
06MIND TRICK
アルバムからの2ndシングルで、兄のベン・カラムとの共作曲。今までのジェイミー・カラムの作品にはなかったタイプのポップ・ソングで、失恋から立ち直ろうとする主人公の前向きな心情を巧みに表現している。
0721ST CENTURY KID
ジェイミー・カラム自身のペンになるオリジナル。美しいメロディだが、同時に少し重たいムードも漂っている曲だ。それは、21世紀を生きる若者の未来を案じているからだろうか? この曲は彼らへのメッセージ・ソングといえるかもしれない。
08I'M GLAD THERE IS YOU
カーメン・マクレエやジョニー・ハートマンなどの名唱で知られる、ムード満点の素敵なラブ・バラード。ここでのジェイミー・カラムの情感あふれるヴォーカルと、繊細なタッチのピアノ・プレイは、ただただ素晴らしいの一言だ。
09OH GOD
ヒット・プロデューサー、ガイ・チェンバースとの共作による、叙情的なメロディが印象的な佳曲。ストリングスが、神に救いを求める歌詞の内容ともリンクするような幻想的な世界を作り出している点にも注目だ。
10CATCH THE SUN
マンチェスター出身の3人組バンド、ダヴズの2000年のヒット曲をカヴァー。こんな曲を取り上げるところがジェイミー・カラムのユニークさで、彼がジャンルに関係なく幅広い音楽を聴き、そこから影響を受けているかが分かる。
117 DAYS TO CHANGE YOUR LIFE
典型的なジャズ・バラード調のメロディに乗せ、ジェイミー・カラムが情感豊かに歌い上げる。さぞやロマンティックな愛の歌、と思いきや、実際の歌詞の内容は、TVショッピングのセールス・トークを延々とまくしたてるものという、人を喰ったような曲だ。
12OUR DAY WILL COME
1960年代にルビー&ザ・ロマンティックスというヴォーカル・グループが大ヒットさせた、軽いボッサ調の名曲をカヴァー。ジェイミー・カラムのヴァージョンは、少しリズムを強調したり、ピアノ・ソロを入れたりと、色々工夫を凝らしている。
13BACK TO THE GROUND
シンガー・ソングライター、エド・ハーコートとの共作曲で、ふたりでワインを飲みながら1時間ほどジャムっている間に完成してしまったという。そんな自由度の高い演奏が魅力の作品で、ジェイミーの弾くウーリッツァーもいい感じだ。
14MY YARD
兄のベン・カラムとの共作曲。珍しくギターのイントロでスタートするが、このギターとローズ、さらにドラム・プログラミングに至るまで、すべてジェイミー・カラム自身が担当しており、彼のマルチ・プレイヤーぶりが堪能できる。
15MIND TRICK
アルバムからの2ndシングル曲のリミックス・ヴァージョン。ジョン・レジェンドなどのリミックスも手がけているジョニー・ダグラスによるへヴィ・ビート仕様となっており、踊るのにピッタリのゴキゲンな仕上がりだ。
16GET YOUR WAY
アルバムからの1stシングル曲のリミックス・ヴァージョン。「Get Out Of My Life Woman」をサンプリングした張本人であるプロデューサーのダン“ジ・オートメーター”ナカムラによる、かなりファンキーなミックスだ。
17I'D PROBABLY DO IT AGAIN
珍しくギター主体のナンバー。弾いているのは、もちろんジェイミー・カラム自身であるが、なかなか味わいがあって良い。普段の彼とはちょっと違った世界が堪能できるということでは、貴重な1曲といえるだろう。
18TRIPPIN' UP
兄のベン・カラムとの共作曲。ちょっぴりルーズな感じで進行していくナンバーで、ブルースやソウルっぽいテイストも魅力だ。ジェイミー・カラムの幅広い音楽性を実感することができる1曲といえるだろう。