ミニ・レビュー
“キングスロード”即ち、田島貴男にとっての“王道”ソングをカヴァーしたアルバム。(6)はペトラ・クラーク、(7)はレオン・ラッセル、(9)はフォーク・クルセダーズと、これが実に渋い選曲。ふるったアレンジはもちろんだが、独自の解釈による日本語詞がいい感じ。
ガイドコメント
ORIGINAL LOVEにとって初のカヴァー・アルバムは、1960年代の洋楽ポップス/ロックを中心に選曲され、田島貴男自ら日本語詞をつけた意欲作。東京スカパラダイスオーケストラ、森俊之、塩谷哲、kyonらがゲスト参加。
収録曲
01ヒット曲がきこえる
往年のヒット・チューンに対する憧憬と、それを2000年代のポップスとして蘇らせようとする意志。アルバムのコンセプトが見事に集約されたオープニング・ナンバー。原曲はフォー・トップスの「セイム・オールド・ソング」(1965年)。モータウン特有の軽快なビートとポップなリフが気持ちいい。
02恋の片道切符
オールディーズを象徴するシンガー、ニール・セダカのヒット曲を東京スカパラダイスオーケストラとともにスカ・アレンジでカヴァー。恋に破れ、片道切符を持って旅に出る……そんなシチュエーションを持つ歌詞を、田島は男の色気と情念をたっぷりと含んだ声でガッツリと歌い上げている。間奏のトランペットにグッとくる。
03タッチ・ミー
1969年に発表されたドアーズの4枚目のアルバム『ソフト・パレード』に収録されたヒット曲。ブラス・セクションを大胆に導入したアレンジは、原曲の雰囲気をダイレクトに伝えながら、さらなる混沌とサイケデリアを表現。「触ってさあ、ベイビー」という大胆というか、あまりに直訳な歌詞が素晴らしい。
04きみのとりこ
東京スカパラダイスオーケストラを再びフィーチャーした、ゆったりとねちっこいスカ・サウンドによって奏でられるのは、スモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズのヒット曲。“別れたいのに、やめられない”というどうしようもない恋の歌なのだが、タメの効いたビートと田島のエモーショナルなヴォーカルが、楽曲全体に圧倒的な説得力を与えている。
05さよなら、ルビー・チューズデイ
原曲はいわずと知れた、ローリング・ストーンズの1967年のヒット曲(全米1位を記録)。余計な解釈を加えることなく、きっぱりとシンプルなアレンジを施すことでメロディ・ラインの良さが伝わってくる。「さよなら、ルビーチューズデイ」というタイトルからもわかるように、思い切り直訳な歌詞も最高。
06ダウンタウン
1960年代を中心に活躍した女性シンガー、ペトゥラ・クラークの最大のヒット曲「恋のダウンタウン」のカヴァー。「街に繰り出して楽しい時間をすごせば、悲しいことなんか吹き飛ぶよ」という楽天的なリリックがすんなりと入ってくるのは、やはり田島貴男のヴォーカルゆえ。
07青い鳥
原曲は60〜70年代ロック・シーンで活躍した天才ソングライター、レオン・ラッセルのナンバー。軽快なギター・カッティング、しなやかにグルーヴしていくビート。ソウル・ミュージックのエッセンスを感じさせるバンド・サウンドは、ORIGINAL LOVE本来の音楽性に近く、その相性は抜群。シンプルな言葉で人生の深遠を捉えた歌詞も魅力的。
08Be My Baby
女性コーラス・グループ、ザ・ロネッツの1963年のヒット曲をカヴァー。日本でも多くの歌手が採り上げている有名なナンバーだが、このヴァージョンには(原曲における)フィル・スペクターによる魔法のように美しいサウンド・メイクへのリスペクトがしっかり感じられる。厚みのあるコーラス・ワークにどっぷり浸ることができる。
09青年は荒野をめざす
フォーク・クルセダーズの1968年発表のナンバー(作詞を手がけているのは五木寛之)。原曲はマカロニ・ウェスタン調なのだが、ORIGINAL LOVEのヴァージョンは洗練されたホーン・アレンジを導入した、きわめて現代的なロックとなっている。強靭な思想性を感じさせる歌詞も刺激的。
10エミリーはプレイガール
シド・バレット在籍時のピンク・フロイドのサイケデリックな曲をカヴァー。この曲でも田島はダイレクトなバンド・サウンドを採用、原曲のメロディの良さをバランスよく表現している。田島のいつになく攻撃的なヴォーカルもかっこいい。