ミニ・レビュー
躍進めざましいロック・バンドのフル・アルバム。ダークな色を発しながらも、メロウ&ヘヴィだったり、ハードに畳み掛けたり、はたまたキャッチーにもなる多彩なサウンド・ワーク。斬新な音楽性は異彩であるが潔く、リスナーに新鮮な衝撃を植え付ける。
ガイドコメント
ヴィジュアル・ロック・シーンで高い評価・人気を得ているガゼットの『DISORDER』に続くフル・アルバム。2005年12月に発売されたシングル「Cassis」を中心に、刺激的かつキャッチーなサウンドが楽しめる。
収録曲
01THE END
ダークで妖しい雰囲気を醸し出す、インストゥルメンタル曲。ループする重たいギター・リフと規則的に繰り返される英単語が、サブリミナル効果のように耳に焼きつく。Gazetteワールドへの導入剤的ナンバー。
02Nausea&Shudder
ミクスチャー色の濃い仕上がりになっているロック・ナンバー。サビ部分の歌やコーラス・ワークには、ビジュアル系的な耽美な世界観を残しながらも、メロディやアレンジは畳み掛けるような勢いに満ちている。
03Bath Room
水滴の落ちる音が不気味に響く中、リズミカルなビートとメタルのような哀愁漂うギター・リフが轟く、シリアスな一曲。切ないメロディと孤独で無力感に満ちた歌詞を、情感たっぷりに歌い上げている。
04Maggots
シリアスで、破壊的な勢いに満ちた、ハードコア・メタル風ナンバー。感情を剥き出しにして、音割れ寸前までがなるヴォーカルと、地の底から響かせるような厚みのあるコーラス・ワークは迫力満点。
05生暖かい雨とざらついた情熱
道化のようなキャッチーなギター・リフと、リズミカルなドラミングが耳を奪うロック・チューン。まるで早口言葉のように展開の早い歌詞を、Gazette独特の色気のある声で歌い上げている。
06D.L.N
どこまでも切なく、どこまでも美しいメロディ・ラインが光る、スロー・バラード・ナンバー。アコースティック・ギターとピアノの響きが、よりいっそう悲しさを引きたてている。喪失感が色濃く表われている歌詞にも注目。
07SHADOW 621
しょっぱなから、うねるベースがかっこいいロック・ナンバー。尖がったギター・サウンドを前面に押し出したアレンジが施されており、全体的に攻めな曲調。だが、メランコリックな瞬間もあったりする多彩な曲だ。
08バレッタ
ゆったりとした切ない出だしから一変、アグレッシヴなギターが響くサビに突入。その緩急が刺激的な一曲。間奏の迫力あるドラミングと、超早弾きベース、そして繊細なギター・ソロが非常にカッコいい。
09Cassis
哀愁漂うバラード・ソング。非常に完成度が高いメロディは、切なくも美しい。切なさが際立つAメロと、一筋の光を見出したような明るさを湛えたサビの対比が鮮やかだ。温かみを感じる歌詞は涙モノ。
10SILLY GOD DISCO
キャッチーなイントロが聴く人を踊らせる、ダンサブルなディスコ・ロック・チューン。しかしサビは一変してメロディアスに。繊細かつ厚みのあるコーラスは、鳥肌が立ちそうなぐらいかっこいい。
11DISCHARGE
何かに追われているような緊迫感のある、ハードコア・メタル調ナンバー。重量感たっぷりの演奏に、男臭いシャウトとコーラスが乗っており、ビジュアル系という枠を越えた仕上がりになっている。
12体温
極悪なヘヴィ・サウンドが響くイントロから、繊細でメロディアスなサビ部分への曲展開が見事。全体的に漂う、生ぬるくて狂気的な雰囲気はまさに「体温」。英語と日本語の入り混じった歌詞は、自虐的で痛々しい。