ガイドコメント
2005年に「Love Song」でメジャー・デビューした女性2人組faithの1stアルバム。クラシック音楽とブラック・ミュージック/ヒップホップを融合させた耳に残るキャッチーでドラマティックなサウンドが楽しめる。
収録曲
01Opening〜桜草〜
オリエンタルなピアノの旋律が何度も繰り返し流れるイントロは、これから始まるアルバムの幕開けとしてはうってつけの雰囲気だ。シンプルであればあるほど、この後の期待感も高まり、思わず耳をすまさずにいられない。
02Love Song
とても聴きやすいラップが、印象的なメロディと絡み合うナンバー。R&Bのテイストでありながら、驚くほど端整なピアノの雰囲気にも誘われ、何か無重力の空間に浮遊しているような心地よさを覚える。
03Precious Place
ピアノやストリングスが効果的に配置されつつ、基本はグルーヴ感を活かしたR&Bテイストの曲。彼女たちのヴォーカルは控えめだが、瑞々しい歌声で楽曲の中にうまく溶け込んでいて、とても好感が持てる。
042girls〜in the sepiatone〜
ラップを前面に押し出したトラックだが、いたるところで美しくも切ないメロディが顔をのぞかせる。まるで、R&Bとヒップホップの融合スタイルの見事なお手本を聴いているかのようだ。落ち着いたグルーヴも特徴的。
05Jam on tha groove
スクラッチをふんだんに取り入れた構成で、ラップやサンプリングを大胆に導入したエネルギッシュなインスト・ナンバー。これをアルバム『Letter To The Future』の中段に配置してくるとは、新人アーティストとは思えない、なかなか思い切った試みだろう。
06RIP TRACK
アルバム『Letter To The Future』での前曲の雰囲気をそのままうまく受け継ぐナンバー。引き続きラップやスクラッチの組み合わせによる、グルーヴ感を前面に押し出した楽曲を聴かせる。リズムに耳を委ねているうちに思わず身体が反応してしまうエネルギーだ。
07Genshoku
これぞ和製R&Bの新しい形、と思わず確信してしまうような、日本的情緒を感じさせるメロディと、ラップを主体とした楽曲の融合によって、摩訶不思議な歌空間を表現している。21世紀のJ-POPはもう何でもありだ。
08ELEMENTS
比較的ゆったりと落ち着いたグルーヴ感覚に包まれて、新人でありながら早くも余裕のヴォーカル&ラップを聴かせる2人はいったい何者なのだろうか、と謎は深まるばかり。大器へと育っていきそうなオーラを確かに見出せるナンバー。
09in the factory
もちろんHeartsdalesという強力な先輩の影響があることは事実だが、彼女らはもう少し端整な音楽的アプローチを試みている。アルバム『Letter To The Future』の中でもよりヒップホップ・スタイルを強調したこの曲では、随所にスタイリッシュな楽曲構築を垣間見せている。
10ストーク
ピアノの旋律を活かしたトラックが彼女たちの特徴のひとつといえるが、この曲はその典型的なスタイル。物悲しげなメロディ・ラインを表現するのも巧みで、日本的な哀愁感とうまくマッチしているのが印象的だ。
11FREEZ
印象的なピアノの旋律をどこまでも繰り返していきながらグルーヴを組み立てていくその手法は、まさに彼女たちの十八番といえるもの。もちろんメロディそのものに力があり、いつまでも心地よく聴けるナンバーに仕上がっている。
12QUEST OF MAZE
イントロからのストリングスの壮大な響きをバックに、R&B特有の哀感を含ませながら、感傷的な歌を表現する。いつもよりラップは少なめだが、十分なグルーヴ感があるので、いつのまにか身体が高揚してくるのだ。
13SWEET WAY〜play the piano〜
2ndシングルのタイトル曲のピアノ・ヴァージョン。ピアノのみのシンプルなスタイルで弾き語りのように歌われるので、かえって新鮮な感覚に包まれる。こういう試みも面白い。
14SWEET WAY
2005年10月リリースの2ndシングル。ピアノだけでなくストリングスも配置し、彼女たちの持てるものすべてを総動員した、アルバム『Letter To The Future』を代表するナンバー。
15The Long Sailing
クラシカルな雰囲気さえも漂う、瑞々しく美しいメロディを歌う楽曲だ。いつになく高音を意識したヴォーカルも情感豊かに響きわたり、どこか懐かしい感覚も呼び起こす。アルバム『Letter To The Future』の核をなし、もっとも優れたトラックのひとつ。
16Outro〜casablanca〜
アルバム『Letter To The Future』のラストを飾るアウトロとして収録された、何かおどろおどろしい雰囲気にすら包まれたようなインスト・ナンバー。カサブランカをイメージしたようなこのサウンドは、人生における不安をそのまま描き出しているよう。