ミニ・レビュー
約2年ぶりのオリジナル・アルバム。ハウスなどのグルーヴィなダンス・ナンバーと、センチメンタルなバラードとがバランス良く並ぶ。彼女のヴォーカルは以前よりも表現力や歌唱力が増し、特にバラード「Everlasting」でのスケール感のある歌唱は秀逸。
ガイドコメント
2006年2月リリース4thアルバム。ヒット曲「DO THE MOTION」や名バラード「Everlasting」、ゴキゲンなダンス・チューン「抱きしめる」など、これまで以上にヴァラエティに富んだ仕上りの会心の作。
収録曲
01Silent Screamerz
70年代初期のスティーヴィー・ワンダーと2000年代のダンス・ミュージックの融合型ともいえるトラックが圧倒的なインパクトを残す、アルバムのオープニング・ナンバー。アグレッシヴなハイトーンから繊細なウィスパー・ヴォイスまで、ダイナミズムを湛えたヴォーカルも魅力的で超クール!!
02DO THE MOTION
軽快なスクラッチとソウルフルなホーン・セクションが切ない音像を生み出すナンバー。80年代の歌謡曲をイメージさせるメロディとの相性もすばらしく、YANAGIMANのアレンジ・センスの良さがはっきりと現れている。恋愛の痛みと素敵をシンプルに描いた詞も刺激的。
03キミのとなりで
大切な“キミ”に何かをしてあげたいという純情な恋心を描いた、珠玉のバラード。必要最小限のリズムとキーボード、美しいストリングスを軸に、洗練されたトラックを自由に舞うヴォーカルは、シンガーとしての類まれなるセンスを証明。オーソドックスでエモーショナルなコーラス・ワークもいい。
04OUTGROW〜Ready butterfly〜
最先端テクノを彷彿とさせる強靭なビートをフィーチャーした、超アグレッシヴなダンス・チューン。ファルセットを駆使した歌声はいつになくセクシーで、ラップ・テイストの平歌(ひらうた)とメロディを強調したヴァースが織りなすコントラストも鮮烈。クラバーの評価も高そうなタイトル・チューン。
05make a secret
ファット&ファンキーなベース・ラインが心地よいソウル・ダンス・ナンバー。70年代のディスコティックをさりげなく採り入れたアレンジが絶妙。秘密めいた恋愛に溺れかける女の子のぎりぎりの感情をテーマにした詞も、揺れの大きいメロディに良く合う。
06Everlasting
ちょっと懐かしい、素朴な空気を湛えたピアノの旋律が印象的なバラード。別れを肯定的に捉える男性を主人公に据えたこの曲に、持ち前の表現力できわめて生々しい表情を与えている。ギミックや飾りを廃した感情むき出しのヴォーカルは、まさに鳥肌モノ。
07LONG TIME NO SEE
タイトなピッキングが伝わるベースや切なくもノスタルジックな鍵盤、ナチュラルなグルーヴを生み出すアコギがひとつになったオーガニック・ソウル・チューン。声を張り上げない淡々としたヴォーカルは、聴き返すたびに深みを増す。洗練されたソウルネスを湛えた佳曲。
08cosmic eyes
ドラムンベース的なリズム・アプローチにスペイシーなエフェクト・サウンドがちりばめられた、ユニークでハッピー&キュートなナンバー。サビに入った瞬間にふわりと舞い上がるようなメロディ・ライン、“感情の羽を広げて、自由に生きてみようよ”という詞も、気持ちいい。
09抱きしめる
骨太なビートのリフが繰り返され快楽がアップする、アディクト的パワーに満ちたダンス・ナンバー。80年代のマイケル・ジャクソンを彷彿とさせる楽曲構造を2006年のポップ・チューンとして再構築するセンス、声そのものが激しくステップを踏むヴォーカルがとにかくすばらしい。
10Love is just what you can't see
自身が作曲参加のミディアム・チューン。話しかけるようにきわめてナチュラルにスタートするヴォーカルは、サビで一気にダイナミズムを増し、ファルセットを絡めてオクターブを駆け抜ける。レンジの広いメロディを完璧に乗りこなす、独特のグルーヴを描き出すテクニックに驚かされる。
11Stay My Gold
絶望の淵に立っても情熱と未来は決して失わない。そんな強い決意を綴った詞が聴く者の気持ちを確実にグリップするナンバー。ひとつひとつの言葉に思いを込めながら丁寧に紡ぎだされるヴォーカルからは、“歌詞を伝える力”がはっきりと感じられる。抑制あるアレンジも心地いい。
12soundscape
2000年代のブラック・ミュージックの持つ“良質”を巧みに採り入れたR&Bナンバー。憂いを帯びたヴォーカルはしなやかなビートを湛えたトラックとしっかりリンクし、奥深いヴァイブレーションを伝える。孤独に耐え、落ち込んだ自分を励ます女の子の姿を描いた詞は、どことなく自身と重なるよう。
13With U
サルサ、サンバ、ボサ・ノヴァあたりのエッセンスを上品に採り入れた、ラテン・ムードたっぷりのナンバー。クラシカルで情熱的なストリングスをフィーチャーしたアレンジも、軽やかにリズムに乗るヴォーカルも高品質。「晴れた日ばかりじゃないけど、乗り越えていこう」という詞は、彼女の手によるもの。
14First snow
「初雪の日はきっと逢おう」という約束を思う女の子を主人公にした詞を手がけたのは、BoA自身(ラストにはハングル文字)。アーティストとしての成長をテーマにしたアルバム『OUTGROW』のラストを飾るにふさわしい、オーセンティックな魅力を宿したウィンター・バラード。