ミニ・レビュー
巻き舌と隙を突くファルセット、高低激しいメロディをリードする歌唱力に圧倒され続けるファースト・アルバム。映画『輪廻』主題歌の(2)をはじめ、全編自作の曲は、上田ケンジによるアレンジで一段とスリリングに、強烈なインパクトをもたらす。音も歌もとにかく濃い!
ガイドコメント
女性ロック・シンガー、扇愛奈の1stアルバム。サウンド・プロデューサーにデビュー時から担当している上田ケンジ、参加ミュージシャンにレピッシュの杉本恭一らを迎え、鮮烈な印象のアルバムを完成させた。
収録曲
0117才
1stアルバム『ニッポンの150cm』のオープニングを飾るのは、ファンキーなテイストを持ったハード・ドライヴィング・チューン。扇愛奈のギターは、お世辞にもうまいとはいえないが、ベーシストの上田ケンジが引き締めている。
02輪廻
03スタンプラリー
上田ケンジ、杉本恭一など異才ミュージシャンたちの強力サポートによる、記念すべきデビュー・アルバムの1曲目を飾ったナンバー。恋する相手の心にだけは自分の存在というスタンプを押せないといった、もどかしい恋心を歌う。巻き舌の個性的なヴォーカルにピッタリな、ホーン満載の歌謡曲風サウンドもインパクト強し。
04片付けられない女
チープなオルガンがどことなく60年代末の英・米のサイケデリック・バンドの雰囲気を醸し出しているナンバー。ヒステリックなギターがパンク世代以降の、ある意味フリーなサウンド・メイキングとなっているハード・チューン。
05靴ずれソナタ
J-POPでは珍しいタンゴのリズムをベースにしたアレンジが珍しい。奥野真哉のアコーディオンと十川知司のアコースティック・ピアノがフィーチャーされていて、本格的なタンゴ・サウンドに近づけている。
06レトルト (Album Version)
ユニークな歌詞が印象的なミディアム・バラード。実際には「レトルト・カレーを手作りカレーと間違う」シチュエーションはなかなかないとは思うけれど。アルバム『ニッポンの150cm』のなかでは、比較的オーソドックスなサウンド・プロダクションのナンバーに仕上がっている。
07コイバナ
イントロからいきなり秀逸なリフでスタートするアップ・チューン。惜しむらくは、このリフはイントロや後奏でしか登場しないが、この曲を聴き終えた後も頭に残るような強烈なインパクトを放っている。
08旅情
オーヴァードライヴがかかったアルペジオが、よりへヴィな雰囲気を醸し出しているマイナー・ミディアム・バラード。サウンド自体はハードだが、メロディや歌詞は歌謡曲を飛びぬけて演歌の世界観に近い。
09六本木通り
アルバム『ニッポンの150cm』のなかでは、比較的ポップな印象を与えるミディアム・ナンバー。本作も上田ケンジがプロデュースしているが、ベースは元筋肉少女帯の内田雄一郎がプレイしていて、質感が違った印象を与えている。
10100万kmのワナ
アルバム『ニッポンの150cm』での前曲「六本木通り」が比較的ポップな印象なため、本作はよりへヴィな印象を与える。ツー・ビートに近いほどBPMは高速で、スピード感満点のサウンド。3人のギタリストが共演、三者三様なプレイを聴くことができる。
11うれしい昼寝
上田ケンジがプレイするアコースティック・ギターに、扇愛奈のヴォーカルだけによるシンプルなバラード。レコーディング状態もスタジオで「せーの」で録ったようなシンプルさで、扇の曲の良さが浮き彫りになっている。
12マッサージ
アルバム『ニッポンの150cm』では内田雄一郎がベースをプレイしている曲が2曲あるが、そのうちの1曲。「100万kmのワナ」ほどではないにしろ、BPMはかなり高速。扇のオリジナリティ満点のユニークなテーマを持った歌詞が印象的なナンバー。
13未設定ジャーニー
アルバム『ニッポンの150cm』のラスト・ナンバーは、比較的オーソドックスな雰囲気を持っているサーフ風ロック・ナンバー。とはいえ、ハードなギタがフィーチャーされたサウンドは、ベンチャーズというよりも、ディック・デイル&デル・トーンズ!