ミニ・レビュー
脱退したジャスティンに代わり、マッティを新ヴォーカリストに迎えたゼブラヘッドの4作目。疾走感あふれる明るく陽気なポップ・パンクは本作でも不変で、アリのラップとの絶妙なコンビネーションも彼らならでは。特別な新機軸は何もないが、ゼブラヘッド健在を伝える力作。
ガイドコメント
新ヴォーカリスト、マッティを迎え、爽快なメロディとツボを押さえたシャープなラップ、とにかく楽しいウルトラ陽性ポップ・サウンドをさらにパワーアップさせたゼブラヘッドの通算4作目。
収録曲
01BROADCAST TO THE WORLD
4thアルバムのタイトル曲は、セックスと暴力であらゆる物事、精神状態が崩壊寸前の世界を、得意のラップ&ヴォーカルで糾弾。いつになくシリアスな雰囲気を醸し出すメロディ・ラインが、激しいディストーション・サウンドを伴って炸裂する。
02RATED "U" FOR UGLY
パンク・サイドにベクトルを置き、「もうお前にはウンザリ」だとアリのラップが激しくまくしたてる、ナルシストな女の子へのアンチ・ソング。バッキング中心にゴリゴリとスピードにのせて押し出したラウドな1曲。
03ANTHEM
4thアルバム『ブロードキャスト・トゥ・ザ・ワールド』からのリード・トラックで、メンバー脱退で解散の噂も囁かれた彼らへの不安を、明瞭なサウンドとメッセージで一蹴。見事シマウマ色に染まった新ヴォーカリスト、マッティの歌声にファンも一安心した記念すべき1曲。
04ENEMY
マッティとアリの掛け合いからサビへと一気にテンション高く突き進む、ハードかつドライヴ感満点の1曲。「敵」と歌われるのは、自身を駄目にする彼女と、そんな女に堕ちていく自分。深く重たいフレーズを奏でるギターが印象的。
05BACK TO NORMAL
軽快なカッティング・ギターとキーボードをのせたオープニングから、ゼブラヘッド調ともいえるポップでブライトな、らしい1曲。ミクスチャー感覚を織りまぜながらもソフトな触感を残した、ちょっと切ないラブ・ソング。
06POSTCARDS FROM HELL
「地獄からのポストカード」とはつまり、「彼女への絶縁状」。そんなエグくてストレートな思いをメロディアスかつキャッチーに聴かせてしまう。テクニカルなギターのタッピング・フレーズが随所で効いてインパクト大。
07KARMA FLAVERED WHISKY
ピアノのスローな出だしから激しさを増し、またスローに終焉を迎える陰影に富んだ展開、エッジの効いたリフやフレージングなど、多分にヘヴィ・メタルの要素を感じさせる1曲。ギターのタッピングもよりそちらの趣で響く。
08HERE'S TO YOU
ユニゾンの綺麗な音色を聴かせるギターが印象的なイントロではじまり、マッティがオープニングからヴォーカルをメインで取る。彼らのポップ・パンク色を強く打ち出した1曲。女に振り回される男を歌った歌詞も彼ららしい。
09WAKE ME UP
激しいドラムのロールから随所でヘヴィメタ的アレンジを覗かせながらで突っ走る、ハイテンション・ナンバー。アリのスクリームを伴いながら、「嘘に生きるなんてゴメンだ」とキッズたちを熱いメッセージで煽動する。
10LOBOTOMY FOR DUMMIES
「hey!」と挟み込まれるアリの掛け合いに、思わず縦ノリになること必至のキャッチーなポップ・パンク・チューン。すんなりと耳に入り込んでくるメロディも中毒性を内包。ハイトーンのヴォーカルが際立つ1曲だ。
11THE WALKING DEAD.
夢も希望もなく生きるやつらを、死人だとバッサリ。ミドル調の一風変わったイントロから、タイトルの怪しく不穏な雰囲気がいっぱい。メロディ&歌詞はパンク、ギター・ソロはいきなりヘヴィメタとミクスチャー・センス爆発。
12YOUR NEW BOYFRIEND WEARS GIRL PANTS
シンセの広がりあるサウンドを効果的に配したミドル・ナンバー。アリのラップもここでは憂いを帯び、マッティのヴォーカルをじっくり聴かせる。タイトルはお馬鹿でも、シリアスな雰囲気と込み上げるようなダイナミズムにあふれた1曲。
13RIOT GIRL
重く響く、図太いヘヴィなリフが心地よい1曲。パンクのライオット精神を彼らの下世話なユーモアを覗かせながらキャッチーに聴かせる。アリのラップも熱を帯びてひときわ激しい。
14DOWN IN FLAMES
アリ&マッティの絶妙の掛け合いがとにかく爽快。エッジの効いたメロディとアッパーなリズムがもたらす高揚感。ラップにパンクにヘヴィ・ロックとありふれた素材で平易なミクスチャーに成り下がらない巧みなアレンジは眉唾の出来だ。