ガイドコメント
スライをリスペクトするアーティストたちが参加した、夢のコラボレーション・アルバム。オリジナル・マスター・テープを使用し、スライの音楽に対するリスペクトをそれぞれが存分に表現している。
収録曲
01DANCE TO THE MUSIC
ヒップホップは原曲へのリスペクトなしに良い曲にはならない。ブラック・アイド・ピーズの家長ウィルはこの曲を最高のダンス賛歌に仕立てた。聴いていてひしひしと感じるはずだ、ウィルのリスペクト「俺、この曲が好きだ」。
02EVERYDAY PEOPLE
プリンスを思わせるリズムだ。プリンスと同じく艶っぽいヴォーカルが売りのアダムが歪んだギターをバックに歌いあげる。マルーン5のオリジナルでは聴けないアレンジが、トリビュートならではの遊び心を感じさせる秀作。
03STAR
いかなるヒップホップのトレンドにも流されないルーツ。人間賛歌ともいえる原曲の意図を汲みながらも、取り囲む状況に対しては辛らつにラップしている。まさにこの曲を作った時は、まだ赤裸々にできなかったスライの胸の内を代弁しているかのようだ。
04RUNNIN' AWAY
スリーピー・ブラウンはスライと同じく70年代に活躍したファンク・バンド、ブリックのジミー・ブラウンを父に持つ。父も影響を受けたであろうスライへのあこがれなのか、持ち前のメロウな声で大事そうに歌っているのが印象的。
05FAMILY AFFAIR
3人のヴォーカルがメロディを競うように歌うスライ最大のヒット曲。スライの音楽はソウルの縮図、ジャンルはもとより人種の壁まで打ち破る。CHARAもサンプリングしていた、カッティングが心地よいワウギターも要チェック。
06(YOU CAUGHT ME) SMILIN'
新たに加えられたヴォーカル、ホーンのフレーズが秀逸。ハンドクラップやスクラッチも楽しげだ。「俺を微笑ませる」は陳腐な訳だろう。それをアウトキャスト・ファミリーの3人がどんなふうに微笑んでるのかを見事に書き足している。
07IF YOU WANT ME TO STAY
原曲はドラムの音が小さく、デジタル音楽に耳慣れた人には物足りないはずだが、このアレンジは大成功。リマがスライの唱法を真似ているのも好感が持てる。このうねるヴォーカルからは、刺青だらけの白人の風貌は想像しにくいだろう。
08I GET HIGH ON YOU
原曲の気負いを感じさせないリメイクだ。昔ながらのファンクっぽいラップでスライにゆったりやろうぜ、といわんばかりだ。この曲はスライのソロ名義だが、このワイルド・バンチのように彼の音楽は大人数が良く似合う。
09LOVE CITY
この曲でモービーの声は聴けないが、彼ならではのリミックスだ。原曲の構成は一切無視、リズムとヴォーカルが強調されている。この曲のオイシイ所はここなんだぜ、とデコレートされていない素材のスライが楽しめる。
10YOU CAN MAKE IT IF YOU TRY
バディ・ガイ、ジョン・メイヤーがギターと自身の声で楽しそうに遊んでいる。両人とも完成されたアーティストだが、ここにその姿はない。トリビュートだからこそ見えてくるアーティストの底力がこの曲にはある。
11SING A SIMPLE SONG
スライの魅力の一つは一度聴いたら忘れないリフの素晴らしさだ。そこへ、この強力なリフに負けないこの3人のかけあい。その時代ごとのヒーローを集めているところがにくい。特筆すべきはアイザック・ヘイズ、長老が一番元気だ。
12I WANT TO TAKE YOU HIGHER
イントロでスティーブンがスライに呼びかける演出が心憎い。鬼気迫るヴォーカルはジャニス・ジョップリンを思い出す。もちろん高速シャウトも健在、ランドルフのペダル・スティール・ギターの奥で鳴る彼のブルース・ハープも聴き逃さないで欲しい。
13DON'T CALL ME NIGGER, WHITEY
題名にある「ホワイティー(白人)」の歌詞が一回も出てこず、パルメザンと白人を揶揄している。当時、人種男女混合バンドだったスライ&ザ・ファミリー・ストーンは異彩を放っていた。その頃の風潮をちくりと刺す焼き直しになっている。
14THANK YOU NATION 1814
マッシュ・アップどころの騒ぎではない、プロデュース・ワークのけんかである。スライ対ジャム&ルイスの丁々発止。新旧の2曲、馴染んでないのがこの曲の良さ。声量ではスライの勝ち、ダンスではジャネットの勝ちといったところか。