ミニ・レビュー
無神経に触れると壊れそうなイノセンスと周りが思うほど弱くはないタフネスを、ものすごく上手にサウンド化した感じ。デビュー以来、シングルが立て続けにヒットしたYUIのファースト・アルバム。ヴォーカルも説得力があるし、ほとんどが自作というのも頼もしい。★
ガイドコメント
YUIの1stアルバム。もちろんヒット・シングル4曲すべてを含む内容で、彼女のポップ・センスや、その世界観が反映されたメッセージがぎっしり詰まった贅沢な1枚だ。
収録曲
01Merry・Go・Round
徐々に熱を帯びるヴォーカルに心惹かれるギター・ロック。愛情が空回りする恋愛を“Merry・Go・Round”に喩えた詞、感情をかきむしるメロディ、生々しいエモーションのヴォーカルがひとつになった、1stアルバムのオープニング・チューン。
02feel my soul
“月9”主題歌のメジャー・デビュー曲。瑞々しくも可憐、まっすぐに感情を表現するアティテュードで、純粋なモチベーションをはっきりと映し出す。もがきながらも前を向き歩いていこうという決意を歌ったミドル・ロック・チューン。
03Ready to love
ピュアな恋心を起伏に富んだメロディで描き出したナンバー。リアリティのある歌詞は、彼女の音楽の大きな魅力。ヒップホップの要素をほんのりと加えたサウンド・メイキングが、アコギの切ない響きをよりいっそう際立たせている。
04Swing of lie
ブルース、フォークの要素を色濃く感じさせるギターと美しい憂鬱を湛えたヴォーカルがしっかりと融合した、YUIの音楽性の広さを伝える楽曲。すれ違う恋人たちをブランコに喩えた詞からも、豊かなイマジネーションが伝わる。
05LIFE
アコギのリフが響いた瞬間、グッと体が揺さぶられる独特のグルーヴが魅力的。心地良く駆け抜けるビート、どこまでも自由に伸びるメロディも印象的。もがき苦しみながらも夢に向かうというテーマを持った詞に、彼女自身の姿が重なる。
06Blue wind
淡々としたビートに乗るアコギは、触れた瞬間に壊れるほどに儚く、夢のように美しい。音楽を作り表現することに悩み、葛藤する思いを綴った詞がゆったりと染みるミディアム・メロウ・チューン。穏やかにささやくようなヴォーカルも魅力的。
07I can't say
アコギと歌だけで充分に成り立つオーガニックでフォーキーなナンバー。恋人に素直になれず、気持ちを伝えきれない女の子を主人公にした詞は、幅広い層に共感されそう。意外性に富んだコード進行、切なさの向こうに微かな光が見えるようなメロディも、特徴的。
08Simply white
できるだけシンプルに生きたい。そんな現代的なテーマをわかりやすく、身近な言葉でくっきりと描き出した楽曲。友達に気軽に話しかけるようなヴォーカルが、聴く者をナチュラルに曲の世界へ導く。抑制の効いたサウンドも、ぴったりはまっている。
09Just my way
出かける間際になって、鍵が見当たらない! そんな状況を歌うグルーヴ感たっぷりのロック・チューン。アグレッシヴなパフォーマンスを繰り広げる姿が浮かぶこの曲は、実際、ライヴでも大きなポイントに。シャウトを交えて展開する攻撃的なヴォーカルも刺激的。
10Tomorrow's way
2005年夏公開の映画『HINOKIO』主題歌の2ndシングル。人間は夢を叶えるために生まれてきたはず……というメッセージが心を打つミディアム・バラード。大きなテーマをリアルに伝える彼女の歌には、18歳とは思えない深い説得力が宿る。レンジの大きいメロディも素晴らしい。
11I know
アコギとエレキギターが有機的に絡み合うイントロからグッと引き込まれる。トーキング・ブルース的なAメロに大らかな解放感を湛えたサビメロのくっきりとしたコントラストも美しい、洋楽テイストのロック・チューン。自身の感情と宇宙を行き来するようなスケール感を湛えた詞も聴き応え十分。
12TOKYO
夢を叶えるため東京へ。戸惑いと期待、あふれる希望と不意に襲ってくる不安。地元・福岡を旅立つ時の体験をもとにした3rdシングル。歌と完全に一体化しながら、感情を立体的に描くアコギが素晴らしい。もちろん、生々しい息遣いを湛えた彼女の歌も。
13Spiral&Escape
エレクトロ、音響系の要素を感じさせるバック・トラックが新鮮。アコギと歌がYUIの音楽性の中心だが、その音楽性は小さな枠に収まらないことを証明するナンバー。恋愛に臆病な男の子に対する気持ちをテーマにした歌詞も強烈で、女の子の“覚悟”の凄さに脱帽。