ミニ・レビュー
朝本浩文の作曲によるシングル「Oh we Oh」を含む8曲入りアルバム。肉体的な快楽を呼び起こすバイブレーション、美しさと強さを同時に感じさせてくれるメロディ・ライン、人間の深い部分を描き出すリリックは、まさに“ソウルの本質”を体現している。
ガイドコメント
2006年2月リリースのアルバム。“ソウル・ミュージック原点回帰”をテーマに、70年代からの各時代のソウル・クラシックにモダンなR&Bテイストを加えた作品。ジャネット・ジャクソンの「again」など、カヴァー曲も披露。
収録曲
01Oh we Oh
原点回帰をテーマに、彼女自らのルーツであるソウル・ミュージックの粋を集めたかのような弾けたアッパー・チューン。朝本浩文のプロデュースによる厚みのあるゴージャスなサウンド・デザイン、時代性を感じさせるトラックがSAKURAの声を自由に踊らせている。とてもナチュラルで爽快な仕上がりだ。
02Bye Bye Baby
BIG HORNS BEEのごきげんなホーン、松原秀樹(ベース)、沼澤尚(ドラム)のリズム隊、浅野祥之(ギター)といった、シングル「Oh We Oh」のカップリング「Best Of My Love」と同じメンツで生み出されるグルーヴ。SAKURAの絶妙なヴォーカル・ワークが光る、とてつもなくかっこいいファンキー・チューン。
03SMILE 4 ME
リアルで温かみのあるヴォーカルが素敵に響くミディアム・チューン。熱く迫るのではなくあくまでも自然体の愛の歌に、母なるSAKURAのやさしさが見え隠れする。サウンド・プロデュースは、BoAやF.O.H、Tylerといったアーティストの楽曲アレンジを手掛け、R&B系のトラック・メイクに定評のあるAKIRA。
04Best Of My Love
SAKURAのカヴァーといえば最近ではアルバム『SAKURA SINGS BALLADS-Smooth Side-』で十分過ぎるほど堪能できたが、これはエモーションズの名曲のカヴァー。彼女の安定感のあるヴォーカルと森俊之がデザインするホーンを使った生音重視のサウンドが、いい感じで混ざり合っている。
05広がるリズム
ソウルフルなSAKURAのヴォーカルとコーラス・ワークを味わえる幸せ。朝本浩文が創るトラックはあくまでもクールだが、そのフィールドを縦横無尽に駈け回る彼女の声の熱さを冷ますことなく、いっそう引き立たせている。どこかクラシカルで、かつ革新性を含んだR&Bはとても魅力的に見えるのだ。
06BUDDY TO BOO
聴けば聴くほど浸透率を高める美しいメロディとコーラス。穏やかなミディアム・バラードと思いきや、リリックに描かれる世界はとても切実な想い。フェイクとクロスするサビ展開は圧巻。自らもベースを弾き、鍵盤とストリングスの響きがキラキラ感を高めるサウンド・プロデュースは、CHEMISTRYのアレンジで知られる益田トッシュ。
07again
ジャネット・ジャクソンの93年のヒット・ナンバーをカヴァー。小島良喜のピアノによるシンプルなアレンジながら、ここで展開される世界はかなり濃密なもの。SAKURAのヴォーカルは緻密でしかも包容力がある。たとえばブレスひとつひとつをとってみても、そこから生身の人間としてのぬくもりが伝わってくるのだ。
08WHY
歌われているのは親友が彼の新しいガールフレンドだったというやりきれないシチュエーション。SAKURAのヴォーカルはエモーショナルだがディープになることなく、躍動感を持って想いの揺れとリンクするように表情を変えていく。益田トッシュによるアコギを入れた温かいサウンドがいい雰囲気を作っている。