ミニ・レビュー
2005年から2006年にかけて、もっとも注目を集めることになった超新星バンド、RADWIMPSのメジャー・デビュー・アルバム。西海岸メロコア〜エモコアのエッセンスを血肉化した彼らのロックは、激しくて楽しく、繊細にしてダイナミック。キュートな旋律もいい。
ガイドコメント
2006年2月リリースのメジャー1st、通算では3枚目となるフル・アルバム。直球ラブ・ソング「25コ目の染色体」をはじめ、楽曲ごとに様々な表情を見せるバラエティに富んだ仕上がり。今後のさらなる飛躍を感じさせる1枚だ。
収録曲
014645
重厚なギター・リフに、ポップでパワフルなメロディはまさに西海岸のミクスチャー・バンドのごとく。ほぼ全編にわたる英詞をこなす野田のヴォーカルも、一聴すると本場ものかと錯覚するほど堂に入ったもの。で、このタイトル、「ヨロシコ」と読む。「結婚してください」という、実はプロポーズ・ソングだったりするのです。
02セプテンバーさん
これこそ、夏の終わりのノスタルジックな心の風景そのもの。二十歳の瑞々しい感性と、その早熟な才能がなし得た奇跡の名曲だ。ロックの哀愁と日本的情緒が溶け合うサウンドは、初期のくるりを彷彿させる。ナチュラルなギターの響きに、4つ打ちが重なり広がっていく展開は、野田の切ないヴォーカルと相まって実に感動的。
03イーディーピー〜飛んで火に入る夏の君〜
“メンバー全員が共通にリスペクトするのは、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ”というエピソードも頷ける、ポップでパンチの効いたミクスチャー・ロック。そこへ決して相容れないはずの“日本の情緒”をサラリと織り込んでしまった、驚愕のナンバー。英語詞と日本語詞を自在に歌いこなす、野田の柔軟なヴォーカルも圧巻。
04閉じた光
「生きていること」という壮大なテーマを星空に描き出した、ギターが轟くダイナミックなロック・ナンバー。あまりに早熟な音楽センスに驚かされる彼らだが、青臭い葛藤にあふれるリリックと、刹那的に疾走していくプレイは、等身大の二十歳ならでは。バンプ・オブ・チキンの鮮烈なデビューを思わせる、若さと才能がほとばしる秀作。
0525コ目の染色体
“あなた”への愛が果てしなく膨らみ、ついに二人で作る次の命(染色体)へその想いを託すという、ミクロにしてとてつもなく壮大なラヴ・ストーリー。独創的なリリックに描き出されるのは、命への慈しみとまっすぐな愛。詞の世界を存分に解した、バラード調からロック調へ疾走するアレンジもまた、奇跡と言えるほど感動的だ。
06揶揄
彼らが多彩な音楽性を持つことは百も承知だが、これにはビビりまくり。タイトなピアノを従え、野田のヴォーカルが縦横無尽に駆け回る、ジャジィなナンバー。官能的でスリリングなサウンドにエゴラッピンも真っ青(かも)。流れるようなリリックで言葉遊びをする余裕といい、職人的な音といい、恐ろしいほどの才能が炸裂!
07螢
“光ってないとね、誰も僕を見ないんだよ”……。悲しみを抱えながら、それでも生きていく僕らを、儚い“蛍”に重ねたあまりに美しいロック・バラード。感情を分かち合う存在の大切さや、生きることのかけがえのなさ……。そんなことを思い出させてくれる、3thアルバムのなかでも重要なハイライトといえる名曲だ。
08おとぎ
これから始まる二人のラヴ・ストーリーを、永遠のおとぎ話に重ねたロマンティックなラヴ・ソング。エモーショナルかつ骨太なロック・サウンドに、J-ROCKならではの繊細さを携えた秀作。ほぼ全編にわたる英語詞は、ネイティヴばりの自然なメロディ・ラインを描き、改めて野田が帰国子女だということを認識する。
09最大公約数
二人が一つになるのではなく、二人の共通を共有しよう……。その器とは“最大公約数”。野田らしい独創的なセンスにまたしても感服させられる、サイエンティフィックなラヴ・ソング。無限に続いていく数……その壮大なスケール感を、浮遊感あふれる、爽やかなサウンドで描き出していく4人の職人技に感服。
10へっくしゅん
愛にあふれる彼らの作品群とは一線を画す、怒りと自虐に満ちた迫力満点のダークなナンバー。サビのラップ部分では、エミネムばりの攻撃性を見せるも、一筋縄で終わらせないのがこの4人。暴力と神聖、穢れと純真……。音にもリリックにもこのコントラストが見事に描き出され、聴けば聴くほど美しくなる秀逸のトラックだ。
11トレモロ
常にヒネリを聴かせたサウンドでリスナーを驚かせる若き4人だが、ここではスッピンの美しさが満開。涙が出るくらい切ないメロディと若さほとばしる疾走感が、どこかバンプ・オブ・チキンを彷彿させる、これぞJ-ROCKなサウンドを披露。ここで俄然輝くのは、ダイナミックななかにも哀愁を秘めた桑原の絶品のギター・プレイ。
12最後の歌
消えていった命への慈しみ、生きていることへの感謝を綴った、切なくも心温まるスロー・バラード。ノスタルジックなメロディに味わい深いヴォーカルは、キャロル・キング顔負け。人間のさまざまな感情を描き出した3rdアルバムを締める、いわばまとめの歌だが、彼らが言いたかったことは、つまり“愛”なのだ!