ガイドコメント
前作から約3年ぶりとなる5作目のスタジオ・アルバム。独自のインスト・ギター・ロックを表現してきた彼らが丹精した自信作だ。日本人ヴォーカリストTetsuya Fukagawaがゲスト参加。
収録曲
01AUTO ROCK
東洋的なピアノの調べと丸みを帯びた電子音は、雪か花が舞い散るような優美な情景を想起させる。非常にイマジネイティヴでスケールの大きい、アルバム『ミスター・ビースト』の幕開けに相応しい雄大なナンバー。
02GLASGOW MEGA - SNAKE
イントロから一転、複数のギターがメタリックにうねりまくる轟音ナンバーへとなだれ込む。獰猛でアグレッシヴなギター・サウンドとあふれんばかりの躍動感は、彼らのライヴで体感できるフィーリングに近い。
03ACID FOOD
スティール・ギターを使った、波の音が聴こえてきそうなサーフ・ミュージック風のまったり感が心地よい。彼らがこういう楽曲をやるのは意外だが、チルアウトに最適な洒落たヴォーカル・トラックに仕上がっている。
04TRAVEL IS DANGEROUS
幾重にも重なる音の層とその中でせめぎ合う美しいメロと轟音ギターという、モグワイの醍醐味が堪能できる楽曲。ヴォーカルとコーラスももはや楽器の一つにしかすぎず、ストーリーをより鮮やかに彩っている。
05TEAM HANDED
ミニマルなビートに浮遊感のあるエレクトロとエレガントな鍵盤の調べが優しく溶け合ったサウンドからは、静謐ながらすべてを包み込むような懐の広さと包容力が感じられる。味わい深く癒される楽曲である。
06FRIEND OF THE NIGHT
情感豊かに綴られるサウンド・スケープは、静かながら力強さとロマンティックな甘さを兼ね備えており、音色がミニマルでシンプルなわりに聴きごたえがある。バンドとしての確かな成長を感じさせる佳曲だ。
07EMERGENCY TRAP
色とりどりのサウンド・テクスチャーを重ね、幽玄の美ともいえる趣と崇高な輝きが感じられるナンバー。あらゆる美しい光景が浮かんでは消えていくムードのなか、しばし日常の喧騒を忘れ、ささやかな幸せに浸ることができるナンバーだ。
08FOLK DEATH 95
アルペジオと反復の上にスペイシーなエレクトロ・ノイズ、轟音ギターと多彩なサウンド・テクスチャーによる重層的アプローチが楽しめる。洗練の中にも静と動がしっかりと主張しあう典型的なモグワイ節ナンバー。
09I CHOSE HORSES
モグワイと交流の深い、envyのフクナガテツヤによる日本語のポエトリー・リーディングをフィーチャーした、穏やかで美しいスロー・ナンバー。ファンの間では賛否両論だが、アルバムに深みと奥行きを与える1曲といえる。
10WE'RE NO HERE
アルバム後半の穏やかな流れを打ち破るようなラウド&ヘヴィなナンバー。高みへのぼりつめていくような扇情的なギターが、激しくも切なく心に響く。ラストのフィードバック音がいつまでも余韻として残る。
111PERCENT OF MONETER
大自然を思わせる崇高なうねりの中に、激しさと美しさが同居するドラマティックな佳曲。後半ではフィードバック・ノイズが響き、繊細で美しいメロディが舞うシューゲイザー・サウンドにどっぷり浸れる。