ミニ・レビュー
メアリー・J、マリオ、クリス・ブラウンなどなど、多くのシンガーに曲提供してきたS.スミスが、ニーヨとなって自ら歌う初ソロ作。自作のメロディの良さ、健やかで明るい歌いっぷりは現行シーンにあっては貴重。息の長いアーティストになりそうだ。★
ガイドコメント
マリオの「レット・ミー・ラヴ・ユー」をはじめ、メアリー・J.ブライジ、フェイス・エヴァンスなどに楽曲を提供してきたソングライターが満を持してソロ・デビュー。デフ・ジャム勢が全面的に参加。
収録曲
01STAY
ロッカフェラのラッパー、ピーディ・ピーディをフィーチャーした、ロン“ネフ・U”フィームスターのプロデュース作品。デバージの「ステイ・ウィズ・ミー」使いがしっくりとハマった、陽性のメロディとスムースなヴォーカルの浸透度が高いナンバー。
02LET ME GET THIS RIGHT
ブライアン“B・ナスティ”レイドのプロデュースによるソウル・チューン。“本気で付き合うのかはっきりさせてくれ”と迫る男臭いアプローチ・ソングで、安らぎあるヴォーカルに、旧き良き佇まいを持ったピアノやギターのサウンドが寄り添う1曲。
03SO SICK
リアーナ、ブランディらを手掛けたノルウェーの二人組プロデュース・ユニット、スターゲイトの作品。失恋の痛手を引きずる男の未練がましい感情を、メランコリックな旋律とマイケル・ジャクソンの面影も見えるヴォーカルで表現したミディアム・バラード。
04WHEN YOU'RE MAD
“君は怒った時がなぜかセクシーで抱きたくなる”と、自身の性癖を吐露したパーソナルなラブ・ソング。シンプルな楽曲の良さをそのまま活かした中庸なテンションを保つプロデュース・ワークは、シェイ・テイラーによるもの。
05IT JUST AIN'T RIGHT
Switchの「I Call Your Name」をネタ使いした、カーティス“ソース”ウィルソンのプロデュースによるソウル・チューン。新しく見つけた相手といても別れた君を想うという違和感を、情感込めたスムースなヴォーカルで描く。
06MIRROR
“鏡の前で愛し合おうよ”という刺激的な告白が綴られるミディアム・スロー・バラード。シェイ・テイラーによるシルキーでメロウなサウンド・プロデュースが、ブラックとポップを絶妙に配合していて、居心地が良い。
07SIGN ME UP
ロン“ネフ・U”フィームスターのプロデュース作品。オレの現在・未来にサインしてくれと愛の契約を迫るプロポーズ・チューンで、レゲトンやらダンス・ホール風のリズムとビートが腰を軽やかに揺らす。陽気さが光る1曲。
08I AIN'T GOTTA TELL YOU
ロッカフェラのハウス・プロデューサー、ブーラが手掛けたモータウンの薫りも感じるハートウォームなバラード。ホーンの艶やかな音色が妖しさを生み、マイケル・ジャクソン「ヒューマン・ネイチャー」を想起させるコーラスがグッド・アクセント。
09GET DOWN LIKE THAT
オージェイズ「I Swear I Love No One But You」をネタ使いしたプロデューサー、アーヴィン“EP”ポープの手腕が光るナンバー。ゆったりとたゆたうレイドバック感あふれる曲調で、“もう昔のようには戻れない”と恋の終焉を告げる。
10SEXY LOVE
ストリングスの音色にシンプルなビートが心地よく刻まれるミディアム・チューン。どことなくマイケル・ジャクソン「ヒューマン・ネイチャー」の旋律を感じるサウンドに、マイケルの表情をところどころ垣間見せながら、ニーヨが情熱的に歌う。
11LET GO
イントロからコーラスまで展開される瑞々しいストリングスが印象的な、スターゲイトのプロデュース作品。“君から立ち去るなんてできない”と懇願するさまを、情感タップリなコーラスで魅せるミディアム・チューン。
12TIME
時の移ろいの中での悲しみや嘆きを、湿度ある重厚さも見えるサウンドで描いたミディアム・バラード。美しく儚い旋律に、失意を感じさせる表現力豊かなヴォーカルが映え、リスナーの胸にグッとくるシリアスなナンバー。
13GIRLFRIEND
言い寄った女性に同性の“ガールフレンド”がいると知り、話がしたかっただけと強がる男の情けなさを歌った、シックス・ジョンによるプロデュース作品。オージェイズ「ファミリー・リユニオン」をネタ使いした、レア・グルーヴ感が心地イイ。
14LONELY
シックス・ジョンによるプロデュース。タクシーの曇ったガラス窓に“Y・L・E・N・O・L”と書いて寂しさに気づいてくれと願う、男のやり切れなさを歌う。東欧の重々しさを感じる暗澹としたアレンジが、雨模様の心を巧みに映し出している。