ミニ・レビュー
ヒット・シングル(1)(4)(7)を含むセカンド・アルバム。岸田繁、會田茂一、高桑圭、奥田民生、mitoなど、錚々たる面々が参加。キュートな歌声は健在ながらも、重厚な手触り。ファースト時にあった“キラメキ”より、真摯に“ロック”と向き合うことを選んだカエラに拍手。
ガイドコメント
2006年3月発表の2ndアルバム。奥田民生プロデュースの「BEAT」やヒット曲「リルラ リルハ」などの既発シングル曲のほか、岸田繁が手がける楽曲など全13曲を収録。アーティストとしての成長がうかがえる力作。
収録曲
[Disc 1]
01リルラ リルハ
「REAL LIFE」=リルラ、「REAL HEART」=リルハ、というカエラ流表現によるタイトル。悩みも自分次第で、今しかないこの時間を変えていくことができるという気持ちを、優しさとともにポップに表現したナンバー。ソリッドでヘヴィな音を繰り出すバックに負けない、強くのびやかなヴォーカルに聴きほれる。
02tea cup
「リルラ リルハ」同様、曾田茂一のず太いギター・リフがけたたましく鳴る骨太ロック・ナンバー。カエラ自身が大好きなマグカップと人の心を重ねて、「中に注ぎ入れるものは大好きなもので満たしたいよね?」と歌うとってもガーリーな1曲。
03I♥hug
SINGER SONGERのメンバーとして、またプロデューサー、アレンジャー、ソロ・アーティストとして活躍する堀江博久・作曲によるナンバー。カエラ・エレクトロニカといえそうな、漂う音に身をまかせたい浮遊感を讃えた1曲。
04BEAT (Album ver.)
奥田民生との共演により、その独特な脱力感と語彙の特異さを継承した4thシングルのアルバム・ヴァージョン。平易なメロディ・ラインとシンプルなリフ。がしかし、聴けば聴くほど民生味が出る、昆布のような1曲! アルバム版はシングルよりもアウトロが長尺に。
05トゥリル トゥリル リカー
「星に願いを」をカエラ的に意するところ「トゥリル トゥリル リカー」。敢然とロック・スタイルを打ち出し、ここでも曾田茂一によるガレージ色あふえるラフな音作りが印象的。ポップでロックなカエラを象徴するような1曲だ。
06Twinkle (NANA ver.)
「リルラ リルハ」のカップリング曲で、矢沢あい原作の人気コミック『NANA』のトリビュート盤に提供された別ヴァージョン。メロコアチックなアッパー・チューンで、「ラララル〜」でサビを歌ってしまうカエラのセンスに脱帽。
07You
心地良いグルーヴ感にのせ、爽快なメロディでおくるカエラ流応援歌。人と人とのつながり、コミュニケーションの大切さを明快に歌うナンバーで、作曲、プロデュースはライヴでのバックバンド・ギタリスト、渡邊忍が担当。サビ部分で挿入される“YOU”と語りかけるような彼女の声に耳を傾けたい。
08PIONEER
下手すれば、何かのコメディ映画で流れていそうな軽薄なイントロ。妙に軽〜いノリを大森はじめ(東京スカパラダイスオーケストラ)のパーカッション・アレンジが全体をさらに軽快に。それでもカエラが歌うポジティヴなメッセージはロックだ。
09Deep Blue Sky
吉村秀樹(bloodthirsty butchers)による1曲で、ディープな世界観をギターの轟音、残響、ノイズ、さらにはチェロの弦楽器も混ざった混沌とした音像で創出。くぐもったカエラの歌声が印象的だ。
10Dancing now
岸田繁(くるり)のポップでありながらクセのあるメロディを、如実に捉えたカエラの歌詞が眉唾な出来の1曲。クセになりそうな巧みなギターのリフ回しとシンプルなフレーズのリフレインが、柔らかく脳裏に刷り込まれる。
11Circle
エレクトロニカ調のmito(クラムボン)作曲のナンバー。人生や季節、さまざまな物事が巡るさまを“円”として捉えた、2ndアルバム『Circle』のコンセプトを高らかに歌った1曲。無機質なサウンドの中からあふれる人肌の温さが心地よい。
12はちみつ
歌詞にあるような、2人で目覚めた朝のまどろみに酔っているかのような、リラックスしたカエラの歌。ロッキンにキメた彼女とはうってかわって、女性的な声に耳を奪われてしまう。エンディングに向かって夢見心地はさらに続く。
13C-hildren
田渕ひさ子(bloodthirsty butchers)作曲のナンバーで、ラウドで破壊的なギターがスピード感と焦燥感を伴って鳴り響く1曲。シリアスに未来を見据えた歌詞が、よりいっそうこの曲の持つ切なさを高めている。
[Disc 2]〈DVD〉
01リルラ リルハ
02BEAT
03You