ミニ・レビュー
プリンスのユニバーサル移籍第1弾。このところアダルトなテイストの作品が続いていたが、エロティックな歌と詩も復活。まさに面目躍如たるエレクトロ・ポップ・ファンクを聴かせる。一方でソウル・バラードからモータウンのプリンス化まで、才覚があふれる!★
ガイドコメント
御大プリンスのユニバーサル移籍第1弾アルバム。グラミー賞2部門を受賞した『ミュージコロジー』から約2年ぶりとなる本作。まさにプリンスらしい独特の世界観をもったポップ・ミュージックが楽しめる。
収録曲
013121
この躍動するドラム・ビートはドラム・マシンでは出せない。もぐるベースはファンキー、腰を低くして踊りたい。70年代後半からトップ・アーティストであり続けるプリンスの自信に満ち溢れた、アルバムのタイトル・ナンバーだ。
02LOLITA
テクノロジーから解き放たれたプリンスは比類なきグルーヴを生み出す。縦横無尽に動き回るシンセに呼応するようなヴォーカル、変態さは鳴りを潜めているが、どこまでもポップなメロディが楽しいリフ・チューンだ。
03テ・アモ・コラソン- TE AMO CORAZモN -
いつの時代も「愛」を歌ってきたプリンス、彼ならではのロマンティシズムが楽しめる曲。多くのミュージシャンに囲まれ、リラックスしながら、しなやかに歌っている。シャーデーの「スムース・オペレーター」を思わせる曲だ。
04BLACK SWEAT
プリンスのお得意のコード楽器を排した大胆なミックスと奇妙なファルセット・ヴォイスが楽しめる。コードうんぬんで片付けられないことでも、音楽性の高さを感じさせる。このひねた16ビートの世界はここでしか味わえない。
05INCENSE AND CANDLES
デビュー以来、プリンスのセクシュアリティは不変だ。その度に物議を醸してきた彼のそれだが、色気が失せてはプリンスではない。珍しく後半でラップも聴かせてくれるが、基本は「ベッド・ルーム・ヴォイス」で迫るセクシー・チューン。
06LOVE
初期ファンを安心させてくれるメロディだ。愛の伝道師がいやというほど「愛」について教えてくれる、けれん味のない分かりやすいポップ・チューンに仕上がっている。ここで踊ってくれといわんばかりの後半も楽しい。
07SATISFIED
スロー・シャッフルで迫る余裕たっぷりのノスタルジック・ナンバー。レガート・ベースがかっこいい。ソロと全く違うキャンディ・ダルファーのサックス・プレイが脇を固める。お転婆お姐もプリンスの前ではやけに行儀がいい。
08FURY
初期作品「バンビ」のようなギター・チューン。あまり騒がれないが、プリンスは超絶技巧とメロディを同居させる唯一無二のギタリスト。そのギター・プレイが存分に楽しめる。楽しそうに弾きまくる姿が浮かんでくるような曲だ。
09THE WORD
プリンス流のメッセージ・ソング。「早く、行動に移そう」とあおるが、あくまで強制ではなく提案だ。乾いたスパニッシュ・ギターが聴く者を緊張へと駆り立てる。サンタナを彷彿とさせる狂おしいギター・ソロが絡みついて離れない。
10BEAUTIFUL, LOVED AND BLESSED
日本人があこがれるメロディだ。アクセントになっているハープと16ビートのシャッフルが誰の気持ちをもやさしくし、そしてリッチにしてくれる。リード・ヴォーカルをとるテイマーがプリンスの「愛」を読み解いていく。
11THE DANCE
フェティシズムあふれる曲だ。それでもプリンスの「愛」は異常ではなく、誰の心にも潜んでいる感情をヴィヴィッドにえぐりだす。ピアノとストリングスが印象的な壮大なナンバー、ベースもコントラバスの音で重厚感を強く演出している。
12GET ON THE BOAT
演奏者のための曲だが、最後まで飽きずに聴かせてくれる。エレキ・ギターでなく、アコースティックをカッティングしているところが心憎い。メイシオ・パーカーが率いるホーン隊とシーラ・Eのパーカッションが白熱の演奏を繰り広げる。