ミニ・レビュー
キーボード奏者である奥様との共同プロデュースによるアルバム。アダルト層に強力にアピールしそうなAOR歌謡。シンプルで手堅いバッキングもいい。セクシーな(1)や弾けた(9)(11)などで、まだまだ若いところも見せる。(13)は亡き愛猫に捧げた美しい作品。
ガイドコメント
ドラマ『あいのうた』主題歌「プレゼント」や「Lion」といったヒット・シングルを含む、前作から1年2ヵ月ぶりとなるオリジナル・アルバム。珠玉の名曲ばかりで構成された、玉置浩二の新たな名盤の誕生だ。
収録曲
01Melon Water
安全地帯からの長い付き合いである矢萩渉と共作曲で、タテノリのリズムが生み出すグルーヴが心地良いアップ・チューン。こういったナンバーを自在に操ることの出来るヴォーカル・ディレクションは円熟の極み。
02シェルター
サウンド面においてはハーモニクスの音が効果的に使われている。メロディは落ち着いたAメロ、ブリッジから、サビでメジャーに切り替わる展開。そして温かいヴォーカルは救いと励まし、希望の光が心を照らす。
03延長戦
壁にぶつかっている人、何かを始めようとする人にはぴったりの、ポジティヴ感たっぷりのミディアム・チューン。彼の声で何十倍ものパワーを注入された言葉が、まっすぐに聴くものに届き、ヘコんだ気持を修復する。
04いつもどこかで
スケール感のあるアコースティック・バラード。詞は松井五郎、安藤さと子との共作。シンプルなメロディを丁寧に歌う、奥行きのあるヴォーカルがじわじわと沁みてくる。スペシャルドラマ『飛鳥へ、そしてまだ見ぬ子へ』主題歌。
05虹のラララ
MISIAのコンセプト・アルバム『SINGER FOR SINGER』(2004)のために書き下ろしたナンバーのセルフ・カヴァー。アコースティック感を押し出したサウンドで、とても軽やかで穏やかなミディアム・チューンだ。
06Lion (album ver.)
福留裕介役で声優に初挑戦したTVアニメ『エンジェル・ハート』のオープニング・テーマとして話題を集めたナンバー。愛と希望に溢れたミディアム・チューンで、ためらう背中をポンと押してくれる勇壮な応援歌。
07ヒトリゴト
せつな系メロウ・チューンからほとばしる想いはモノクロームの色彩を帯びている。愛が深まれば深まるほど、さみしさが増すのはなぜ? 抑えきれない感情が、力強いヴォーカルとなってカタルシスを呼び起こす。
08夜想
ストリングスをフィーチャーしたバラード・ナンバー。何ともシンプルで分かりやすい歌詞だが、単にそう感じさせないのは、アーティスト力のによって深みが加わっていることが大きい。スケール感の大きいバラードだ。
09発散だー!!
めちゃくちゃで、やりたいホーダイ的なリリックですっきり爽快。ファンキーなヴォーカルにハードなギターが絡む。この曲を歌って踊れば、確実にストレスが発散できるはず。シングル「いつもどこかで」のカップリング・ナンバー。
10プレゼント
本人主演ドラマ『あいのうた』の主題歌。入りのコーラスを聴いただけですでに心がポカポカしてきて、ゆったりとしたテンポで歌われる世界はひたすらやさしい。間奏のギターソロも本人が演奏している。
11Help
跳ねたメロディを時として絞り出すようなヴォーカルで歌うアグレッシヴなナンバー。“Help、Help”と繰り返すユニークなコーラスも、どこか突き放した感じがあっていいスパイスとなっている。
12おいでよ 僕の国へ
シングル「プレゼント」のカップリング曲。3連のリズムのせて、不思議な世界観を持ったリリックや猫の視点から見た人間の世界が歌われる。それは数多くの虚飾に覆われ、とても煩わしいところであるに違いない。
13やせっぽちの星
亡くなった愛猫への想いを歌いあげたバラードで、詞は安藤さと子との共作。彼女が奏でる美しい鍵盤の音とともに、ヴォーカルが愛情の深さを真摯に伝える。聴き終えた後も静かな余韻がいつまでも残る曲だ。