ミニ・レビュー
宮城県出身の女性シンガー・ソングライターの3枚目のアルバム。自作曲にこだわらず青柳拓次や堀込泰行らの楽曲もナチュラルに歌いこなす。ワイゼンボーンやペダル・スティールで高田漣が好演。2曲のビデオ・クリップを収録したDVDとの2枚組仕様だ。
ガイドコメント
2006年4月リリースのフル・アルバム。ハナレグミの永積タカシ作曲、クラムボンの原田郁子作詞によるシングル曲「愛にメロディ」をはじめ、人気アーティストが制作に携わった強力盤。彼女ならではのソウルフルな歌を堪能できる。
収録曲
[Disc 1]
01ある晴れた日に君は似てる
オーガニックなカントリー・ミュージックと日本の情緒をほんのりと感じさせる音像がクロスする、たおやかで美しいナンバー。青柳拓次(リトル・クリーチャーズ)によるメロディ・ラインと温かい歌声が、聴き手の心をゆっくりとほどいていく……。
02愛にメロディ
作詞:原田郁子、作曲:永積タカシによるシングル曲。2000年代における稀代のシンガー、畠山美由紀のあまりにも豊かなヴォーカルに対するリスペクトから生まれた楽曲は、生々しい恋愛感情をまっすぐに伝える、洗練されたラブ・ソング。
03くちづけ
人間味あふれるドラム、有機的なグルーヴを生み出すベースによるリズムがあまりにも素晴らしい、ミディアム・バラード。きわめてナチュラルな高揚感と信じられないほど美しい軌跡を残すメロディにも心震える、名曲。
04若葉の頃や
堀込泰行(キリンジ)による、極限までソフィスティケイトされたコード進行があまりにも印象的な、超ハイクオリティ・ポップス。坂田学(ドラム)、沖山優司(ベース)という日本を代表するリズム・セクションが描き出すビートも素晴らしい。
05水彩画
フラメンコ・ギタリスト、沖仁が作曲を手がけた、ラテン音楽のエッセンスをたたえたナンバー。切ない喪失感とノスタルジックな風景がゆっくりと溶け合っていくリリックは、青木里枝(flexlife)の手によるもの。
06星を摘んで帰ろう
ヨーロッパの童謡のような手触りを持つ楽曲に、チェロ、バイオリン、リコーダーを軸にしたクラシカルなアレンジメントをフィーチャー。リスナーを大らかに包み込むような母性を感じさせるヴォーカルには、抗いがたい魅力がある。
07クレマチスよ
シンプルな4ビートと美しい憂いを帯びたメロディがひとつになった、ジャズ・スタンダード風のナンバー。高田漣によるペダル・スティール・ギターとピアノが絡み合うソロ・パートには、震えるような麗しさが宿っている。
08小岩井讃歌
岩手を旅したときの体験がきっかけとなって生まれた楽曲。大地の香りがするメロディが徐々に上昇していき、ついには宇宙にまで到達していく……。この曲のメロディが持つそんなイメージは、宮沢賢治の世界にも共通しているよう。
09コンドルの影
ピアノとガット・ギターを中心としたアコースティックなサウンドのなかで、彼女のメロディはまるで生き物のように変化していく。儚い手触りと力強い生命感を兼ね備えたメロディは、普遍的な魅力を持ちながらも、とんでもなく独創的。
10ただ、在るだけ
フランスの印象派を想起させるピアノを背景に綴られるのは、自らの存在を“ただ、在るだけ”と認識する、どこか哲学的な香りのする歌。誰にでもわかる簡素な言葉で、深い思想性を描き出すソングライティングに脱帽。
11春の気配
自分はなぜ生まれてきたのか、という根源的なテーマを掲げた楽曲。デ・ジャヴや前世というモチーフを盛り込みながら、自己満足に陥ることなく、どこまでも美しくクラシカルなバラードへと昇華させていくセンスが素晴らしい。
12リフレクション
強く人を愛し、身が粉々になるほどにつらい別れを経験し、それでも人間は生きていく。繰り返される出来事に思いを寄せるうちに“みんな宇宙(そら)のリフレクション”という境地に辿り着くタイトル・チューン。
13空の停車場
ふくよかなダイナミズムと壮大な物語性を感じさせるメロディにうっとりしてしまう、ミディアム・チューン。歌の世界観をしっかりと汲み取りながら、楽曲に奥行きを与えるドラム(伊藤葉子)も、この曲の聴きどころ。
[Disc 2]〈DVD〉
01愛にメロディ (video clip)
02若葉の頃や (video clip)