ガイドコメント
男女5人組バンドHYの『Street Story』以来となる3rdアルバム。絶妙なコーラス・ワークはもちろん、ラップ、ポップス、ロック、レゲエなど幅広いジャンルのミクスチャーが彼ららしい。
収録曲
01てがみ
失恋ソングといえる歌詞の内容で、曲調も切なさと温かさが漂い、そこからポジティヴに前へ歩んで行こうとする気持ちがありのまま綴られている。誰もが一度は経験するホロ苦い思い出に共感する人も多いだろう。心温まる歌詞とサウンドの相性も抜群だ。
02ささくれ
起伏激しいドラマティックなイントロで幕を開けるアップ・テンポな楽曲だが、そこで歌われているテーマは必ずしも明るいものではない。むしろ悲痛な状況に身を置くなかで、何かを必死でつかみ取ろうとする真摯な姿が浮かび上がってくる曲調だ。
03そこにあるべきではないもの
これはノンフィクションの出来事を題材にしている。メンバーの一人が地元沖縄でゴミ拾いをしている老婆の姿に刺激され、環境破壊への警鐘を打ち鳴らすべく作られた楽曲だ。地元を愛する心が、メッセージ性の強い歌詞に結実している。
04僕がキミを
全体的に派手さはなく、モノクロームのサウンドが印象的に響く。自分自身や相手と向き合い、変わりゆく周囲とのギャップに苦しむ、心の奥底を吐露したような歌詞が胸に突き刺さる。そこには大切なモノを見つめ直そうとするシリアスな視点がうかがえる。
05弱虫
06涙
テレビに映し出された戦争の光景を見て、インスパイアされた楽曲。それだけに曲調はセンチメンタルな色合いを帯び、鋭いメッセージ性を内包している。「何よりも早く伝わるものは/ささやかな祈りと生きる強さだね」といった歌詞に込められた意味は深い。
07DADA
彼らの楽曲の中では1、2位を争うロック・サウンドで、ドラマ性を極めた曲展開に感動せずにはいられない。ハードにうねるギター、扇情的な鍵盤、男性/女性ヴォーカルの絡みも素晴らしい。聴き手を鼓舞するような歌詞と熱い音が凝縮されている。
08HeyBo
09すてきなキッカケ
丁寧に歌い上げるヴォーカルが耳に残り、アコギや鍵盤がほのぼのとした音色を奏で、いい意味でどこか肩の力の抜けたリラックス・ムード漂うミディアム・ナンバー。男性/女性ヴォーカルの掛け合いもうまくハマッており、滋味豊かな曲調だ。
10初雪
沖縄には雪が降らない。だからこそ、沖縄出身のバンドは雪に対して格別な思いを抱く。この楽曲も彼らがツアー先で初めて見た雪に感動して作られた楽曲である。ミディアム・テンポで綴られた穏やかな曲調には、雪がしんしんと降り積もる情景を喚起させる。
11Song for…
「あなた」に引き続き、女性ヴォーカルの独唱形式で、鍵盤と荘厳なオーケストレーションをバックに壮大に歌い上げたバラード・ナンバー。異性に会いたいと思う気持ちを飾りなくストレートに託した彼女の絶唱は、聴き手の心を激しく揺さぶる。