ミニ・レビュー
5作目のジャケットは黒バックに浮かぶ三人の肖像。金文字でタイトルが入り、一瞬「解散ラスト・アルバムか?」と勘ぐってしまいそうな趣。スペーシーなイントロの(1)、気合の入った(2)など全体に表現力がぐんと増した。(7)と(8)はシングル曲をアコースティックにリアレンジ。
ガイドコメント
w-inds.の5thアルバム。16thシングル「十六夜の月」、17thシングル「約束のカケラ」、18thシングル「IT'S IN THE STARS」という3曲のヒットを含むファン待望の1枚。
収録曲
011or8
激しいイントロで、若い女性ファンの心をつかむ展開。メンバーの歌は、アイドルだと思ってナメていると痛い目に遭うほど、レヴェルの高いヴォーカルを披露する。インパクトのあるフレーズをこれでもかと押しまくる曲だ。
02Hush...!
重低音を活かしたグルーヴ感がアイドルの楽曲にふさわしくないほど、ロックンロールを感じさせる。さまざまな音楽的な要素が入り混じった曲に象徴されるように、w-inds.というプロジェクトには多くの才能が集結している。
03Still on the street
メロディだけを抜き出せば確かに聴きやすい歌謡曲なのだが、サウンドがあまりにも進化しているので、本当にアイドルの曲なのか、と耳を疑ってしまう。以前に比べて、明らかに進化した21世紀のアイドル像がここに見える。
04Midnight Venus
彼らの元々持ちあわせているさわやかさと先進的なエレクトロニクスが、見事に融合して出来上がった曲。近未来的な雰囲気も漂わせつつ、多くのリスナーに届く普遍性をも持ちあわせている佳曲だ。
05IT'S IN THE STARS
「ブルボンガム」のCM曲。横ノリのダンス・ビートへ載せ、甘い巡り合いを求めていく気持ちを描写。ゴスペル風のコーラス・ワークも魅力になっているこの歌を通し、80年代ファンク・ビートをエレクトロに表現。
06LIGHT
80年代の小室哲哉が実践していた楽曲を、再び現在によみがえらせた雰囲気を持つナンバー。どうやらこのあたりもぐるりと一回転したのか、21世紀の今、若いリスナーにとってはかえって新鮮に感じられる要素を含んでいるよう。
07十六夜の月 (unplugged)
ほぼノリノリな勢いで押してきたアルバム『THANKS』の中にあって、ガラリと雰囲気を変えた、アコースティックな感覚を前面に押し出した楽曲。しっとりと聴かせるヴォーカルの表現力は驚くほどすばらしい。
08約束のカケラ (acoustic)
アルバム『THANKS』の中では特異な、アコースティック・ギターを主体にしたヴァージョン。とはいっても、彼らが醸し出すさわやかな雰囲気はよりいっそう強調されており、若い女性の心を捉える魅力に満ちあふれている。
09影法師
ゆったりと落ち着いたバラードでこそ、歌の表現力が問われてくるのだが、彼らはその点では合格どころか、むしろ大きな武器にすらなっていることを認識できるナンバー。バックストリート・ボーイズあたりと肩を並べそうな実力すらうかがえる。
10Balance
夏の太陽の下で海に出かけていくような、どこまでもさわやかな雰囲気の楽曲を表現するのに、現在の彼らほど適役はほかに存在するだろうか。ちょっと切ない雰囲気も巧みに入れているところが憎いほどだ。
11Stomp
ちょっと不良な雰囲気を醸し出す、ロックンロールとヒップホップの融合。Dragon Ashのような雰囲気のある楽曲も、こうして見事に消化してしまう彼らの実力は底知れない。単なるアイドルでは絶対にできない高いスキルが垣間見える。
12Sup wassup!!
パンク・ロックのような雰囲気すら漂っているナンバー。それでもところどころに人懐っこいメロディが顔を出してくるので、少しホッとして聴けるはず。七変化としかいいようのない変わり身の早さに脱帽だ。
13蝉時雨
アルバム『THANKS』のラストを飾る、R&Bのリズムをベースにした、センチメンタルな楽曲。ひと夏の恋の終わりを告げるような歌詞もなかなか感傷的で胸が締め付けられるが、端整な歌声もまたその誠実さを裏付けている。