元ちとせ / ハナダイロ

ミニ・レビュー

出産後、復帰した元ちとせの、通算3作目のアルバム。相変わらずの美声は健在だが、以前ほど裏声とグイン(奄美南部特有の節回し)を多用せずにアッサリと歌い上げている印象。その中では平和への祈りとも言うべき「祈り」や「語り継ぐこと」が詩、歌ともに圧巻。★

ガイドコメント

結婚、出産での一時休業を経た元ちとせの、前作から約2年ぶりとなるアルバム。スキマスイッチの常田真太郎や松任谷由実、COILの岡本定義ら豪華制作陣の強力バックアップを得た聴き応え満点の1枚。

CDJ PUSH (インタビュー/特集/企画)

[インタビュー]
Special Interview 元ちとせ豪華な顔ぶれのアーティストたちとのコラボレーションが実現新たな音楽の“環”によって完成した4thアルバム『カッシーニ』
（2008/07/10掲載）

ニュース

リサーチ

収録曲

01羊のドリー

クローン羊のドリーを採り上げた曲。子守唄を歌うように感情を抑えた歌声とプログラミングされた機械的な電子音が混ざり合い、ドリーの孤独な願いが伝わってくるようだ。それでいて可愛げもあり、音色も優しい。

02前兆（まえぶれ）

繰り返されるギターのカッティングに導かれるようにして、不穏な“前兆（まえぶれ）”を歌う。徐々に音が重なっていき、次第に歌声も力強くなっていく。何かが起こる前の異様な空気を感じさせるコーラスが印象的。

03青のレクイエム

映画『初恋』の主題歌。COILの岡本定義が作曲、COILが編曲を担当。泣きのメロディに乗せて、もう還らない愛への想いをエモーショナルに歌い上げる。純粋さの中にある美しさと残酷さに、胸が締めつけられる。

04詠みびと知らず

ひとり部屋の中、暖炉の前で歌っているような雰囲気。つぶやくように歌い出し、奥ゆかしいチェロの旋律や祈りのようなコーラスが重なっていく。温かな感触ながら、日々の暮らしの中での、ふとした侘びしさを感じさせる。

05はなだいろ

哀愁漂うメロディと“君のまなざしはなだいろ”と歌うサビが印象に残るナンバー。マンドリンの響きが、“君”への憧れを感じさせ、ギターと鍵盤が絡み合うノスタルジックなサウンドによって、懐かしさと切なさが入り混じる。

06春のかたみ

07蛍草（つゆくさ）の夜

爽やかな音作りが初夏の匂いを感じさせる曲。淡々としたメロディながら、穏やかな開放感があり、羽を伸ばして飛び立っていくような気分になる。切ない余韻を残しながらも、伸びやかな歌声が心を解きほぐしてくれる。

08恐竜の描き方

自身の心を“恐竜”に託した、絵本に出てきそうな歌詞が特徴的。そっと物語を語って聞かせるように歌い出し、広がりのあるメロディとともに、だんだんと包容力を増していく。壮大なテーマを感じさせる曲。

09黎明（れいめい）

ループするリズムと神秘的な歌詞が溶け合い、何もかもがリセットされていく夜明けのような静けさを漂わせている。スガシカオがコーラスで参加。迷いながらも世界の真実に触れたいという気持ちを繊細に表現した曲。

10甘露（アムリタ）

COILの岡本定義作曲による、弾けるポップ・ナンバー。“甘露”とは、中国の言い伝えで、世界が平和になった時、天から降ってきたという甘い露のこと。光のシャワーを浴びるような、明るさと輝きに満ちた曲。

11祈り

レゲエのリズムを、スティール・パンやストリングス、ホーンなどが色鮮やかに彩るなか、平和への祈りを感じさせる言葉を紡いでいく。多彩ながら隙間を活かした演奏が、風に乗せてこの歌をどこまでも届けてくれそうだ。

12語り継ぐこと

スキマスイッチの常田真太郎プロデュース。ピアノやストリングスが織りなす、人々が語り継いできた悠久の営みを感じさせるサウンドによって、一つ一つ言葉を紡いでいく情感豊かな歌声が、壮大な物語を描いていく。

タイアップ

アーティスト

元ちとせ
1979年1月5日、鹿児島県奄美大島生まれの歌手。小学生のころから島唄を習い始め、数々の大会で優勝するなど才能を開花させる。高校卒業後に歌手を目指し上京。96年にインディで『故郷・美ら・思い』をリリース。2002年2月、シングル「ワダツミの……

同時発売作品
元ちとせ / ハナダイロ [CD+DVD] [限定]
ESCL-2828～9 3,520円（税込） 2006/05/10 発売

結婚、出産での一時休業を経た元ちとせの、前作から約2年ぶりとなるアルバム。スキマスイッチの常田真太郎や松任谷由実、COILの岡本定義ら豪華制作陣の強力バックアップを得た聴き応え満点の1枚。……