ミニ・レビュー
女性ツイン・ヴォーカル・ユニットのファースト・アルバム。弦楽器とエレクトロニクスをうまく融合させたオリエンタル・ポップ風サウンドと、終始真摯かつスピリチュアルな歌声を聴かせるヴォーカルとが、壮大な世界観を生み出している。2000年代の癒し系か?
ガイドコメント
松藤由里による洗練されたメロディと、西島梢の美しい日本語で綴られた歌詞が、幻想的で神秘的な世界へと誘うナナムジカ。今作は、ヒット曲「くるりくるり」を含む初のオリジナル・フル・アルバム。
収録曲
01プロローグ
1stアルバム『ユバナ』のオープニング・ナンバーは、わずか1分余りのアコースティック・ピアノとヴォーカルによるプロローグ。ナナムジカ二人だけでクラシカルな雰囲気たっぷりに仕上げている。
02くるりくるり
2枚目のシングルで、フジテレビ系ドラマ『小早川伸木の恋』の主題歌としてスマッシュ・ヒット。中島みゆきや山崎ハコのような70年代フォークの香りを感じさせてくれるミディアム・マイナー・チューン。
03鳥の歌
70年代フォークっぽいストレートなメロディ・ラインを持ったポップ・チューン。マライヤやナスカなどでギタリストとして活動し、ゴスペラーズなどのプロデュースで知られる土方隆行のマンドリンが、全体のアレンジを締めている。
04君は宇宙 (そら) 僕に月
6/8のリズム・パターンをもったエスニックなナンバー。どこかヨーロピアンな雰囲気はアレンジを手がけた遠山大介の手腕によるもの。吉田翔平のヴァイオリンの導入もよりエスニック度を増している。
05風よどこへ吹く
「君は宇宙(そら) 僕に月」がヨーロッパ風だったら、本作は中国風なムード。賈鵬芳の二胡をフィーチャーしてアジアン・テイストたっぷりに仕上げている。メロディ・ラインがどことなくフォークっぽい雰囲気なのは、ナナムジカらしさ。
06UTAKATA
8/12のロッカ・バラード・タイプだが、どちらかといえば幻想的でエスニックな雰囲気を持ったエキゾティックなナンバー。感情的なヴォーカルが胸に突き刺さってくる。
07ひまわり
迫力ある歌声、幻想的で独自の世界観を持った歌詞が印象的なミディアム・スロー・ナンバー。サウス・トゥ・サウスや小沢健二作品などで活躍したオルガンの名手・中西康晴のプレイするアコースティック・ピアノがまたよい。
08interlude
息休め。わずか30秒ほどのこの曲は、7秒ほどのリフを4回繰り返すだけ。アルバム『ユバナ』での次曲「BLUE FOREST」のイントロダクション・インタールード。オペレーションは松藤由里と遠山大介が担当している。
09BLUE FOREST
彼女たちからは程遠いと思われていたバウンス・16ビートのリズムを持ったミディアム・スロー・ナンバー。ブラック・ミュージックの要素が軸となるのではなく、エスニックかつ幻想的に仕上げているのがナナムジカ流。
10魚
ピアノ、ヴァイオリン、チェロのトリオによるシンプルなナンバー。フォーキーでシンプルな覚えやすいメロディをクラシカルなアレンジで料理。松藤由里のアレンジャーとしての実力が垣間見えるナンバー。
11Ta-lila〜僕を見つけて〜
ナナムジカのデビュー・シングル。マイナーでシンプルなメロディ・ラインは日本の70年代フォークやニューミュージックの影響が感じられる。感情的なヴォーカルは、切ないメロディにぴったり。
12七つの海
アコースティックと打ち込みをうまくブレンド、エスニックなナナムジカらしさがうまく出たミディアム・マイナー・チューン。加藤薫がエレクトリック、アコースティック2種のギターで好サポートをしている。
13イキル
早めのワルツといった感じの独特なリズム・スタイルのナンバー。チェロ、ヴァイオリンを導入、クラシカルで壮大なアレンジに仕上げている。アレンジ、ギター、プログラミングと243(都志見隆)が大活躍している。
14アメノチハレ
アルバム『ユバナ』のクロージング・チューンは243こと都志見隆が作詞曲・編曲、及びプログラミングを担当したクラシカルなナンバー。アコースティック・ギター、ヴァイオリンなど生音を活かした温かみのあるサウンドを構築、松藤のヴォーカルとあいまっておだやかな気持ちにさせてくれる。