ミニ・レビュー
デビュー15周年の記念日に発売した2枚のシングル・コレクションの後半盤。97〜2005年のシングル曲を1枚にまとめた。笹路正徳の手を離れ、棚谷祐一、白井良明、石田小吉(現・ショーキチ)、亀田誠治などプロデューサーを変えながら彼ら自身も変化していった足跡が見える。
ガイドコメント
デビュー15周年記念日にリリースとなった、初のメンバー公認・公式のシングル・コレクション・アルバム。97年から2005年までのシングルを網羅、「遥か」「スターゲイザー」など数々のヒット曲を堪能できる。
収録曲
01夢じゃない
儚く溶け去ってしまいそうな“君”のいる風景を、“いびつ”な力で守りたい……ちょっと弱気で不器用な主人公が綴る、イノセントなラヴ・バラード。白昼夢のごとくどこか幻想的なサウンドが、美しい詞世界の背景を彩る。
02運命の人
アコースティックな優しさはそのままに、今までにないダイナミックなサウンド・アプローチを見せた、勇壮なラヴ・ソング。直球のタイトルながらも、キメの“アイニージュー”をカタカナにしちゃうカワイイところが、やっぱりスピッツ。
03冷たい頬
まるで日溜りのような、やわらかいアコースティック・サウンドに包まれて綴られる、“君”への追憶記。無邪気な日々は、切なさへと疾走し、そして永遠の別れへ……。淡い色彩を放つ、あまりに穏やかで哀しいラヴ・ソングである。
04楓
甘美でセンチメンタルなメロディに乗せて綴られる、別れのバラード。それはまるで、やわらかな陽光の中を、楓の葉が儚く散りゆくような……。ギターの轟きと溶け合うピアノの旋律が、晩秋の景色のごとく、深く艶やかな色彩を添える。
05流れ星
人は手の届かないもの程、憧れてしまうもの。独りよがりの“僕”が儚い流れ星に“君”の姿を重ね、その想いを紡いでいくセンチメンタルなスロー・ナンバー。イントロと間奏の雅な旋律もたまらなく情感をそそる、味わい深い名曲だ。
06ホタル
“恋”という鮮やかな幻を、短いホタルの一生に重ねた、ドラマティックなロック・チューン。甘美さと悲壮感が鬩ぎ合うサウンドの中、“君”の想いへと疾走していくマサムネの歌声は、いままでにないほど、痛々しい。
07メモリーズ
歪みに歪んだロック・サウンドに乗せて展開する、“あなた”への刹那的な追憶。圧倒されるほどラウドなAメロと、蝶の舞いのごとく艶やかなサビとのコントラストの妙が、リスナーをつかんで離さない。こんな強引なスピッツは珍しい。
08遥か
かの名曲「チェリー」を彷彿させる、穏やかなアコースティック・ナンバー。あっさりした展開ながらも、言いようもない切なさをリスナーの胸にばっちり染み込ませてしまうところが、まさに往年のスピッツの作風そのもの。
09夢追い虫
弱さを武器に戦ってきた、マサムネの心の軌跡そのものを描いたと言える、甘美で切ないロック・バラード。ダイナミックに轟くギターを背に広がっていく歌声は、ちっぽけさを認めるいじらしさと、悟りにも似た力強さを湛える。
10さわって・変わって
シューゲイザー的、轟音・疾走のサウンドに正宗の詞世界が炸裂する、鮮やかなロック・チューン。“言葉より触れ合い”を求めた「スピカ」が第一章なれば、“さわって、変わって”いく劇的な二人を描いた本作は、感動の第二章である。
11ハネモノ
ささやかに生きる“ハネモノ”が、やがて羽を携え、悠然と舞い上がっていくような、感動のバラード・ナンバー。晩夏の切ない匂いが漂うリリックのなかには、マサムネの創作の原点である、“小さきモノへの愛しみ”であふれている。
12水色の街
隠れ名曲「Y」や「エトランゼ」を彷彿させる、白昼夢のごとく幻想的なバラード・ナンバー。浮遊感あふれるスピッツ・サウンドでしか描けない、淋しい“水色の街”。そこへ響き渡る歌声は、儚くも潤いを湛え、妙に心に染み込んでくる。
13スターゲイザー
「明日君がいなきゃ困る、困る」……、星に向かってそんな想いを連呼する、スピッツらしい弱虫ラヴ・ソング。クールに刻むビートの中を吹き抜ける切ない歌声は、”翼になる”かのように、爽やかに、潔く、宇宙へと還っていく。
14正夢
ドラマティックなストリングスが涙をそそる、切ないアコースティック・バラード。”君”との再会というあてもない妄想が、どうか正夢だったなら……そんなあふれ出でる想いは、ギターの轟と溶け合い、どこまでも広がってゆく。
15春の歌
イントロを駆け抜けるギターは、まさに春風のごとく。新しい季節の幕開けにふさわしい、爽やかなナンバーだ。愛と希望の中で舞い上がる、訳もない切なさ。ドラマティックななかにも、繊細な季節感を描くマサムネ・メロディは圧巻。