ガイドコメント
2006年5月発表のベスト・アルバム。テレビCMで使用された「タイムマシンにおねがい」のオリジナル・ヴァージョンのほか、彼らの歴史を総括する代表曲ばかりをコンパイル。若年層にも十分アピールする内容の濃い1枚だ。
収録曲
01タイムマシンにおねがい
02サイクリング・ブギ
1972年発表のデビュー・シングル曲。“かわいいあの娘”への踊るような恋心を軽快なロックンロールに乗せて歌い上げる、賑やかでゴキゲンこの上ないナンバー。つのだ☆ひろ(ds)の手掛けた歌詞がなかなか洒落ている。
03ダンス・ハ・スンダ
記念すべき1stアルバムのオープニングを飾ったロックンロール・ナンバー。加藤和彦の割れんばかりのシャウトや高橋幸宏の豪快なドラム・ソロなど、全編にわたってテンションの高いアンサンブルが繰り広げられている。
04Boys&Girls
桐島かれんを迎えて約14年ぶりに再結成した際の唯一のシングル曲(89年3月発表)。桐島の色気のあるヴォーカルや大胆なシンセの導入など、その洗練された大人のポップスは高く評価され、好セールスを記録した。
05何かが海をやってくる
傑作『黒船』収録のインスト曲。腕利きのメンバーならではの高品位なファンク/フュージョン・ナンバー。見たことのない巨大な黒い物体がじわじわと近付いて来る映像を思い浮かべながら聴くと、不思議な緊張感に襲われる。
06塀までひとっとび
パンチの効いたシャウトとワウをかけたカッティング・ギターが印象的な極上ファンク・チューン。メンバーそれぞれの経験と実績に裏打ちされた、タイトでグルーヴィなアンサンブルが主体で、ヴォーカルは体裁程度の位置付けだ。
07ハイ・ベイビー
1973年発表の2ndシングル曲。ヒマを持て余している淋しがり屋の男と彼を気遣う恋人との電話のやり取りを描いたチャーミングな歌。心なし弱々しい加藤和彦の歌声と張りのあるミカのヴォーカルの塩梅が良い。
08恋のミルキー・ウェイ
1stアルバムに収録されたライト・ポップ・チューン。星のきらめく夜空を見上げながら“あの娘”への想いを馳せる、ややメルヘンチックな歌。リズミカルなアンサンブルがほんのりとリゾート情緒を漂わせている。
09黒船 嘉永六年六月二日
傑作アルバム『黒船』に収録されている3部構成の表題組曲第1部。3拍子基調のプログレ風インスト曲で、歴史的大事件を予感させるようなドラマティックな響きが特徴的。タイトルの日付は黒船来航の前日にあたる。
10黒船 嘉永六年六月三日
“黒船”3部構成組曲の第2部。来航当日の日付を冠した本曲は、テーマの旋律を崩した静かなピアノで始まり、プログレへ。解釈は難しいが、後半の賑やかなファンクは、威嚇砲撃が空砲と知り安堵した市民の心境とも受け取れる。
11黒船 嘉永六年六月四日
“黒船”3部構成組曲の最終章は、高中正義のギターをフィーチャーした壮大なスケールのミディアム・バラード。黒船来航によってこれから大きく姿を変えていく日本の苦難と勇姿を思うと、時空を超えたロマンに感動を覚える。
12薔薇はプラズマ
89年発表の再結成アルバム『天晴(あっぱれ)』収録曲。先行シングル「ボーイズ&ガールズ」の大人のポップス路線を徹底したAORナンバーで、高橋幸宏らしい洒落た仕上がりに。サウンドにばっちりはまる歌詞のテーマは“大人の恋”だ。
13賑やかな孤独
アルバム『天晴(あっぱれ)』に収録された小原礼(b)作曲のミディアム・ナンバー。生きることの虚しさをテーマにした暗い歌だが、“歌劇”や“葡萄酒”といった品のある言葉を用いることで洗練された大人のバラードに仕上がっている。
14シトロン・ガール:金牛座流星群に歌いつがれた恋歌
加藤和彦の穏やかなヴォーカルが心地良く響きわたるミディアム・スローのラブ・ソング。夢の中の女性への恋心とも解釈できる幻想的な歌詞だが、その不確かさが夢心地を演出し、本曲の味わいどころとなっている。
15お花見ブギ
江戸を舞台にしたお花見ソング。軽快なロックンロール・ビートに乗って上下の激しいメロディを張り上げるように歌うミカのヴォーカルが印象的。合いの手を入れる男声コーラスと若干コブシの入ったミカの“なんと”に注目。
16WA-KAH!CHICO
1975年発表の3rdアルバム『HOT! MENU』のオープニングを飾るインスト曲。目まぐるしく展開する難易度の高いジャズ・ファンクで、メンバー各々が極めて高い演奏技術を持っていることを実感させられる。
17怪傑シルバー・チャイルド
バースト寸前の破壊的なドラムで始まるサイケ・ファンク・ロック。ディレイをかけたミカのキレ気味の笑い声やわざとらしい合唱風コーラスなど、ナンセンスに満ちている。1973年の音楽とは思えないほど新鮮だ。