ミニ・レビュー
デビュー以来5枚のシングルを含むファースト。MISIAを手掛けた与田春生のプロデュースが活きたキャッチーでクールなサウンドが満載。(4)(6)のようなR&Bも、(7)(9)(10)のようなハウスもさらりとこなす、クセのない浸透力あるスムースなヴォーカルが魅力。
ガイドコメント
デビューから1年半となる名取香り。本作は彼女がこれまで発表した5枚のシングルすべてを収録した1stアルバムだ。テレビ東京系ドラマ24『下北沢GLORY DAYS』主題歌「Lovespace」を中心に、これまでの軌跡が辿れる1枚だ。
収録曲
01Player
ハウス・ミュージック経由の力強い4つ打ち、全編を包み込むラテン・フレイヴァー、メロディ自体はどこかR&B風で、全体的な印象はしっかりとJ-POP。さまざまな要素を入れながら、あくまでもポップに響かせるサウンド・メイクに驚かされる。
02Lovespace
90年代以降の日本の音楽シーンでの重要なモデル“クラブ・ミュージックと歌謡曲の融合”、即ち、先鋭的でクールなビートと親密性高いキャッチーな旋律との共生を高い精度で成立させた、ポップ/ダンス・チューン。言葉に気を配り、全体をグルーヴさせるヴォーカルも見事。
03Interlude-Goodbye-
繊細に構築されたビートのうえで、“Please say so Goodbye”というフレーズが繰り返されるインタールード。はっきりとした説得力とトロけるような色気を兼ね備えた彼女の声の魅力をしっかりと感じて欲しい。
04Goodbye (feat.Nao'ymt)
アルバム『Perfume』の前曲のインタールードにある“Please say so Goodbye”をつなぎながら、骨太のビートで聴く者の体をノックしてくる本格的なR&Bナンバー。Nao'ymtをフィーチャーした男女の恋愛感情を生々しく伝えるリリックは、とんでもなくセクシー。
05貴方のそばで
しっとりとした雰囲気を表出する泣きのギターがグッと胸に迫る、R&Bバラード。盛り上がるメロディと自ら別れを選んだ女性の心情の高ぶりを描いたリリックが見事に一体化している。色っぽいヴォーカルも、曲の世界観にぴたりとハマっている。
06Gentleman
太く、強靭なリズム・アンサンブルとギターのフレーズを軸としたバック・トラックが、リスナーの身体を自然に揺らす大人っぽいダンス・チューン。プログラミングと生楽器をバランスよく組み合わせたサウンド・メイクは、かなり高質。
07Darling
オーセンティックなハウス系4つ打ちビートとソウル・ミュージックのエッセンスをたっぷりと含んだベース・ラインがなんとも気持ちいい、アッパー・ダンス・トラック。起伏の激しいメロディをスムーズに乗りこなすヴォーカルもいい。
08Interlude-URARA-
中近東〜中南米を自由に行き来するような、エスニック感たっぷりのインタールード。プリミティヴな強さを持ったリズムと“URARA〜”というコーラスがひとつになり、不思議な異国情緒をほんのりと漂わせている。
09ROMEO
歌詞を読んでるだけで性的興奮を覚えてしまうような、濃密にしてリアルなエロティシズムをたたえたナンバー。サイバー・テクノ感覚を持ったトラック、デジタルなエフェクト処理がされたヴォーカルも、身体の深い部分を刺激する。
10『For Isla Bonita』...素敵な島へ
音の構造に工夫を凝らすことで、音楽的な深みを持たせることに成功したリズム・アレンジが素晴らしい、ちょっと抽象的な雰囲気のダンス・ナンバー。緻密に構築されたビートと絡み合い、セクシーなグルーヴを生み出すヴォーカルも絶品。
11another truth
大人の鑑賞に堪えるソウル系ナンバーを数多く生み出している村山晋一郎が作曲を手がけたミディアム・チューン。聴くたびに深みを増していく旋律と感情をしっかりと抑制したヴォーカルがオーセンティックな魅力を生み出している。
12Interlude-God Breath-
雨音と雷鳴をフィーチャーしたチル・アウト系トラックのなかで囁かれるのは、彼女自身のなかにある“歌を歌うこと”への強くて熱い気持ち。英語詞ではあるが、ぜひ、歌詞の内容までしっかり聴き込んでみてほしい。
13I believe myself (feat.WISE)
作曲と編曲にSHUYA(SBK)、ラップ・パフォーマンスにWISEをフィーチャーしたナンバー。マニアックなR&Bファンをうならせるに十分なクオリティを持つトラック、カラオケにもしっかり対応したメロディが完璧に融合。
14君に
音数をグッと抑えたサウンドによって際立つのは、彼女のスムース&パワフルなヴォーカリゼーション。心から信頼している“君”に対する真摯な気持ちを綴った歌詞、その言葉のひとつひとつにリアルな感情を与える表現力も素晴らしい。
15IF
AOR、ソウル・ミュージックの要素がバランスよくレイアウトされた、穏やかで優しいイメージのナンバー。ドラマティックな盛り上がりを見せながら、十分に洗練されたメロディがなんとも気持ちいい。
16Reprise-Goodbye-
部屋のなかで「Goodbye」を流し、なんとなく口ずさんでいるところに(おそらく、恋人からの)電話。“時間はたくさんあるでしょ”というセリフに想像力をかきたてられる、ユニークでかわいいアルバム『Perfume』のエピローグ。