ミニ・レビュー
レーベル移籍後の初の8作目。ゆったりした部分もハードに攻めるところも含め、自分らが切り開いた今のアメリカン・ロックの王道をひた歩む雄大なサウンドで迷いがない。なかなか気合入っているし元気もいいし突き抜けとる。小冊子形態のブックレット付き。
ガイドコメント
2006年5月リリースの8枚目のアルバム。バンド自身が「これまでで最もアグレッシヴな作品」と語る自信作で、リード・シングル「World Wide Suicide」をはじめ、デビュー時を彷彿とさせるパワフルでキャッチーなナンバーが満載。
収録曲
01LIFE WASTED
キャッチーなリフでごりごり押していく痛快なロックンロール・ナンバー。ベテラン・バンドらしい熟練の技と、デビューしたての若手バンドのような瑞々しさが高密度で交わり、強烈な化学反応を巻き起こしている。
02WORLD WIDE SUICIDE
グランジなギター・リフとアメリカン・ロック的なポップネスの見事なまでの融合。ファズの効いたヘヴィ・サウンドに胸躍り、美しい美メロに涙する。パール・ジャム万歳、と諸手を挙げて喝采したくなる素晴らしい一曲だ。
03COMATOSE
ギャンギャンと爆走するギター・サウンドがめちゃくちゃかっこいいパンキッシュ・ナンバー。これほどアグレッシヴな音を出せるおじさんバンドが今までいただろうか。凡百のフォロワーを蹴落とす極みのロックがここにある。
04SEVERED HAND
これでもかとヘヴィなギターで音の爆撃を食らわせているのに、何故か胸の透く爽やかなメロディ。メランコリーなサビの転換も実に見事で、それを可能にさせる鉄壁の演奏力とメロディ・メイカーぶりに感動すら覚える。
05MARKER IN THE SAND
アグレッシヴなサウンドで攻めながらも,サビで涙腺を刺激する超名曲。もはやお家芸とも言うべきダイナミックさと美しさを兼ね備えたメロディの完成度は芸術の域。是非ともライヴで腕を振り上げてシンガロングしたい一曲だ。
06PARACHUTES
ふんわりしたアコースティック・ギターとやわらかいヴォーカルが醸し出す、浮遊感漂うメロディが心地良い一曲。肩の力の抜けたカントリー風味のアルペジオが気持ちをリラックスさせ、心に清涼な風をもたらしてくれる。
07UNEMPLOYABLE
跳ねるメロディと美麗なコーラス・ワークに胸躍るポップ・ソング。攻撃性のあるギター・サウンドは少し落ち着いてはいるものの、ギター小僧には垂涎必至のリフを存分に聴かせてくれるあたりがなかなかニクい。
08BIG WAVE
うねるギター・リフと怒濤のロック・サウンドが猛然と押し寄せる、タイトル通り“ビッグ・ウェイヴ”な一曲。クライマックスから曲終わりまでの速弾き&セッション・プレイは圧巻の一言。心して聴いてもらいたい。
09GONE
陰影のあるメロディから、一気に光の射す方へと突き抜けていく展開が壮快なナンバー。祈るような歌声ときらびやかなサウンドは、暗雲立ちこめる世界に救済と祝福をもたらすかのごとく希望に満ちている。
10WASTED REPRISE
パイプオルガンの伴奏とエディの歌声のみで構成されたインタールード的作品。たった53秒のタイムに込められた無限の希望と祈り。短いながらも、そこにしっかりとした意志を込められるのが、彼らのバンドとしての強さであり、しなやかさだろう。
11ARMY RESERVE
ギターの旋律が放物線を描くように浮遊し、彼岸の情景を描き出していくさまは溜め息が出るほど美しい。どことなくU2っぽい匂いが漂うが、U2に比べていい意味で荒っぽいサウンドがロック魂をバシバシ刺激してくれる。
12COME BACK
ルーズなリズムの上に各パートが少しずつレイヤーされていき、クライマックスに向けて徐々に盛り上がっていくバラード・ナンバー。荒涼としたメロディはまるでロード・ムービーのような開放感と気楽さを伴っており、男のロマンを感じさせる。
13INSIDE JOB
メランコリィなメロディとクライマックスからの豪快なバンド・サウンドが生む、見事なまでの静と動のコントラスト。パール・ジャムの持つ繊細さとダイナミックさが、7分という時間にすべて凝縮されたといっても過言ではない、壮大なロック・バラードだ。