ミニ・レビュー
4年ぶり8枚目のアルバムは、かつてのストーンズを思わせるルーツ音楽に根差したロックンロール作。94年の『ギヴ・アウト・バット・ドント・ギヴ・アップ』に近いが、歌や演奏に漲る活力や情熱、自然な感じは本作のほうが遥かに上。全ロック・ファン必聴。
ガイドコメント
約4年ぶり、通算8作目のオリジナル・アルバム。エレクトロ・サウンドからさらに進化するかのように直球型ロックンロールへと変わり、アルバム『ギヴ・アウト・バット・ドント・キヴ・アップ』時代を彷彿とさせる仕上がりだ。
収録曲
01COUNTRY GIRL
ヒルビリーとロックンロールをミックスした、まさに普遍的なスタイルに支えられたこの曲。ノスタルジックな雰囲気こそ漂うが、決して手垢にまみれていない、アルバム『ライオット・シティ・ブルース』のオープニングに相応しい極上チューン。
02NITTY GRITTY
ブリードだの、シュガーだの、かつてのローリング・ストーンズを思い起こさせるフレーズが飛び出すナンバー。ルーズにグルーヴするサウンドともども、思わずニヤリとしてしまう、ストーンズへのオマージュに満ちた1曲。
03SUICIDE SALLY & JOHNNY GUITAR
疾走感に満ちたパンキッシュなロックンロール・ナンバーで、間奏のギター・ソロが最高にゴキゲン。ブッ飛んだ歌詞も含め、セックス、ドラッグ&ロックンロールを体現したようなハイ・テンションなナンバー。
04WHEN THE BOMB DROPS
エコー&ザ・バニーメンのウィル・サージェントをゲスト・ギタリストに招いた曲。蛇がとぐろを巻くように妖しく絡みつくウィルのギターが聴き手の官能中枢を刺激して、否が応でも高揚させてくれる。
05LITTLE DEATH
60年代のサイケデリック・ロックを現代風に甦らせたプライマル流トリップ・チューン。エコー&ザ・バニーメンのギタリスト、ウィル・サージェントがツボを押さえた素晴らしいギター・ワークを披露している。
06THE 99TH FLOOR
肩肘を張らず、リラックスした風情で軽快にロックして、決めるところはビシッと決める。頭で考えるより先に肉体が反応するボディ・ミュージック、それがロックンロールなのだと再認識させるトラック。
07WE'RE GONNA BOOGIE
バック・トゥ・ベーシックな、シンプルかつ泥臭いブギ・ナンバー。60〜70年代をリアル・タイムで過ごした世代には懐かしさを、無機質な電子音に慣れている世代には新鮮さを与えるはず。
08DOLLS (SWEET ROCK AND ROLL)
ローリング・ストーンズとフー、さらにT・レックスを掛け合わせた感じのストレートなロックンロール・チューン。シンプルなリフを紡ぎつつ叩き出される活力にあふれたグルーヴが、陶酔感をもたらす。
09HELL'S COMIN' DOWN
ニック・ケイヴ&ザ・バッド・シーズのヴァイオリニスト、ウォレン・エリスがフィドルで参加。爽やかなフィドルの音色とアーシーなリズムが一体となった、躍動感にあふれた晴れやかなカントリー・ロック。
10SOMETIMES I FEEL SO LONELY
宴の後に訪れる寂莫とした感覚を想起させずにはいられない、切なさとほろ苦さを湛えた美しすぎるスロー・ナンバー。「少年たちよ、罪は贖(あがな)われるであろう」という歌詞と女声コーラスが印象的な秀曲。
11STONE YA TO THE BONE
切れ味鋭いハーモニカをフィーチャーした、かつてのドクター・フィールグッドを彷彿とさせるシンプルなロックンロール・ナンバー。2分半強という時間に、ロックのダイナミズムが凝縮されている。
12TO LIVE IS TO FLY
厳かなピアノと飛翔するようなギターの音色が哀愁漂うメロディに深い陰影を描き出す、タウンズ・ヴァン・ザントのカヴァー。ストリングスも採り入れ、儚げな雰囲気に荘厳なスケール感を加味している。