ガイドコメント
『青春ブルース』に続く、2年2ヵ月ぶりのフル・アルバム。その間にリリースされた「真夜中のプール」から「ハミングバード」に至るシングルも収録された、ベスト盤的充実度を誇る1枚。
収録曲
01真っ赤な海
ロード・ムービーの挿入歌を彷彿とさせる開放感あふれるナンバー。「出口はどこ?」「いつから大人?」「色は何色あると思う?」といった歌詞も映画のセリフのよう。そしてそれらの問いへの斉藤和義の答えは「意味を探すなロックンロール!」
02ハミングバード
友達をハミングバード(ハチドリ)に置き換えて、「はばたいてくれ」「狭い鳥籠壊してしまえ!」と励ます応援歌。でも実はハミングバード(鼻歌を歌う鳥)に置き換えた斉藤和義自身へ贈る歌なのかもしれない。
03春の夢
「夢が叶った人」「夢破れた人」「夢なんか見ない人」……つまりはすべての人へ向けて、斉藤和義が夢を歌う。アコースティック・ギターにベース、ピアノというシンプルな構成の中で、シンセサイザーが効果的にアクセントを与えている。
04SUNDAY
アコースティック・ギターや8弦ウクレレの音色と、どことなく懐かしいメロディが印象的なAメロと、ロック色の強いBメロとのギャップが楽しい。また、そうすることで主人公である少年の弱さと攻撃性を歌い分けているあたりはさすが。
05モルダウの流れ
合唱曲としてもおなじみの名曲「モルダウ」をカヴァー。奇をてらったようなアレンジはせず、構成・歌唱スタイルを極力シンプルにしたことで、楽曲本来の魅力とともに斉藤和義のセンスを再確認することができる。
06黒いきつねとピンクのたぬき
某カップ麺を彷彿とさせるユニークなタイトルの通り、実験的要素と遊び心が共存しているナンバー。一見デタラメながらも意味ありげな歌詞もさることながら、彼には珍しく打ち込みのサウンドを前面に出している点にも注目。
07FLY〜愛の続きはボンジュール!〜 (Album Mix)
倦怠期気味の彼女とのフランス旅行を題材としたポップ・ソング。奔放なヴォーカルとカズーやタンバリンが楽しげな雰囲気を醸し出している。終盤のちょっとした下ネタも、倦怠期だったことを考慮に入れればご愛嬌。
08真夜中のプール
学生時代の恋人が結婚することを知った男の微妙な心情を歌ったミディアム・バラード。力強いホーンと繊細なストリングスとのハーモニーが、男の強さと弱さが入り混じった歌詞の世界観を見事に引き立てている。
09ため息の理由
彼の十八番ともいうべき切ないバラード。この曲で彼は、ギター、ピアノ、ハーモニカ、シンセサイザーなど、さまざまな楽器を演奏しているが、すべての楽器はヴォーカルを引き立てる為の脇役であり、印象としてはア・カペラを聴いているようでさえある。
10約束の十二月 (Album Version)
繊細なタッチのベース・リフが印象深いクリスマス・ソング。二人が初めて恋におちた七夕の夜から十ニ月までを順にたどっていく歌詞が、主人公が恋人に抱く切なさと激しいまでの愛しさを効果的に表現している。
11俺たちのロックンロール
“ロックンロール”というタイトルから多くの人が連想するエレキの激しさや派手なギター・プレーなどはないかも知れない。しかし、飾らないストレートな音と言葉がある。ロックンロールは形式などではなく、魂の叫びなんだと再認識させてくれるナンバー。
12グッドモーニング サニーデイ
過去に囚われるあまり前進することをためらっている人の腕を引っ張って、無理にでも前進させてくれるような、前向きで力強い歌詞が気持ち良いナンバー。間奏のサイケデリックなギター・ソロが、短いながらも印象的に響く。