ミニ・レビュー
ウクレレを携えた女性シンガー・ソングライター、つじあやのの2枚組初ベスト盤。こうして聴いてみると、いかにCF曲やタイアップ曲が多いかに気づかされるが、これもやはり彼女が生み出すキャッチーで親しみやすいメロディと感性のなせる業と納得!
ガイドコメント
つじあやのの初ベスト・アルバムは、2枚組の大ヴォリューム。Disc1はシングル・コレクション、Disc2はつじ本人のセレクトという構成。新曲「そばにいるから」は映画『笑う大天使(ミカエル)』の主題歌。
収録曲
[Disc 1]〈シングル コレクション〉
01そばにいるから
軽妙なギターのアルペジオとそこに絡むブラス・セクションの力強いオブリガートが印象的な、ポジティヴなポップ・ナンバー。4分で鳴らされるバスドラが、ズンズン突き進むように前向きな雰囲気を醸し出している。
02クローバー
ウクレレの音色にも似た、軽く爽やかなアコースティック・ギターのコード・ストロークと、シャンシャンと軽やかに鳴る鈴の音が優しい、つじあやの流LOHASサウンド。彼女の優しく自然なヴォーカルが胸にしみる1曲だ。
03心は君のもとへ
エレクトリックな風情を極力廃し、オーガニックな魅力たっぷりで聴かせるミディアム・テンポのロッカ・バラード。片思いの相手に向けて切々と語りかける愛のストーリーを、淡々と語るように歌い上げる。
04君にありがとう
最愛の相手とのお別れの時を迎えながらも、優しい気持ちを「ありがとう」の言葉に乗せて歌い上げる、アコースティック・サウンドが印象的なミディアム・バラード。これまでを振り返りながら、感謝の言葉を繰り返す歌詞に涙々。
05恋人どうし
ウクレレの温かく優しい音色とつじ自身の囁くように自然なヴォーカルが、最適な形でマッチングしたポップ・ソング。ハイハットで刻まれる3連のリズム・パターンとオブリガートで入るフルートの音色が絶妙。
06愛のかけら☆恋のかけら
真正面からの8ビートにがっぷり四つで取り組んだ、疾走感たっぷりのロック・ナンバー。とはいえコードを鳴らしているのは(恐らく)ウクレレ。エレキ・ギターはオカズ程度にしか使わず、全体的にオーガニックな雰囲気だ。
07風になる
スタジオジブリ作品『猫の恩返し』の主題歌に起用され、一気に注目を集めた彼女初の大ヒット曲。シンプルなメロディをはっきりとした滑舌と完璧なピッチ・コントロールで歌い上げ、ヴォーカリストとしての力を世間に知らしめた1曲。
08雨音
それまでのキャリアでリリースした前向きでポジティヴな楽曲の印象から一変し、メロディ、アレンジともにダークで暗いイメージを曲に注入、深みを持たせた意欲作。優しく穏やかなだけではない、彼女の新しい一面を垣間見せた1曲だ。
09桜の木の下で
壮大なストリングスのアレンジをバックに、淡々としたウィスパー・ヴォイスを聴かせるバラード・ナンバー。ドラムの代わりにリズム・マシーンを使用するなど、これまでの“自然派・明るい・アコースティック”といった路線から一線を画した1曲。
10ありきたりなロマンス
エレクトリック・ギターの軽快なカッティングが気持ちよい、16ビートのファンキーなポップ・ナンバー。シンプルなコード進行とメロディでありながら、力強いヴォーカル表現で聴き手をグイグイ引っ張る、ヴォーカリストとしての真骨頂を示した1曲だ。
11パレード
御存知、日本を代表する“ポップ職人”、山下達郎の代表曲のひとつ「パレード」を、つじあやのがカヴァー。ホーンを駆使したユーモラスなアレンジと彼女のまっすぐなヴォーカルが曲にベスト・マッチ。新しい魅力で聴かせてくれる。
12春風
シンセサイザーが繰り出すクラヴィの音色が印象的なロック・ナンバー。8ビートのドラムスをバックに前面で鳴るのはシンセサイザー。機械的なサウンドでありながら、優しくオーガニックな印象を受けるのは彼女の声質に負うところ大。
13Shiny Day
ディストーションを効かせたギター・サウンドが全開の、典型的な8ビートのロック・ナンバー。自らの声を重ねたコーラスが、美しく澄みわたる青空を印象的に歌いあげる。シンプルなアレンジだからこそ、彼女のヴォーカル力が堪能できる1曲。
14愛の真夏
ウクレレのコード・カッティングをメインに、ドラムとベース、エレキ・ギターがサポート。大袈裟なアレンジは一切排除し、彼女の澄みわたるまっすぐなヴォーカルだけを聴かせるメロディアスなポップ・ナンバーだ。
15ゆびきり
アコースティック・ピアノのつま弾きとストリングスを従え、呟くように優しく歌い上げる、メロディアスなバラード・ナンバー。遠距離恋愛をする恋人たちの切なさを歌った、美しいナンバーだ。
16星降る夜のクリスマス
バンド・サウンドでクリスマスを歌った、メロディアスなロッカ・バラード。男性からの視点で愛する彼女への優しいメッセージを力強く歌い上げる、寒い季節にも暖かな気持ちになれること請け合いの1曲だ。
[Disc 2]〈アヤノ セレクション〉
01ぎゅっと抱きしめて
トリッキーなドラム・パターンにパーカッション、そこに絡むは彼女の代名詞たるウクレレ。一見奇をてらったような編成でありながらも曲がひとつにまとまっているのは彼女のヴォーカル力によるところが大。メロディアスなバラード・ナンバーだ。
02おいたままラヴレター
バンジョーのアルペジオのイントロに導かれ、曲が始まると同時に軽快な2ビートへ。軽やかでにぎやかな、聴いているだけでウキウキしてくるウエスタン・ナンバーだ。楽しく明るい、彼女の魅力が満載の1曲。
03ブルー
小節の1拍目のみにアクセントを置いたキメが特徴的な、疾走感たっぷりのポップ・ナンバー。タイトルの“ブルー”は青空の色。どこまでも澄みわたる晴れやかな空を、透明感あふれるヴォーカルで清々しく聴かせる。
04恋のささやき
ラグタイム風のピアノ・アレンジが楽しい、バック・ビートを強調した明るく軽快なポップス・ナンバー。シンプルなメロディを歌うだけで彼女の世界があたり一面に拡がるのは、温かい中にも1本芯の通ったヴォーカル力があってこそだ。
05シャ・ラ・ラ (with 奥田民生)
アコースティック・ギターの温かなコード・ストロークをメインに、ドラムとベースを従えたシンプルなアレンジに乗せて歌い上げる、優しいラブ・ソング。奥田民生との共演が実現、息のあったコーラスを聴かせてくれる。
06君に会いに行きましょう (with 斉藤和義)
つじあやのの奏でるウクレレと斉藤和義の弾くブルージィなギター・ストロークがベスト・マッチした、フォーキーなナンバー。メイン・メロディを斉藤が、3度上のコーラスをつじが歌う、美しいハモリを楽しめる。
07月が泣いてる
ピアノの伴奏にウクレレのメロディアスなイントロが印象的な、ミディアム・テンポのポップ・ナンバー。聴いているだけでほんのりと優しい気持ちにさせられる、暖かな1曲だ。全薬工業「ジキニン」のCMソングにも起用された。
08黄金の月
どこか浮遊感を感じさせるひとつヒネったコード進行と、パーカッションを多用した捉えどころのないアレンジが不思議な魅力を醸し出している、アヴァンギャルドなナンバー。低音で響くチェロの音色が印象的だ。
09猫になりたい
つじあやのといえばウクレレ。このウクレレのコード・ストロークのみをバックに、透明感あふれる彼女のヴォーカルで全編聴かせる、シンプルなポップス・ナンバー。曲のテーマ“猫”にぴったりな、ほんわかした優しい1曲だ。
10たんぽぽ
アコースティック・ギターのフィンガー・ノイズも耳に優しい、暖かな雰囲気が全編を覆った、2ビートのバラード・ナンバー。たんぽぽの綿毛のようにフワフワしたヴォーカルを聴くだけで優しい気持ちになれること請け合いだ。
11君の花が咲いていた
ブルースチックなコード進行をシャッフル・ビートに乗せて軽快に歌い上げる明るく楽しい1曲だ。Aメロでアレンジされたキメも何とも楽しい気持ちにさせられる。落ち込んでいる時もこの曲を聴けば一発で元気になれること間違いなし。
12チェリー
日本が誇るメロディ・メイカー、スピッツの代表曲をつじあやのがカヴァー。原曲よりテンポを幾分落とし、ウクレレのコード・ストロークだけをバックに淡々としみじみと歌い上げる。真っ直ぐな歌声が、メロディの良さを最大限に引き出している、最良カヴァー。
13恋はやさしく
ウクレレのコード・アルペジオの弾き語りで聴かせる、美しいメロディが印象的なミディアム・テンポのポップ・ナンバー。「フランソア」のキャンペーン・ソングにも起用された、オーガニックな魅力一杯の1曲だ。
14いつまでも二人で
加山雄三の「君といつまでも」を彷彿とさせる3連のシャッフル・ビートとアレンジが微笑ましい、雄大なミディアム・テンポのラブ・ソング。愛する相手へ送る真実の思い、優しい愛情をシンプルに歌い上げる。
15君のうた
アコースティック・ギターのアルペジオの弾き語りで淡々と歌い上げる、シンプルなラブ・バラード。悲しみを乗り越えて、何一つ変わらない思いを切々と歌う、女心がいっぱい詰まった優しいナンバーだ。
16CMソングメドレー
TBSの「チャンネルロック・キャンペーン」、「夜のヒットパレード」をモチーフにしたポッカの「あっぱれ静岡茶」など、彼女が手がけてきたTV-CMソングの数々をメドレーにしてお届け。タイアップ曲のみでありながら、彼女のほんわかした魅力が満載。