ミニ・レビュー
ピアノとアコギの野性派デュオ、2年ぶりの3枚目。“もうじき30の青春”を雄雄しく、情なく、愛しく描く歌詞の世界に、共感する男は多いだろう。怖いほどリアルだが、バンド・サウンドと美しいメロディの聴きやすい曲が多い。確かにここに人間が存在している。
ガイドコメント
弾き語りユニット、野狐禅の3rdアルバム。よりフォーキーに、そしてよりダイナミックになった彼らの今の音がここに凝縮。竹原ピストル主演映画『青春☆金属バット』主題歌「ならば、友よ」を収録。
収録曲
01日々、割れた日々
ごった煮になった感情を吐き出すかのようなヴォーカルはあまりにもリアル。アコギとピアノという彼らのべージックなスタイルでディープに迫る、直情型弾き語りハード・サウンドの真骨頂。深いくさびが聴くものの胸に打ち込まれる!
02青春ゴーズ・オン
歳月が人に与えるものはさまざま。それが歓び、悲しみ、何であろうと無駄なものはなにひとつない。年を重ねるごとに尻すぼみになりそうな心を鼓舞する応援歌。熱いエネルギーが詰まったこの曲とともにいつまでももがこう。
03じゅうじか
言葉遊び的なところが印象に残る歌詞だが、だからこそ、そこに込められたどうしようもなさがまっすぐに伝わってくる。男の鬱積した想いに泣けてくる、ちょっと悟りきったところを感じさせるのも野弧禅ならでは。
04風来坊
居なくなった君へ向けての歌詞が心に沁みる。ゆったりとしたテンポで歌われる男の気持ちは女々しくもあるが、誰でも思い当たるようなところもあり、笑えないどころか自然と心の奥深いところに入り込んでくる。
05秋月
ピアノとアコギのせつなくて美しいアンサンブル。とてつもなく深いところに落ちていきそうな錯覚に陥るサウンドと竹原ピストルの存在感のあるヴォーカルで紡ぐ慟哭のストーリー。タイトルの付け方も絶妙。
06不完全熱唱
とてつもなくアツく痛快なフォーク・ロック。息切れしそうなほど炸裂しているハープはHIGHWAY61の堀井与志郎が吹いている。忘れかけていた熱さを取り戻すために心は走り出す。でも主人公がそんな想いをめぐらせている場所がトイレとは!
07東京マシンガン
沈んでいきそうな自分に、だらけた日々に歯止めをかけるために彼らは歌う。諦めているようで諦めてない。そんなあがきが伝わってくるエモーショナルなナンバー。竹原のヴォーカルに寄り添う濱埜のコーラスもいい。
08ならば、友よ (アルバムバージョン)
濱埜の奏でるピアノのフレーズに明日の光が見える。そして竹原はアコギとともに自分の思いを真摯に絞り出す。夢や青春への飽くなき渇望、大事なものを置き忘れそうな時のためにこの曲がある、といえるようなメッセージ・ソング。
09桜
描かれる春の情景は、良質の短編小説のようにせつないストーリーを描き出す。“君”のことを忘れることでひとつの物語は終わる。アコギとピアノで織りなすやさしい音空間、素朴でゆったりとしたヴォーカルが沁みてくる。