ガイドコメント
ニール・ヤングが全世界に贈る反戦メッセージ・アルバム。シンプルなロック・バンド+100人編成の聖歌隊とわずか2週間で録音されたという本作は、還暦を迎えてもなお意欲的な彼の姿勢を反映した力作。
収録曲
01AFTER THE GARDEN
アルバム『リヴィング・ウィズ・ウォー』の幕開けを飾る曲。ドラムスが力強くキックするトラックをバックに、環境が破壊すれば元も子もなしと繰り返し歌唱している。同作最終曲「美しきアメリカ」の意味合いも増す社会派作品。
02LIVING WITH WAR
ホーンとコーラスを配した美しく平和的な曲調に乗せ、戦争の不要と平和の必要を繰り返し説き続けるプロテスト・ソング。全編反戦の意志で構成された歌詞に、アメリカ国歌の一節を埋め込むことで逆説的効果を企図している。
03THE RESTLESS CONSUMER
「ロッキン・イン・ザ・フリー・ワールド」を思わせる雰囲気で始まり、途中には語り風のパートも挿入されるナンバー。「もうこれ以上嘘はたくさんだ」と繰り返し歌いながら、終わらぬ戦争や飽くなき欲望を激しく糾弾する。
04SHOCK AND AWE
2003年3月の米英軍によるイラク攻撃の作戦名を冠したナンバー。考える余地がありながら思い込みで行動した結果、後戻りできなくなったイラク戦争を、国家ではなく国民単位で反省。ギター・ソロ含め全編熱を帯びた曲調だ。
05FAMILIES
戦地から帰国することになった兵士の姿を通じ、政治的ではなく人間的視点から反戦を訴えるナンバー。家族を大切にするニールらしい歌詞で、メロディとコーラスにも人間的な温かみが。短い作品ながらその余韻は深い。
06FLAGS OF FREEDOM
タイトルからもメロディからもボブ・ディランの「自由の鐘」が連想されるプロテスト・ナンバーで、歌詞には同じディランの「風に吹かれて」を引用。他者を鼓舞せず、あくまで問いかけるように歌っているのが印象的。
07LET'S IMPEACH THE PRESIDENT
戦争、事実隠蔽、国民監視、宗教利用などの悪行を挙げ、嘘つきの大統領を弾劾しようと呼びかける激しいフォーク・ロック・ナンバー。途中で挿入されるブッシュ大統領本人の演説に、野次のようなコーラスが被せられる。
08LOOKIN' FOR A LEADER
アメリカを正常化すべく、次期大統領選では“やる気のあるリーダー”を捜し出そうと歌う力強いフォーク・ロック・ナンバー。「レッツ・インピーチ・ザ・プレジデント」でのブッシュ大統領全否定がこの曲の強度をも増している。
09ROGER AND OUT
祖国に身を捧げ死んだ親友へと語りかける曲。『リヴィング・ウィズ・ウォー』での戦争に対する多面的な視点を象徴する深い歌詞と、「ヘルプレス」を思わせる滋味なるメロディ。歌声とコーラスが鎮魂歌のごとく優しい。
10AMERICA THE BEAUTIFUL
“9.11”以降に歌われる機会が増えた代表的アメリカ愛国歌。国土そのものの美しさを讃えたこの曲を、人種もさまざまな100人で編成する聖歌隊がゴスペルへと昇華。美しく雄大な歌声からニールの思いを汲み取られよ。