ミニ・レビュー
2006年UKシーン最大の台風の目であろう、DJデンジャー・マウスとシー・ロスによるプロジェクトのデビュー・アルバム。ソウル、ダブ、ヒップホップ、ドラムンベースなどを自在に組み合わせてしまいながらも音としての統一感があるあたりは、さすがの一言。
ガイドコメント
鬼才DJ、デンジャー・マウスと、異能集団、グッディー・モブの中心人物である歌うソウル・ラッパー、シー・ローによる夢のプロジェクトが始動。UKで未曾有の大ヒットをした「クレイジー」収録。
収録曲
01GO - GO GADGET GOSPEL
小気味いいブラスとドラムスの連打によるアレンジで、自然と体が揺らされてしまうようなトラックが秀逸。タイトルが曲をそのものをズバリ表わしており、ガラクタのように弾けた音とゴスペル調のコーラスが特徴的なナンバーだ。
02CRAZY
ダウンロードのみでUKチャートのトップを獲得し、ユニットの名を世界に知らしめた代表曲。力強いビートに乗せてテクニカルなヴォーカルが歌い上げるミディアム・チューンで、サビで奏でられるストリングスの音色が印象的だ。
03ST.ELSEWHERE
メロウなスロー・ナンバー。サイケデリックな雰囲気を漂わせるトラックに、エモーショナルなヴォーカルが響きわたる。聴かせる歌ものもこなせるというシー・ローの幅広い才能が堪能できる、ソウル色の強い1曲だ。
04GONE DADDY GONE
全体的に軽いノリのロック・チューン。娘は自分のもとから離れてしまったと、ひたすらに言い聞かせるシンプルな内容。どことなく投げやりなサビの歌い方に、ちょっとした悲しさや淋しさがうかがえるのが好印象だ。
05SMILEY FACES
リズム隊が力強くビートを刻むファンキーなアッパー・チューン。表面的には懐かしさを感じさせるが、彼らならではのゴスペル風のコーラスや、未来的なコンピュータ・サウンドなど、随所に作りまれたこだわりが見受けられる。
06THE BOOGIE MONSTER
サイケデリック色が強く、腹の奥底に伝わるようなヴォーカルが印象的。曲中に挿入されるウィスパー・ヴォイスは、シンプルな構成の中で効果的なアクセントになっている。60〜70年代を感じさせるも、古さは感じさせない、確固としたオリジナリティも同居したナンバー。
07FENG SHUI
風水をフィーチャーし、中国の伝統を意識したオリエンタルなアレンジが魅力の1曲。歌詞の内容もとことん風水にこだわるという徹底ぶり。“風水に沿って曲とアレンジを手がけたから”というフレーズがユニークだ。
08JUST A THOUGHT
クラッシュ・シンバルを基調とした荒いアレンジのトラックとアコースティック・ギターの美しい旋律が、独特の儚さを生み出すナンバー。メロディアスなヴォーカルも情感たっぷりに哀愁を漂わせ、アウトロには混沌とした心情を感じる。
09TRANSFORMER
テレビ・ゲームのようなコンピュータ・サウンドが特徴の、ハイテンションなナンバー。タイトル通り、まるで変身したかのようにさまざまに加工されたヴォーカルが次々と飛び出し、遊び心のある楽曲に仕上がっている。
10WHO CARES?
重低音が響くゆったりとしたサウンドが、サビでがらりと雰囲気が変わり、その瞬間の開放感がやみつきになる。自在な表現力を持つシー・ローのソウルフルなヴォーカルが、聴き手を飽きさせないナンバーだ。
11ONLINE
吐息混じりにじっくりと低音で歌うヴォーカルとフルートの音色が、セクシーな大人の味わいを持ったナンバー。シンプルなアレンジだが、グルーヴィなベースも低くうねり、雰囲気は抜群。トータル2分弱とコンパクトな作品だ。
12NECROMANCER
“ネクロマンサー=神秘的でおぞましいもの”をテーマにしたこの曲は、自殺した彼女の死体を愛するという意味深な歌詞がユニーク。ミディアム・テンポで淡々と進み、ザクザクとした荒いサウンドが印象的だ。
13STORM COMING
複雑に作り込まれたリズム・アンサンブルやスペーシーなトラックが、楽曲のスケール感を演出している。ドラマティックな展開でハイテンションに駆け抜けるサウンドが気分を高揚させる、ドライヴ感満点のアッパー・チューンだ。
14THE LAST TIME
「トゥトゥトゥ」と口ずさむコーラスがなんとなく懐かしい雰囲気を持った、グルーヴ感のあるソウルフルなナンバー。60年代のブラック・ミュージックのエッセンスを色濃く感じさせるヴォーカルの熱唱に胸が熱くなる!
15CRAZY
ヒット曲「クレイジー」のインストゥルメンタル・ヴァージョン。美しく洗練されたそのトラックをもっとよく楽しみたいという人におすすめ。静寂とした世界観を表出するサウンドは、ヴォーカルをはずしても変わらぬ魅力で、アンビエントとしてもしっかりと聴ける。