ミニ・レビュー
マイケル・ハッチェンス亡き後、活動を休止していたオージー・バンドの再結成第1弾。もちろんポイントは新シンガーの加入による変化だが、二人を比較しても意味がないだろう。未来に向おうとする力強い演奏にこのバンドの生命力を実感させられるからだ。
ガイドコメント
カリスマ的存在だったヴォーカリスト、マイケル・ハッチェンスの悲劇的死を乗り越え、ついにINXSが再始動&完全復活を遂げた通算11作目。カナダ出身のJ.D.フォーチュンがヴォーカリストとして参加。
収録曲
01DEVIL'S PARTY
ホーンが効果的に使われたアルバム『スウィッチ』のオープニング曲。新加入のヴォーカリスト、J.D.フォーチュンの男らしい声とダンサブルで躍動感のあるサウンドがうまくマッチした、インエクセスらしいナンバー。
02PRETTY VEGAS
シンプルなギターの短いイントロから徐々に盛り上がる重量感のあるシングル・トラック。エフェクトをかけたりしているのを含め、表情豊かな変化に富んだヴォーカル、そしてストーンズ風の安定した力強いドラムスが印象的なナンバー。
03AFTERGLOW
低音を生かした落ち着いたヴォーカルやひんやりした感触もあるサウンドがイギリスっぽくもあり、ちょっぴりU2を思わせる曲調が、美しいミディアム・ナンバー。再結成されたバンドの新しい魅力がふんだんに詰め込まれている。
04HOT GIRLS
アン・ルイスによる日本語の語りがフィーチャーされた、セクシーかつダイナミックなナンバー。ギター中心の混沌としたサウンドが、そんなムードを効果的に盛り上げている。
05PERFECT STRANGERS
小刻みなギターのカッティングに導かれるダンサブルなナンバー。低音と高音を使い分けたヴォーカルやめまぐるしい転調など、起伏があってスピード感もたっぷり。ホーンが入った終盤の盛り上がりも鮮やかだ。
06REMEMBER WHO'S YOUR MAN
アルバム『スウィッチ』の中では比較的ポップな仕上がり。いい加減で力の抜けたヴォーカルやファルセットも巧妙で、歌唱の幅広さが感じられる。新加入のヴォーカリストJ.D.フォーチュンの器用さも伝わる楽曲だ。
07HUNGRY
「世界は飢えている」と歌うスケールの大きなナンバー。シンセサイザーをフィーチャーしたサウンド作りにもひねりがあり、ニュー・オーダーを思わせるようなニューウェイヴ感覚を隠し味としてうまく採り入れている。
08NEVER LET YOU GO
レゲエ・タッチのミディアム・ナンバー。シンプルなサウンド作りで決して派手さはないが、ヴォーカルを堪能するには充分の構成で、ジワジワと聴き手を昂揚させる魅力的な曲だ。
09LIKE IT OR NOT
インエクセス流ダンス・ナンバーだが、軽いタッチの演奏ではなく、硬質なギター、タイトなリズムなど、手応え抜群のサウンド・メイクが光る。新鮮さが感じられる、復活を遂げるのにふさわしい曲だ。
10US
穏やかさを感じさせるポップなナンバー。特に新ヴォーカリスト、J.D.フォーチュンの貢献度が大きく、リラックスした優しいヴォーカルが曲のムードを豊かなものにしている。コーラスも効果的に加わり心に染み入る1曲だ。
11GOD'S TOP TEN
ピアノのイントロに続く女性ヴォーカルが印象的なミディアム・ナンバー。淡々とした歌と演奏だが、全編にスピリチュアルな雰囲気が漂っている。スペイシーなエンディングは、まるで宇宙か教会にいるかのように神秘的だ。