ミニ・レビュー
伝説のパンク・バンドが再結成を果たしてリリースした32年ぶりの通算3作目。R&B、ブルース、ロックンロール、フォーク・ロックなど、彼らのバックグラウンドとなっている音楽がすべてミックスされたような中身の濃い作品となっている。
ガイドコメント
モリッシーの熱いラブ・コールに応えて再結成を果たした1970年代を代表するパンク・ロック・バンド、ニューヨーク・ドールズのまさかの30年ぶりスタジオ録音アルバム。元ハノイ・ロックスのサミ・ヤッファがベースで参加。新曲も多数収録されている。
収録曲
01WE'RE ALL IN LOVE
再結成直後2004年に病死したアーサー・“キラー”・ケインの後を継いだ、元ハノイ・ロックスのサミ・ヤッファのドライヴするベース・ラインから始まる、ストレートなロック・ナンバー。デヴィッド・ヨハンセン渾身のブルース・ハープもばっちりキマっている。
02RUNNIN' AROUND
パンク・ロックのパイオニアである彼らの原点はここにあり。溜めたリズムと気だるいコーラスが心地良く体を揺さぶる、王道のブルース・ナンバー。カッチリとまとまった演奏の上で、デヴィッド・ヨハンセンがとても気持ち良さそうにのびのびと歌っている。
03PLENTY OF MUSIC
パンク・ロック全盛の刹那の時代を生き抜いたデヴィッド・ヨハンセンの熟年の魅力が渋く光る、メロディアスで哀愁漂うスロー・ナンバー。「歌をダメにするな」というメッセージは、彼が歌うからこそ説得力がある。
04DANCE LIKE A MONKEY
32年ぶりのリリースとなった3rdアルバム『反逆という名の伝説』からのシングル曲。跳ねるリズムにポップなメロディ、そして胸躍る愉快なコーラス。森の中で動物たちがダンスをしている姿が目に浮かぶようなパーティ・ナンバー。
05PUNISHING WORLD
疾走力抜群のへヴィなサウンドに、50歳を過ぎてもなおエネルギッシュでパワフルなデヴィッド・ヨハンセンのヴォーカルがいきおいよく乗るハード・ロック・ナンバー。パンク・バンド、アゲインスト・ミーのトム・ゲーブルがコーラスで参加している。
06MAIMED HAPPINESS
デヴィッド・ヨハンセンの渋い歌声がしっとりと体に染み込んでくる、極上のバラード・ナンバー。「俺はこんな無駄な人生をもう一度生きたいとは思わない」というメランコリックな歌詞に、しみじみと考えさせられる。
07FISHNETS & CIGARETTES
力強いサビのメロディが耳に残る、ミドル・テンポのソウルフルなロック・ナンバー。切なく響くギターのアルペジオと美しいコーラスが相まって、どこかもの悲しくも親しみやすい楽曲に仕上がっている。
08GOTTA GET AWAY FROM TOMMY
ピアノを前面に押し出した、シンプルながらもいきおいで押しまくるノリの良いロックンロール・ナンバー。ひたすら “トミー” と離れたいと歌っており、 “トミー” なる人物と一体何があったのかと、非常に気になってしまう。
09DANCING ON THE LIP OF A VOLCANO
ゲスト・ミュージシャンであるR.E.M.のマイケル・スタイプの美しく響くコーラスとデヴィッド・ヨハンセンの毒々しい歌声が交差し、絶妙な空気感を作り出している。味わい深いミディアム・ナンバー。
10I AIN'T GOT NOTHIN'
孤独の絶望感を歌ったエモーショナルなスロー・バラード。美しいピアノの旋律ともの悲しいハーモニカが、まるで感動映画のエンディングのように切なく響き、聴きながらしみじみと感慨深い感情が湧いてくる。
11RAINBOW STORE
60'sテイストの陽気でキャッチーなポップ・ソング。一昔前のダンスホールを思い起こさせるオールディーズ特有の軽快なリズムと曲調が、楽しく踊りたい気分を誘発。ニューヨーク・ドールズの“陽”の部分を思いっきり弾けさせた1曲だ。
12GIMME LUV & TURN ON THE LIGHT
縦ノリのリズムに弾けまくりのギター、そしてデヴィッド・ヨハンセンのブルース魂炸裂のハーモニカが縦横無尽にかけめぐる、パンキッシュかつブルージィなロックンロール・ナンバー。イギー・ポップがコーラスで参加している点にも注目だ。
13TAKE A GOOD LOOK AT MY GOODLOOKS
しっとりとした歌声とメロディアスな曲調にじっと聴き入ってしまう、哀愁漂うメロウなバラード・ナンバー。時の流れに人生を虚しく感じても、自分にとって大切なものを目に焼きつけて生きようというメッセージに心打たれる。
14BEAUTY SCHOOL
3rdアルバム『反逆という名の伝説』の日本盤ボーナス・トラックとして収録された、終始にぎやかでノリノリのパーティ・ナンバー。スピーカーからダンサーが飛び出してきそうなほど、どのパートもいきおいのある弾けたサウンドを展開している。