ミニ・レビュー
デズリーやインディア.アリーらが比較対象として出されるかもしれない、UKの新人シンガー・ソングライター。簡単に言ってしまえば、非常に完成度の高い、淡い流動性が魅力のソウル・ポップ表現。得難いポップ・センスや切なさを持っていて、今後を期待させる。
ガイドコメント
英国リーズ出身、女性シンガー・ソングライターの日本デビュー盤。ヒット曲「プット・ユア・レコーズ・オン」をはじめ、ムーディでメロウなR&B色の濃い大人向けポップスが満載。洗練されたメロディと端麗なルックスが実に魅力的だ。
収録曲
01LIKE A STAR
幻想的なメロディが不思議な魅力をもたらす、彼女の記念すべきデビュー・シングル。静かなムードをたたえた愛の歌で、アンニュイで力みのないヴォーカル・ワークが耳をひきつけて離さない。15歳の時に組んだバンド時代に書いた作品だとか。
02ENCHANTMENT
幻想的なメロディ・ラインに乗る、オーガニックなヴォーカルが魅力的なミディアム・スロー・ナンバー。タイトルが“魅力”と“魔法”という2つの意味を示すように、前半と後半で巧みに色彩を替えたネオ・ソウル風のサウンド・プロデュースが秀逸で、彼女の表現の幅を広げている。
03PUT YOUR RECORDS ON
軽やかに刻まれるリズムの中で、力強さを感じさせるオーガニック・ソウル風ナンバー。芯の強いヴォーカルが楽曲に生命力を注ぎ込んでいるようで、70年代ソウルがルーツという彼女のキャラクターがよく表われている。
04TILL IT HAPPENS TO YOU
愛が終わった後の空虚な胸のうちを歌った作品。アコースティック・ソウルの佇まいを持ったナンバーで、マイナー調のメロディや弱さを見せながらも優しさのあるヴォーカルが、聴く者を深淵な世界へと導いていく。表現者としての確かな力量を実感できる。
05TROUBLE SLEEPING
恋に悩んで“トラブル・スリーピング(=眠れない)”という状況を歌った曲で、詞はかなりシリアスな内容。だが、空間の広がりを感じるゆったりとしたムードを携えた、ポップなオーガニック・ソウル調のサウンドが、詞にある辛い心情を優しく包み込んでいる。
06CALL ME WHEN YOU GET THIS
アルバム『コリーヌ・ベイリー・レイ』の中では珍しく、ハッピーな恋愛モードの嬉しい感情を歌った作品。全体の曲調やヴォーカルも弾んでいて、どことなく幸せそうな雰囲気を感じさせる。絶妙なタイミングで入るハモンド・オルガンの音色も、いいアクセントだ。
07CHOUX PASTRY HEART
恋に破れて、いとも簡単に自分のハートが押しつぶされてしまった様子を、“まるでシュークリームがつぶれるみたいに脆いもの”と表現したトーチ・ソング。深い悲しみを表現するのがバツグンに巧い、彼女のヴォーカル・ワークが活きたナンバー。
08BREATHLESS
「あなたに名前を呼ばれると、息が止まりそうになるの」という詞が可愛らしい恋の歌。今にも天に舞い上がりそうな恋する女性の喜びの感情を、あくまで控えめに表現するところが彼女らしい。ゆったりとしたムードをたたえたオーガニックなナンバーだ。
09I'D LIKE TO
シンプルなギター&ベースにホーン・セクションが絡む、ジャズ・ファンク調のミディアム・チューン。裕福ではないが大勢に囲まれて楽しく過ごした、自身の子供時代の夏の光景を歌った曲で、朗らかで陽気なムードを持った作品に仕上がっている。
10BUTTERFLY
眩しさを感じる明朗さと夕暮れを思わせる寂しさとの間を行き来するような、揺らぎあるソウル・ポップ・バラード。とてもシャイだった彼女自身の子供時代と元気づけてくれた母への感謝の気持ちが綴られているミディアム・スロー・ナンバー。
11SEASONS CHANGE
どことなくエリカ・バドゥを彷彿とさせるヴォーカル・ワークが特徴の、ソウル・フレイヴァーたっぷりの作品。ブルージィな雰囲気も垣間見せるオーガニック・サウンドが、癒しと心地良い酩酊感をもたらしてくれるミディアム・スロー・バラード。
12ANOTHER RAINY DAY
アコースティック・ギターでの弾き語りを軸とした、シンプルなオーガニック・ソウル・ナンバー。ウェスタンやブルース、ロックなど、さまざまな要素を含んだ、彼女の多彩な表現力が感じられる魅力ある作品だ。