ミニ・レビュー
デビュー25周年記念アルバム。ファンクな(2)といい、スティーリー・ダンみたいな(3)といい、変わらない芸風がうれしい。ルックスも変わらない(これは驚異的)。アルバム前半のドラムはスティーヴ・ガッド。ボーナス・トラックの(13)は2003年の横浜アリーナのライヴ。
ガイドコメント
2006年にデビュー25周年を迎えた角松敏生の記念オリジナル・アルバム。スティーヴ・ガッド、アンソニー・ジャクソンといった強力リズム隊を迎え、生録音にこだわった作品だ。これまでの彼の集大成ともいえるサウンドが詰まった1枚。
収録曲
01UGAM
シンプルな構成のインストゥルメンタル。コンピュータ・サウンドと、2人の女性による伸びやかなコーラスが響きわたり、どことなく民俗音楽を思わせ、果てしなく広がる宇宙空間のような神秘性が漂っている。
02Movin'
フュージョン、ソウルの名セッション・ドラマー、スティーヴ・ガッドを迎えておくるファンク・ナンバー。出だしから難解なリズムを刻むドラムスは、まさにガッドの真骨頂。動き出せ、と歌う角松のメッセージをより強烈に印象づける。
03You made it
品のいいバーでほろ酔い気分のジャム・セッション、といった趣の陽気でジャジィな1曲。Bメロあたりでは角松敏生ならではのポップさを織り交ぜ、単にジャズやブルースをなぞっただけではない、オリジナルな曲として昇華。
04恋の落とし穴
多彩なパーカッションで彩られたラテン調のリズムが軽快なナンバー。恋をしてしまった男の浮かれ気分や、楽しげな雰囲気が伝わってくる。やや難解なメロディながら、歯切れのいい角松のヴォーカルは爽やか!
05Still know nothing at all
本当の愛とは何なのかを探し求める王道バラード。これまで多くの経験があって、みんな愛していたつもりだけどまだ何もわかっちゃいない。うつむき加減に過去を振り返りながらも、できることを続けていこうという結論はポジティヴ。
06かなし花
角松の愛するルーツ・ミュージック、沖縄音楽のテイストあふれる作品。三線を使用し、沖縄を拠点に活動しているヴォーカリストがコーラスを務めているなど、アレンジは徹底して沖縄調だが、メロディには随所に角松らしいポップさが融合。
07日照雨 (SOBAE)
ブラス・バンドとチョッパー・ベースの音が印象的なポップス。オープニングこそ波の音のSEが使用されるなど静かな雰囲気に引き込まれるが、イントロが始まれば一転してダンサブルに。夏のビーチで聴きたい1曲。
08アイシテル
ピアノの旋律が美しいミディアム・ナンバー。語りかけるように歌うヴォーカルが心地良い。「愛してる」ことを意識し口に出すことが、まだ愛していないことの裏返しなんだという歌詞は、簡単に愛を語りたがる世間へのアンチテーゼ。
09Mannequin
あまり高音にならずに、全体的に抑制が効いたメロディ・ラインがアダルトな雰囲気を感じさせ、アレンジも主張の強いベースが力強く引き締めている。あふれそうな感情をぎりぎりのところで保っているような危うさが漂う。
10黙想
ピアノとヴォーカルのみというシンプルな構成の静かなバラード。「黙想」というタイトルのイメージ通り、暗闇に浮かび上がるような歌声に耳を奪われる。後半は伸びやかな女性のコーラスが絶妙に絡み合う。
11Prayer
Ah-Ray……Layerという祈り声のようなフレーズが特徴的な、疾走感のあるポップ・チューン。終盤に挿入される沖縄弁の高速ラップはインパクト大で、楽曲全体のテーマである祈りに通じる神秘性を演出している。
12Smile (album version)
沖縄のアーティスト、千秋による歌い出しに意表を突かれるデュエット・ソング。その淀みなく澄みきった歌声こそ間違いなくこの曲の主役であり、存在感抜群。ドラム、パーカッションが次々に重なっていくアレンジはドラマティック。
13初恋 (2003.11.15 YOKOHAMA ARENA)
ライヴ音源からの収録で、終始鳴り響く手拍子の音や歓声は臨場感があり、会場の雰囲気が伝わってくる。85年にリリースされた曲そのものもブラスを基調とした爽やかなポップスで楽しげ。メンバー紹介時のベース・ソロがかっこいい!