ガイドコメント
元アット・ザ・ドライヴ・インのセドリックとオマーによるマーズ・ヴォルダの『スキャプデイツ』に続く3rdアルバム。スピリチュアルで想像力を掻き立てるサウンドと高い演奏力が堪能できる。
収録曲
01VICARIOUS ATONEMENT
うねるギターがゆらゆらとしたトリップ感覚に陥らせる。7分強の曲ながら、インストと思わせるほどヴォーカル部分が少ないうえに、歌というよりうめきに近い声が発せられている。その酩酊感が独特な味わいを放つ異色作だ。
02TETRAGRAMMATON
冒頭から天才ドラマーと称されるジョン・セオドアのドラムの連打に、否が応にも気持ちがたかぶる。16分を超える大作だが、飽きさせない曲構成は秀逸。終始アグレッシヴなギターと甲高いコーラスが印象的なプログレッシヴ・ロックだ。
03VERMICIDE
物悲しい静かなAメロとは対照的な、力強くリズムが刻まれるサビが特徴。終盤に向かうにつれてサウンドが重厚になっていき、オマー・ロドリゲスの奔放なギターがパワフルにうなりまくるナンバーだ。
04MECCAMPUTECHTURE
ヴォーカル、セドリック・ヒクスラーのハイトーン・ヴォイスが存分に堪能できるミディアム・チューン。サックスやオルガンの音などが独創的なアンサンブルを奏でるクライマックスは、ある種カオス状態だが、しっかりとまとめあげているサウンド・テクニックはさすがだ。
05ASILOS MAGDALENA
おどろおどろしい雰囲気に支配された異色のナンバー。イントロとアウトロ以外はほぼアコースティック・ギターのみでアレンジされており、陰鬱な気分を加速。終盤の極度に歪められたヴォーカルは、恐怖すら喚起させる。
06VISCERA EYES
前半はリズム・ギター、リード・ギターを中心としたアレンジで、徐々に歪んでいく音色に脳を刺激される。後半で突如転調し、高速ドラムとベース主体のドライヴ感あふれるアレンジにがらりと変貌。1曲で2度楽しめる、構成力の高いナンバーだ。
07DAY OF THE BAPHOMETS
各パートが入れ違いに激しく自己主張し、1曲のうちにさまざまな表情を見せるハード・ロック・チューン。いくつもの楽曲がつぎはぎされたかのようで一見無秩序だが、1つの作品として整合感を持たせ得る彼らのたしかな演奏テクニックは圧巻。
08EL CIERVO VULNERADO
ゆったりと暗闇を流されていくような不思議な神秘性をたたえた1曲。パーカッション抜きのアレンジが不安定さを増長し、彼ら独特の絶妙な“気持ち悪さ”が全開。さまざまに加工されたヴォーカルが絡み合うさまは、祈りや呪いを思い起こさせるようだ。