ミニ・レビュー
モンパチもすっかり大人になったが、みずみずしいパンク魂とキャッチーなメロディ、まっすぐなメッセージは何も変わっちゃいない。これが4枚目だが、儀間(g)が半分近くの曲を書いてヴォーカルもとるなど、新たな試みも見える。地に足のついた頼もしい音だ。
ガイドコメント
前作『百々』以来、約2年半ぶりとなる“モンパチ”の4thアルバム。沖縄独特のリリックで歌われる愛らしいパンキッシュ・サウンドは、いまだ健在。気分を爽快にしてくれる楽曲が満載だ。
収録曲
01Real Life
3ピース・バンドらしいシンプルなサウンドが小気味いい、ハイ・テンポなナンバー。「NO MORE WAR!」というポリティカルなテーマを、「飲もう!」という言葉にかけてしまうあたりがモンパチ流だ。
02煩悩のブルース
1分30秒という短い尺を超高速で駆け抜ける、メロディック・ハードコア・ナンバー。「迷いなさい、苦しみなさい、千切れるほど、悩みなさい」という彼らのメッセージが、心にダイレクトに伝わってくる。
03亀
ライヴでオーディエンスが熱狂すること必至の、ストレートなパンク・ナンバー。「亀は食べちゃダメ」という遠い昔の言い伝えをモチーフにしたという、一風変った歌詞が印象的。ちなみに、メンバーはもちろん亀を食べていないとのこと。
04Baby Monster
子育てをした体験をもとに、ベース&ヴォーカル担当の上江洌が自身の子供をテーマに書き下ろした1曲。微笑ましいほどに我が子に対する愛情がたっぷり詰まった、ハッピー・チューンに仕上がっている。
05地球図鑑
“数十年後の未来、子供が祖父に地球の昔話をせがむ”というSFチックな設定が異色のナンバー。聴けば思わず口ずさみたくなるキャッチーなメロディが、ファンタジックな詞世界にうまくハマっている。
06Hunky-dory
ストレートなロックンロール・ナンバーのイメージが強いモンゴル800にしては、珍しくレゲエ風な裏打ちビート・ナンバー。ゆったりとしたリズムの中に、彼らのホームタウンである沖縄の風景が見え隠れしている。
07Hokus-o-em
イントロのギター・ソロが印象的なエモーショナル・トラック。「響きのいい言葉を探して並べてみた」という、モンパチならではのリリック・センスに要注目。ちなみにタイトルは、“ほくそ笑む”と読む。
08ダンスホール
作曲した儀間自ら「不思議なノリ」と評した、変拍子のリズムが独特の雰囲気を醸し出しているナンバー。タテノリの痛快ロックンロール・ナンバーとはまた違う、モンパチの新たな魅力が発見できる1曲だ。
09廃墟
「今までそこにあったものが、なくなっていく」という、なんともいえない喪失感を歌ったトラック。しかし、サウンドはそのような歌詞にもかかわらず、太陽のようにカラリとつき抜けた、ポジティヴなサウンドに仕上がっている。
10スコール
演奏時間が全7分25秒にも及ぶ、壮大でドラマティックなスロー・バラード。降ったかと思えばすぐ止むという沖縄のスコールにインスパイアを受けたサウンドが、時に静かに、時に激しく展開されていく。
11ストーンハウス
「A dream or reality」という歌詞の通り、夢の現実の狭間を行き交うかのようなフワフワとしたサウンドが、リスナーの耳に新鮮に響く。彼らの振り幅の広い音楽性が、ナチュラルに表現されたナンバー。
12face to face
face to face(面と向かって)というタイトルがいかにもモンパチらしいが、不純物が一切ない伸びやかなサウンドもまた彼ららしい。初期モンパチを思わせる、ストレートなロックンロール・ナンバーだ。
13Home
沖縄を離れて暮らす人たちに向けて作られたという、ささやかな応援歌(意外にも歌詞で沖縄という言葉が使われたのは本作が初めて)。アイルランド民謡でよく使われるティンホイッスルの音色が、独特のアクセントになっていて印象的だ。