ミニ・レビュー
世界中で大ヒットした「ギャングスタズ・パラダイス」(95年)で知られるクーリオの通算6枚目のアルバム。ウェッサイきっての論客、嘘をつかないギャングスタである彼を慕う、真のギャングスタらが提供したトラックに乗ってクールな生きざまと在り方を教示!
ガイドコメント
全世界総売り上げ1700万枚以上という記録を持つ、クーリオの5thアルバム。スヌープ・ドッグをフィーチャーしたヒット・シングル「ギャングスタ・ウォーク」など、キャッチーなヒップホップ・ナンバーが満載だ。
収録曲
01INTRO
アルバム『ザ・リターン・オブ・ザ・ギャングスタ』のオープニング・スキット。ラジオDJがアンニュイなバック・トラックに乗せてクーリオを紹介する、というアルバム・コンセプトを演出した小品。
02LET IT GO
ゲットー界隈に漂うアングラな雰囲気満載のサウンドに乗せて、クーリオがアウトロー極まりない自己紹介を披露する、ギャングスタ・スタイルのナンバー。ほこりっぽくて抑揚のない、淡々としたアレンジが、かえって緊張感を煽る。
03GANGSTA WALK
“ロング・ビーチが生んだ世界のスーパースター”ことスヌープ・ドッグとのコラボレーション・ナンバー。掛け合いを楽しむように抜群のコンビネーションをみせるラップはもちろん、メロディアスなサビも印象的だ。
04DO IT
米カレッジ・シーンで人気の“リプレイスメンツ”よりゴーストをフィーチャーした、ダンスホール・レゲエ調のナンバー。ギャングスタの生きざまを示すかのような強烈なリリックを、2MCでかわるがわるたたみかけていく。
05DROP SOMETHING
ブラッサをフィーチャリング・ゲストに迎え、息のぴったり合ったギャングスタ・ラップを聴かせてくれるナンバー。低音を強く効かせた重厚なサウンドがクールで、挑発的かつエロティックなフレーズを連発する。
06BLOOPS
アルバム『ザ・リターン・オブ・ザ・ギャングスタ』収録のスキット。軽やかなBGMが、ズッシリ重いサウンドの息抜きにぴったりな30秒のスポット。「ブループス」とは電波や録音テープにおける“雑音”のこと。
07MAKE MONEY
とにかく“金を稼ごうぜ!”と、世の中は金がすべてであるかのように吼えまくる詞に圧倒されるナンバー。しかしその裏には、うわべだけのギャングスタがあふれる時代や、金がなければ人も救えない現実に対するアイロニックな悲哀の念が込められている。
08LADY & GANGSTA
クーリオのクルーのメンバーでドイツ出身の女性ラッパー、K-LAとのセッション。不穏な空気のイントロから始まる、彼らならではのラブ・ソングだ。さりげなく重ねられた叫ぶようなコーラスが、情熱的な感情を引き立てている。
09DADDY'S SONG
クーリオの娘であるアーティーシャをゲストに迎えた、親子共演によるナンバー。まだ16歳のアーティーシャだが、物怖じせず堂々とした出で立ちは父親譲りの迫力。娘とストリートや暴力について歌うギャングスタの世界に、驚愕せずにいられない。
10ONE MORE NIGHT
“サウス・セントラル・カーテルの巨漢”LVとのコラボレーションによる、哀愁漂う美しいトラックが新鮮なミディアム・ナンバー。きれいなコーラスと泣きのギターが、神様に懇願する心情をリリック以上に雄弁に物語っている。
11LOOSEMOBILE
アルバム『ザ・リターン・オブ・ザ・ギャングスタ』に挿入される約30秒のインタールード。携帯で電話している男性の寸劇という内容を、リズミカルなドラミングを軸としたビートに乗せ、次曲「ディップ・イット」へとつなげていく。
12DIP IT
クーリオ・ファンにはおなじみのイタリア系のシンガー&ラッパー、ギャングスタ・ルーが参加したパーティ・トラック。ハンド・クラップが先導するリズム上で、ルーズに流れるMCに男女のコーラスが幾重にも連なる、キャッチーなフックが魅力。
13KEEP ON DANCING
回転数を上げたファニーなヴォイスで「キープ・オン・ダンシング……」とひたすら繰り返すフックが味わい深いパーティ・チューン。アラビアンなサウンドを採り入れたダンスホール風トラックのなかを、軸のぶれないクーリオのラップが響いていく。
14187% WRPM
アルバム『ザ・リターン・オブ・ザ・ギャングスタ』に収録の、約10秒弱のインタールード。スペーシーに加工されたコンピュータ・ヴォイスによるMCで、ラジオのジングル風に聴かせる。次へ続くトラックへのインターバルとして効果的な演出だ。
15KEEP IT GANGSTA
中世ヨーロッパ的な雰囲気を漂わせながら仰々しくスタートし、「ギィィ……」という門扉を閉める音でいったんブレイクするイントロが特徴的なヒップホップ・トラック。閉塞された世界観のなかで、ダークなギャングスタ道を説かれては、もはやクーリオの前にひれ伏すのみだ。
16THEY DON'T KNOW
ソウルフルな女性ヴォーカル、ブラック・オーキッドをフィーチャー。オリエンタルな香りのするトラックをバックにクーリオがクールなラップを繰り広げるが、それ以上に情熱的に歌いあげるオーキッドが最大の聴きどころ。パワフルなアウトロは圧巻だ。
17WEST COAST ANTHEM
本当のウエスト・コーストとはなんであるかを訴えた、ウエスト・コースト賛歌。リズム、クラップに対して遅れがちに聴こえてくるギターやコーラスが、ドープな感覚を生んでいる。クーリオの粘着的なラップがより活かされた中毒性の高いトラックだ。
18HEAR ME NOW
グルーヴィなベース・ラインが力強くビートを刻む、正統派ヒップホップ・ナンバー。単調になりそうな構成のなかで、サビでさりげなくバックに流れるリード・ギターがジワジワと楽曲を盛り上げる。タップ音とともに消えるアウトロがなんともクール。
19OUTRO
アルバム『ザ・リターン・オブ・ザ・ギャングスタ』のラストを締めくくる、その名の通りのアウトロ。“WRPMラジオは24時間、365日クーリオをプレイし続けるぜ!”というメッセージを、ラジオ番組風に演出する凝ったトラックだ。
仕様
CDエクストラ内容:「ギャングスタ・ウォーク・フィーチャリング・スヌープ・ドッグ」ビデオ・クリップ