ミニ・レビュー
プリンスへのオマージュとおぼしきアルバム・タイトルにまずはにっこり(ハート) シングル曲てんこ盛りという構成のおかげもあってか、“ファンク好きのポップ・メイカー”としての塩梅のいい、充実した一枚に仕上がった。(11)はプリンスというよりディスコだが。
ガイドコメント
2006年9月発表の通算9枚目となるアルバム。屋敷豪太らとのユニット“KoKua”の「Progress」のセルフ・カヴァーや映画『デスノート』の挿入歌となったバラード「真夏の夜のユメ」など、話題のナンバーが満載。
収録曲
01奇跡
18thシングル曲は、2005年夏の高校野球「甲子園大会」の統一テーマ・ソング。なんとなく危険なムードが漂うAメロから、爽やかな夏と輝くような予感を抱かせるサビへの展開が鮮やかなポップ・チューン。
0219才
19thシングルは、アニメ『xxxHOLiC』のオープニング・テーマ曲。多感な「19才」の時期を赤裸々に綴った歌詞と、ポップでありながら緊迫感のあるメロディの絡み合いが絶妙。ちまたで騒然のエロティックなPVも必見!
0338分15秒
スガシカオの作詞センスが光る1曲。特に「ぼくのこの愛をもってしてもムリ」など、複雑なリズムに言葉をはめ込む技術の高さに驚かされる。テレフォン・セックスを連想させる歌詞からも彼の表現者としての貪欲さが感じられる。
04斜陽
夕日をテーマに、ほろ苦い恋の記憶を歌ったミディアム・バラード。ヴォーカルと掛け合いをしているかのようなワウ・ギターが、夕暮れの切ない雰囲気を印象的に表現している。美しく優しいメロディが、さらに切なさを際立たせている。
05夏陰〜なつかげ〜
ゆったりとしたメロディ・ラインが爽やかな青春ナンバー。朝日放送・テレビ朝日共同制作『熱闘甲子園』のエンディング・テーマのために書き下ろされた楽曲で、ひと夏の終わりに感じる切なさが余すところなく表現されている。
06タイムマシーン
P-ファンクを彷彿とさせるようなファンキー・ナンバー。独特のP-ファンク・テイストとスガシカオ特有の詞の世界観やポップ・センスが融合し、ファンク好き以外でも聴けるポップ・ソングとして仕上がっている。
07Rush
ファンクに独自の解釈を加え、ポップ・ソングに仕上げるのがスガシカオのスタイルだが、この曲では真正面からファンクに挑戦している。ホーン・アレンジやサビでの「Rush」のリフレインは、まさにファンクの王道だ。
08Hop Step Dive
ポジティヴなメッセージが込められたロック・ナンバー。「昔よりはちょっとマシな歌うたえるかな」「ギターの弦がちぎれるまで」「かれてしまっても叫びたいんだ」といった、シンガー、スガシカオ自身をモデルにしたと思わせる歌詞が興味深い。
09真夏の夜のユメ
夢と現実が入り混じったようか歌詞の世界が印象的なラブ・バラード。アコースティック・ギター、エレキ・ギター、ベース、ドラムのシンプルな構成のなかで、ストリングスが幻想的な歌の世界観を際立たせている。
107月7日
七夕をモチーフにしたラブ・ソング。アコースティック・ギターとチェロによるシンプルかつ幻想的な音がとても印象的。少年のようにあどけない歌唱スタイルが、曲のイメージをいっそう幻想的なものにしている。
11午後のパレード
ファンク・テイストあふれるサウンド、ウイットに富んだ歌詞、そして繊細なハスキー・ヴォイス……そんなスガシカオの魅力がすべて凝縮した1曲。思わず体が動き出すような、ダンサブルなナンバーに仕上がっている。
12Progress (Family Sugar Version)
理想と現実のギャップに悩み、何度挫折しても「あと一歩だけ」前に進もうとする、ポジティヴな歌詞が素敵なナンバー。アコースティック・ギターやキーボードによる温かみのあるサウンドが、メッセージと調和し、心地よさをもたらしている。