ミニ・レビュー
2004年のデビュー作に続く2作目。今日的なUK人気を支えるバンドとしてかなり攻撃的/挑発的なメッセージを硬派なバンド・サウンドに乗せるバンドだが、アレンジがやや大袈裟に過ぎるきらいも。もっとシンプルに聴かせた方がいいのに。
ガイドコメント
イギリス4人組バンドの2ndアルバム。轟音ギターや重低音を効かせたグルーヴにより磨きがかかった会心作。彼らの内面的攻撃性とアンディ・ウォレスが手がけるシャープなサウンドが見事に融合している。
収録曲
01EMPIRE
極太のシンセ・ベースをフィーチャーしたデジタル・ロック風のスクウェアな打ち込みリズムから、まるで行進曲のようなシャッフル・ビートへと展開していく。壮大なスケールを持ったダンサブル・ロック・チューン。
02SHOOT THE RUNNER
ディストーションのかかったベース・ラインが楽曲全体を引っ張っていくヘヴィ・ロック・ナンバー。バッド・ボーイズ・ロックの系譜を受け継ぐ、刹那の快楽に満ちた歌詞を、トム・ミーガンが攻撃的な調子で歌い叫んでいる。
03LAST TRIP (IN FLIGHT)
“自分自身の足で立つこと”をリスナーに訴えかける、メッセージ性の強いロックンロール・ナンバー。楽曲のスピード感と分厚いコーラス・ワークによるサイケデリックな雰囲気が、光も見えないほどの「ラスト・トリップ」を描いた歌詞と見事にマッチしている。
04ME PLUS ONE
オリエンタルかつシンフォニックなストリングス・アレンジが、ミステリアスな雰囲気を醸し出すラブ・ソング。左チャンネルのアコースティック・ギターのカッティングを中心に、歯切れの良いリズムが楽曲全体に刻み込まれている。
05SUN RISE LIGHT FLIES
ビートルズ「トゥモロウ・ネヴァー・ノウズ」の系譜に連なるサイケデリック・ロック・ソング。淡々とリズムを刻み続けるドラムスとエレクトリック・ギターとキーボードのループ・サウンドが、心地良い酩酊感を生み出している。
06APONEA
高速ブレイクビーツとサンプラーで切り刻んだエレクトリック・ギターのフレーズが絡み合う、わずか1分半強のデジタル・ロック・チューン。緊迫感に満ちたエレクトロ・ノイズの応酬が、爆発的なパワーを感じさせる。
07BY MY SIDE
フロア対応型の重厚かつグルーヴィなリズムが印象的なロック・ナンバー。「報復はしない」と社会情勢を批判し、その先へ進もうとする強い意志を、トム・ミーガンがファルセットを織り交ぜながらエモーショナルに歌い上げている。
08STUNTMAN
メロディアスなシンセ・ベースが唸りまくるスピーディなテクノ・サウンドのなかを、トム・ミーガンが熱いシャウトによって切り込み、最終的にはロックンロールとして着地。カサビアンの個性が存分に発揮された一品。
09SEEK & DESTROY
音数を抑えたキーボード中心のミニマル的なサウンドとシンプルかつ美しいメロディ・ラインが見事に融合した、メランコリックなポップ・ソング。わずか2分弱の小品ながらも、アルバム『エンパイア』の中での存在感は抜群だ。
10BRITISH LEGION
アコースティック・ギターのアルペジオで始まる、カサビアンには珍しいフォーク・ロック調の楽曲。しっとりとした歌ものということで、トム・ミーガンのレスター訛りの英語がいつも以上に強調されており、とてもチャーミング。
11THE DOBERMAN
まるでマントラのように同じフレーズを繰り返すことによって徐々に高みへと上り詰め、リスナーを“覚醒”へと導くシンガロング・チューン。楽曲の後半にフィーチャーされている、エンニオ・モリコーネ風のブラス・サウンドにも要注目。
12STUNTMAN
イギリスのラジオ番組のために録音された、『エンパイア』収録曲のライヴ・ヴァージョン。観客の熱狂的な反応を受けてのトム・ミーガンの熱いヴォーカル・パフォーマンスは、ライヴならではのスリルと刺激に満ちあふれている。
仕様
エンハンストCD内容:エンパイア (ビデオ)〜メイキング・オブ・エンパイア (ビデオ)〜エンパイアEPK (ビデオ)