[Disc 1]
01DIAMONDS
光る雨粒を宝石になぞらえて歌うロマンティックな曲。デビュー時の諧謔性はどこへやらのスウィートな世界が、鍵盤を効果的に使ったオーケストラ・ポップで描かれている。しっとり&ねっとりとした歌唱が後を引く味わい。
02EVERLASTING ARM
古きよきジャズの香りを漂わせた奇妙なテイストの音響ポップ。ビーチ・ボーイズとルイ・アームストロングの世界が地続きになったかのように、ほんわかとしたジャズ・サウンドとふんわりとしたコーラスが心地よく調和している。
03IN A FUNNY WAY
映画『しあわせの法則』(2002年)に提供した寓話調ラブ・ソング。音圧と残響を活かしたアンサンブルで自己流ウォール・オブ・サウンドをメロディアスに展開。イントロはロネッツ「ビー・マイ・ベイビー」風だ。
04GODDESS ON A HIWAY
「こんなことが続かないのは知っているさ」と繰り返し歌うメランコリックな曲。もの悲しくサイケデリックなムードで覆われた曲だが、サビだけはいつになくエモーショナル。人気があるのもうなずける明快な曲構成だ。
05CHASING A BEE
アコースティック・ギターでの穏和なサイケデリック・トラックに、重量感あるギター・ノイズが覆い被さる混沌としたナンバー。自重に耐えかねたギターの軋みが心地よいほど耳障りで、フルートの一貫して無垢な音色とは対照的。
06THE DARK IS RISING
大作映画のオープニング並みのド派手なストリングスは、当初予定されていたジャック・ニッチェの死去によりトニー・ヴィスコンティが担当。柔和なポップ・ソングにあって、サビ同然の存在感と迫力を醸し出している。
07BLACK FOREST(LORELEI)
黒い森と白い馬が描く意味深で寓話めいた歌詞。耳に残るピアノのトレモロ、幽玄なギター・フレーズ、ファンキーなベース・ラインの相容れない感がある要素が重なり合い、さまようような深遠なサウンドを生み出している。
08HOLES
安定感と不安定感を同居させたシンフォニックなアレンジが、時間の流れをゆっくりとしたものに感じさせる秀逸なポップ・ソング。ミュージック・ソウの印象的な旋律は、世代によっては幽霊登場音にしか聞こえないかも。
09CAR WASH HAIR
1stアルバムの隠しトラックで、元ギャラクシー500のディーン・ウェアハムが客演。かなり美しいメロディを芯に据えたまどろむようなサイケデリック・ソングは、ギター・ノイズ、ホーン、フルートの取り合わせが新鮮。
10EMPIRE STATE(SON HOUSE IN EXCELSIS)
こぽこぽと泡立つような雰囲気の幻惑的サイケデリック・ロックが、中盤で沸点に達してフリーキーに大爆発。カオティックな作風とシンフォニックな作風が交錯する、スタイル移行期ならではのミッシング・リンク的大曲。
11SOMETHING FOR JOEY
落ち着きあるオーケストラ・ポップとせっかちなノイズ・ポップを同時にプレイしてみせたような愉快な曲。まったくスピード感の異なる両義的要素を融和させ、奇妙な一体感にまで発展させた着想とアレンジ感覚がお見事。
12FRITTERING
アコースティック・ギター主体の穏やかな楽曲が、押し寄せるギター・ノイズの荒波に呑み込まれてしまう佳曲。大しけ状態となったノイズ・サウンドが、束の間なぎ、そしてまた荒れ出す展開が劇的。絶妙な場面転換だ。
13A DROP IN TIME
ファンタジックなオーケストラを全面に配した晴れやかなポップ・ソング。名匠トニー・ヴィスコンティならではの自由度高く厚みあるストリングスがここでも主役級の活躍を見せ、終盤の荒々しいドラミングの影を薄める。
14OPUS 40
ザ・バンドのリヴォン・ヘルムがドラムスでゲスト参加しているルーツ・ロック・ナンバー。フォーキーなサウンドにシンフォニックなアレンジを加えた展開は、さながらマーキュリー・レヴ版「ラスト・ワルツ」の趣か。
[Disc 2]
01I DON'T WANNA BE A SOLDIER
ジョン・レノン『イマジン』(71年)収録曲をラジオ・セッション用にカヴァー(99年5月録音)。原曲の骨太なサウンドをタイトな演奏で奇をてらわずに踏襲。彼らのロック・バンドとしての地力が浮き出ている好演だ。
02I ONLY HAVE EYES FOR YOU
「瞳は君ゆえに」の邦題で知られるスタンダード・ナンバーをショーン・オヘイガン(ハイ・ラマズ)の客演でカヴァー。ピアノとフルートを効果的に使い、ジャズともポップとも形容しがたいサイケデリックな世界を構築している。
03OBSERVATORY CREST
キャプテン・ビーフハート『Bluejeans & Moonbeams』(74年)収録曲のカヴァー。原曲の浮遊感が強められた精緻なアレンジは、未完成状態で発表されてしまったこの曲を本人に成り代わって完成へと到らせたかのよう。
04STREETS OF LAREDO
カウボーイを主人公にした伝統的バラードのカヴァー。ほぼ原曲どおりに演じたアコースティック・ソングをエコーやストリングスを交えて現代的にアレンジ。カウボーイになりきった一同のハミングが微笑ましいかぎり。
05SO THERE
アメリカの代表的詩人ロバート・クリーリーのスポークン・ワードをフィーチャーした実験的ナンバー。コラージュ感覚あふれるジャズ・サウンドが、リズミックな朗読の邪魔立てをしない範囲で自由に飛び交っている。
06AFRAID
ニコ『Desertshore』(70年)収録曲のカヴァー。感情を抑えきって歌われた原曲をポジティヴな歌唱、ストリングスを含む華やかなアレンジによって、感情の表立つ陽性の楽曲に。メロディの穏やかさも引き立たせた解釈だ。
07HE WAS A FRIEND OF MINE
ボブ・ディランやバーズの歌唱で知られるトラッド・ナンバーで、ここでは南部の囚人を歌ったディラン版をカヴァー。アコースティック・ギターでの厳かな弾き語りは、ディランを意識したかすれ気味のヴォーカルが魅力。
08DELTA SUN BOTTLENECK STOMP
4thアルバム『ディザーターズ・ソングス』収録曲を、かねてから交流のあるケミカル・ブラザーズがリミックス。原曲からしてダンサブルな音響ポップが、スペイシーな音響効果を足されまくってさらに踊れる楽曲へと変身。
09IT'S A MAN'S MAN'S MAN'S WORLD
ジェイムズ・ブラウンのトリビュート・アルバム『Super Bad @ 65』(98年)に提供したカヴァー。パワフルな女声ヴォーカルをフィーチャーしたスタイリッシュなアレンジは、知らずに聴けば彼らの作品だとは気づくまい。
10CLAMOR
ベスト盤で初登場したデモ音源。87年に録音されたグループ最初期の音源だけに、ノイジーなギターがぐるぐると駆け回るカオティックな仕上がり。殺伐と畳み掛けるような展開の中にも、そこはかとなくトリップ感覚が表われている。
11SEAGULL
ベスト盤で初登場したリッチ・ロビンソン(ブラック・クロウズ)客演の未発表曲。きらきらとしたメロウな曲調をリズム隊の骨太なプレイが支える、雄大で開放的なムードの楽曲。音数の多いベース・ラインも印象的。
12LUCY IN THE SKY WITH DIAMONDS
ベスト盤で初登場の、お蔵入りになっていたビートルズのカヴァー(2002年録音)。原曲のムードを壊さない程度の改良をちょこちょこと加えながら、サイケデリック・ポップの金字塔を現代的な色使いで再構築。敬意あふれる解釈だ。
13CONEY ISLAND CYCLONE
デビュー作『ユアセルフ・イズ・スティーム』(91年)収録曲のBBCラジオ・セッション音源。ノイズのくぐもりが印象的な原曲に対し、こちらは軽快なギター・ポップ調。ただしフリーキーすぎるホーンのブロウ付きだ。
14SILVER STREET
ニッキ・サドゥン率いる“ジャコバイツ”のデビュー作『Jacobites』(84年)からのシブすぎる選曲。簡素な弾き語り曲での、どうにも引き付けられる翳りある歌唱。原曲ほど物憂げさはないが、かなり魅力的なカヴァーといえる。
15DEADMAN
前衛ノイズの先輩スーサイドのアラン・ヴェガをフィーチャーした長尺曲。ヴェガのスポークン・ワードをサスペンスフルなトラックで盛り上げている。台詞・音ともに先の展開が読めず、ひとり芝居を観覧している気分。
16PHILADELPHIA
ニール・ヤングが同名映画(93年)に提供した曲のカヴァー。数あるヤング作品からカヴァー率の低いこの曲を選ぶとはシブい。鍵盤とストリングスをバックに、ニール・ヤングばりの魅力的に弱々しげな歌唱を聴かせる。
17GOOD TIMES AHEAD
「イン・ア・ファニー・ウェイ」の英国版シングルにカップリング収録された日陰的ナンバー。サステインを効かせた幻想的なサイケデリック・サウンドと、徐々に軽やかさが増すリズムを合致させた、彼ら得意の多義的な曲調だ。
18MEMORY OF A FREE FESTIVAL
デヴィッド・ボウイのトリビュート・アルバム『Crash Course For The Ravers』(96年)に提供したカヴァー。曲の後半を支配する強烈なフィードバック・ノイズのいつになくグラマラスな質感に、ボウイへの敬意が表われている!?