ミニ・レビュー
人気ヒップホップ・グループ、ブラック・アイド・ピーズの歌姫によるソロ・デビュー・アルバム。さまざまな音楽的な要素を取り入れながらも、現在の時流をしっかりととらえたサウンドは、まさにエンタテインメント。さすがに長年この世界で生きてきた女だ。
ガイドコメント
ブラック・アイド・ピーズのファーギー姐さんのソロ・デビュー・アルバム。ウィル・アイ・アムがプロデュースを手がけ、耳に残るポップかつヒップなサウンドが楽しめる。ゲストも豪華な注目盤だ。
収録曲
01FERGALICIOUS
ファーギーの貴重なラップが楽しめるアルバム『プリンセス・ファーギー』からのキャッチーな2ndヒット曲。チープなものとそうでないものをうまく混ぜるウィル・アイ・アムの得意技が光る、彼のプロデュース作品。
02CLUMSY
これぞ「おもちゃ箱をひっくり返した」ようなサウンド。リトル・リチャードの「GIRL CAN'T HELP IT」からいただいてはいるものの、単なるネタの流用にとどまらないサウンド・アプローチが魅力。エレクトロなビート・ロック・スタイルのR&Bだ。
03ALL THAT I GOT (THE MAKE UP SONG)
BEPではイメージ先行の感が否めないファーギーに対する見方を一変させてしまうナンバー。BEPではあまり聴くことができない情感にあふれたヴォーカルを聴かせてくれる。美しいコーラス・フレーズはコモドアーズの「ZOOM」から。
04LONDON BRIDGE
“ロンドンロンドン”のフレーズでファーギー旋風を巻き起こした、1stシングルにして大ヒット曲。強烈なリズムと音数の少ない野太いホーンによる分厚いサウンドで、変幻自在で濃厚な世界を提供。サウンドの主はプッシー・キャット・ドールズも手掛けたポロウ・ザ・ドン。
05PEDESTAL
ファーギーのハイトーン・ウィスパー、猫なで声、パワー・ヴォーカルなど、七色のヴォーカルが楽しめる強力なリズム・チューン。歌詞は業界を皮肉る辛らつな内容で、苦労しながら業界を渡り歩いてきた彼女ならではのリリックだ。
06VOODOO DOLL
凝ったホーン・アレンジが張りのあるファーギーのヴォーカルに絡みつくダブ気味のスカ・チューン。ホーンとギター以外の楽器をすべてウィル・アイ・アムが演奏しており、特にドラムの裏を意識した前のめりなビートが素晴らしい。
07GLAMOROUS
ファーギーの冷たいヴォーカルが心地よい、プリンスの「リトル・レッド・コルヴェット」を下敷きにしたメロディアス・チューン。フィーチャリングのリュダクリスがコミカルに絡んでくる演出が、良いアクセントとなっている。
08HERE I COME
スモーキー・ロビンソン作、テンプテーションズの名演「ゲット・レディ」を、愛嬌たっぷりにファーギーとウィル・アイ・アムがニュー・アレンジ。ラップや新しいヴァースが加わっているが、オールド・ファンも納得の楽しい出来だ。
09VELVET
ダビーなギターとブラシ・ドラムのフィル・インが心地良いアンビエント・ソング。生ベースが動きまくるが、歌の邪魔はしていない不思議な雰囲気の曲。「VELVET」と「HELP IT」で韻をふんでいるリリックがおしゃれだ。
10BIG GIRLS DON'T CRY
ファーギーの歌唱力に感嘆してしまうアコースティック・チューン。ロック・テイストのヴォーカルはひたすらエモーショナル。繰り返される「大人は泣いちゃだめ」という詞に、ファーギーにも泣きたい時があるんだ、と親しみがわいてくる曲だ。
11MARY JANE SHOES
ボブ・マーリーの「ノー・ウーマン・ノー・クライ」からいただいたレゲエ・サウンドを巧く取り込んだ後に、ノー・ダウトを思い出すような突然のハード・コアな演出が印象的。さらにジャズ・アレンジでエンディングを迎える、というジェット・コースター・チューン。
12LOSING MY GROUND
リッチなストリングスとパーカッシヴなアコースティック・ギターが、緊張感たっぷりのハード・ポップ・チューン。ファーギーの精神的な苦悩が歌われるリリックや、叫びにも似たソウルフルなヴォーカルが、胸にググッと迫りくる。
13FINALLY
ジョン・レジェンドのピアノに合わせてファーギーが歌う美しいバラード。バラードといっても臭さがなく、けれん味がない仕上がり。BEPの紅一点として振舞う姿とはまた違った、純粋なファーギーの姿がここにある。
14GET YOUR HANDS UP
「ファーギー・フィーチャリング・BEP」のクレジットどおり、BEPのメンバーとしてファーギーが登場するボーナス・トラック。かわいらしいフレーズとクールなリズムが交錯するサウンドは、ウィル・アイ・アムによるもの。
15WAKE UP
UK向けのボーナス・トラックということもあり、マンチェスター・テイストのロックだ。この曲のファーギーは立派なロック・クイーンとして、多彩なコーラスとパワフルなロック・ヴォーカルを披露。その姿にひたすら驚嘆してしまう。
16PARADISE
スチール・ドラムのトロピカルなフレーズと爽快なアコースティック・ギターにのって、ファーギーが歯切れ良くパフォーマンスしている。リードを取ったBEPのヒット曲「DON'T LIE」のような雰囲気を醸し出す、癒し系ナンバーだ。