ガイドコメント
前作『ZEUS』から約1年3ヵ月ぶりとなるLa'cryma Christi渾身のアルバム。先行シングル「Breaking」や「Sweet lil' devil」などを含む、充実の内容だ。
収録曲
01Shuttle
砂塵を巻き上げて荒野を突き抜ける暴走車といったイメージの、荒々しくスピーディなハード・ロック。腹の底に響くようなベース音のループが高揚感を抱かせるイントロは、今にも炸裂しそうな爆弾のうずきのようだ。
02Breaking
サウンドは疑いようのないアメリカン・ハード・ロック。だが、La'cryma ChristiらしいポップなメロディとヴォーカルTAKAの淀みない歌声によって、オリジナリティにあふれたジャンルレスなナンバーとなっている。
03Heartbreaker
後期La'cryma Christiの特徴である重厚なド迫力サウンドが特色の、ミディアム・テンポのハード・ロック。エコーがかかった英詞のコーラスを活かしたサビの入りは、往年のハード・ロックを思わせる。
04Long distance
タイトルどおり無限に広がる世界をイメージさせる、奥行きのあるミディアム・チューン。哀愁を漂わせる1コーラス目の後のギター・ソロが、最大の聴かせどころといえる名演。悲しみの心情を綴った内容だが、サウンドは力強い。
05Standing on the edge
抑揚のないAメロがおどろおどろしい、ややダークな色合いのナンバー。へヴィ・メタルといえる音楽性は、キッスや、日本では聖飢魔IIなどの流れを汲んでいるか。ハード・ロックに転向した後期の楽曲の中でも、よりラウドな作品。
06Soulful day
出会いと別れ、そして新しい始まりを歌ったメロディアスなロッカ・バラード。月明かりをイメージさせる、ギターのアルペジオによるイントロが秀逸。サビの荘厳なコーラスが印象的で、スケールの大きな曲に仕上がっている。
07Sweet lil'devil
レッド・ツェッペリンやディープ・パープルを思わせる、疾走感あふれるナンバー。縦横無尽に駆け回るギター・テクニックが素晴らしく、骨太なバンド・サウンドでまぎれもない本格派のハード・ロックを楽しませてくれる。
08Back against the wall
アルバム『WHERE THE EARTH IS ROTTING AWAY』に収録された、La'cryma Christiとしてはめずらしい1分強のナンバー。前半の不規則なドラムが不安な気持ちを煽っていく、すべて英詞による一曲。
09Million miles away
ズシズシと地面を踏み鳴らすような、ミディアム・テンポの重厚なナンバー。メロディには、彼ららしいどことなくオリエンタルな音の運びが感じられ、ストレートなハード・ロックとしては斬新な聴き心地だ。
10Day by day
低めに抑制されたヴォーカルで難解なメロディを歌いこなすTAKAに、ヴォーカリストとしての幅広い表現力が感じられる一曲。終盤のシャウトでは、おなじみのハイトーン・ヴォイスも聴かせてくれる。
11Fly to the moon
La'cryma Christiとしてのラスト・アルバム『WHERE THE EARTH IS ROTTING AWAY』の最後を締めくくるナンバー。バンドの後期に志向したハード・ロック路線を突き進み、高度な演奏技術で完成された音楽を、ハイテンションで誇示している。