ミニ・レビュー
日本一グルーヴィなバンドの絢爛豪華な一枚で、横浜に寄港した世界各国、日本各地の過去から現在に至る、さまざまなエッセンスを凝縮したような賑やかさがある。スタイルこそ異なるが、(2)の色鮮やかさ、雄弁さは美輪明宏のデビュー時を想起したほど刺激的。
ガイドコメント
2006年9月発表の8thアルバム。話題となったシングル曲「メリメリ」やFIRE BALLとPAPA Bフィーチャーした「ハマのアンバサダー」などを収録。土臭さやソウルっぽさが一段と増した作品だ。
収録曲
01INTRO:GALAXY
スペイシー・サウンドから違和感なくCKBお得意の京劇サウンドへ展開する、アルバム『GALAXY』のオープニング・インストゥルメンタル。鍵盤全般を担当する高橋利光のパフォーマンスの後に、洞口信也が唸りをかます演出が渋い。
02ハマのアンバサダー (w/FIRE BALL and PAPA B)
日本レゲエ界の雄、FIRE BALLとPAPA Bを従えて、横山剣がよれよれで歌う貫禄ソング。FIRE BALLの面々のライミングはなめらかで新鮮。鼓の音が高らかに響く後ろで、コンガが和太鼓的なリズムをはじき出している。
03AMANOGAWA
コード進行的にスパニッシュなフレーズが来るか? と思いきや、三味線で日本人の心をなぞる憎い演出。三味線のメロディは、サビで歌メロがそのフレーズを追ってしまうほどに強烈。「熟年離婚」まで飛び出す歌詞には若者も脱帽だろう。
04eye catch:銀河の間
時代劇のお白洲の場面に映えそうな荘厳なインタールード。CKBの面々が鎮座する銀河の間に控えるお奉行様は横山剣。派手なトゥッティにバカ殿も想像してしまうが、やはり横山剣には遠山の金さんでいてほしい、そんなことを思わせるトラックだ。
05メリメリ
分厚いコーラスで迫るコール&レスポンスが楽しい渾身のシングル曲。「旋回中」と「反対中」のおしゃれなライムがいつまでも耳に残る。求婚ソングだが、結婚式にもぴったりの熱い想いが歌われているラブ・ソングだ。
06Shock HAWAIIAN Shock
横山剣が何万曲と作ってきた、少ないコードで構成されるCKBの定番ソング。速いテンポにのっていくギターとエレピが軽快で、ホーン・アレンジは王者の風格だ。曲全体を包み込むような洞口信也の唸りには、彼のベース・プレイよりも深みを感じてしまう。
07混沌料理
聴くだけで胸やけしそうなCKBお得意の中華ソングで、歌メロは打楽器よりもリズミカルで油っこい。横山剣の歌がノー・エフェクトで大きめに録音されており、目の前で彼が体をくねらせながら歌っているような錯覚に陥ってしまうようだ。
08Growl:魂の唸り
CKBの男性陣がよってたかって「CKB」と唸りまくるインタールード。ダブ・エフェクトによって効果が増大したこの叫びと唸りは、もはや宗教といえる。小野瀬雅生のタイトル・コールが、ダブによってかかった催眠を解いてくれる。
09アイワナゲチョラ (w/Q from Rappagariya)
ラッパ我リヤのQがファレル・ウィリアムスのようなラップで盛り上げる、ジェイムス・ブラウン風サウンドを展開するナンバー。禁断の「GT」を惜しみなく叫ぶスモーキー・テツニの暴走が頼もしい、ライヴ構成のショー・ソングだ。
10ゆっくり跳ねる音楽
ドラムは跳ねていないが、ヴォーカルは跳ねリズムになっていて、音符の中のミクロな世界が感じられるハイレベル・ソング。珍しくスモーキー・テツニと菅原愛子がささやくように歌っており、横山剣の強い声との絡みが絶妙だ。
11俺たち海坊主
小野瀬雅生作のインストゥルメンタル。ギターだらけのゴーゴー・サーフ・サウンドだが、高橋利光のオルガンはギターに負けないぐらいの熱を帯びている。緩めに張ったバス・タムも腹に響いて、いい感じだ。
12HONOLULU BBQ
パーカッションのチューニングが少し間抜けで良い隠し味となっている、ふざけ気味に横山剣が歌うチャチャ・ソングだ。ピアノがリズミカルでMVPといえる働きぶり。中間部で4ビートに展開するが、そこでもリズム・パターンを変えない打楽器陣もまた頑固で良い。
13eye catch:How zit?
アルバム『GALAXY』3曲目のインタールード(「eye catch」としては2曲目)。前曲「HONOLULU BBQ」のフレーズの後に、小野瀬雅生の定番ナレーションでフィニッシュ。「eye catch:銀河の間」との関連性は不明だが、ほどよい間の取り方はさすがだ。
14秋になっちゃった
下敷きはミシェル・ブランチとサンタナの「ゲーム・オブ・ラヴ」のようだ。ホーンとサンタナそっくりの小野瀬雅生のギターが、切ない歌詞の世界を引き立てている。「古い音楽ばかりじゃないぜ」と、流行にも目を光らせる横山剣がここにいる。
15黒い傷跡のブルース
横山剣の低音ヴィブラートが存分に楽しめる4ビート、時代劇メロディがブルージィに展開していくナンバー。ホーンとピアノが重なり合う中間部できつくチューニングされたコンガが鼓のように響き、歌われる「男の後悔」を色濃いものにしている。
16ドクロ町ツイスト
何故かシタールがやたらと派手に響くツイスト・サウンドが際太立つナンバー。音の洪水を表現したアレンジはテンポが速い分、ごった煮加減を増幅させる。銃声が派手に鳴り響くも、チンピラがミャンマーで僧侶になってしまう、というのが歌のオチだ。
17プレイボーイ・ツイスト
リッキー・マーティンの「リヴィン・ラ・ヴィダ・ロカ」のようなホーン・サウンドで始まるテンポの速いCKBお得意のツイスト。「GT」流に「プレイボーイ」が「PB」と略される、横山剣流の人生讃歌だ。
18ミニスカハコスカヨコハマヨコスカ
ジェイムス・ブラウンの「アイ・フィール・グッド」のキメも登場する3コードのゴーゴー・サウンド。アルト・サックスというのはなんと猥雑な楽器なんだろう、と思わせるソロ・パートとふざけた歌詞が聴きどころだ。
19B.B.B.B.B.
メイン・ヴォーカルがスモーキー・テツニ、ギターと作詞(全編英詞!)&作曲を小野瀬雅生が担当しているせいか、横山剣の臭いが控えめという珍しいナンバー曲。効果的に鳴るパーカッシヴなワウ・ギターがかっこいいスタックス・サウンドだ。
20eye catch:GALAXY 4 Fantasy
アルバム『GALAXY』中の「Shock HAWAIIAN Shock」のイントロを流用したインタールード。タイトルの「4」は“for”で、「夢の銀河」と訳したい。遊び心の多い彼らだけに、「eye catch」パート“3”なのに“4”とは? と思慮をめぐらすだろうが、ここでは深読みは不要。
21ボタンのかけ違い
コンガの音が際立つシンプルな16ビートのポップ・ソング。フルートとホーン隊のフレーズがテーマばかりかオブリガートもユニゾンでアレンジされているのと、小野瀬雅生にしては珍しくギター・ソロにワウをかけているのが特徴だ。
2212月17日
ほぼノー・エフェクトの横山剣の声が映えるバラード。ホーン・セクションやパーカッションは登場しないが、サウンドは分厚い。別れを告げる歌の世界とほんの少し歌メロをなぞるギターのオクターヴ奏法が、胸をしめつける。
23eye catch:Oriental Souvenir
アルバム『GALAXY』収録の「ハマのアンバサダー」のイントロを流用したインタールード。テレビ番組のブリッジとしても使われそうなインパクトのあるメロディが印象的。「スーベニール」は記念品、お土産と訳されることが多いが、タイトルはあえて「東洋の思い出」と訳したい。
24OMAKE!:肉食系
歌詞カードに「デタラメ語なので歌詞掲載不可」とあるが、“オマケ”とはいえ、デタラメ語のユニゾンや5人のメンバーのそれぞれに何語だろう? と思わせるほど完成度の高いオリジナル言語には脱帽だ。計算し尽くされたおふざけが心地よいファンク・チューン。